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【経験者に聞く】スタートアップバックオフィスの始め方、外せない3つのポイントとは?:法務編

本記事では、「経験者に聞く勘所と落とし穴:スタートアップバックオフィスの始め方」の続編として、立ち上げ期のスタートアップバックオフィスの法務に特化して、外せないポイントや気をつけなければいけない点について、経験者が答えます。前回に引き続き、現場でスタートアップのバックオフィス業務を行う傍ら、SBO勉強会の企画などもされている株式会社hokanの安田ともこ氏とCoralCapital 創業パートナーの澤山陽平が、それぞれの経験から疑問に答えます。

創業初期でも法務を整えるもの?

ーー創業期のスタートアップでも法務を整えることが大切で、後回しにできなことがあるのはどういう理由からでしょう。

安田:法務は、会社にとって深刻なトラブルが起きたとき、被害を最小限に抑えるものだからです。会社をトラブルから予め守るために必要なものです。

また、会社が所属する業界にもよりますが、事業に関わる法律を知らずにビジネスをはじめると「実は法律的に引っかかっていた」なんてこともあり得ます。最低限の法律の地図を理解した上で事業をはじめないと思わぬ落とし穴に引っかかることもあり得ます。

澤山:トラブルから会社を守るために法務は絶対に必要です。例えば、紛争が発生した場合、裁判が起きることもあります。そのようなときに、会社を守るのは「契約」です。契約はリスクヘッジの機能を果たすからこそ、最低限の企業の法務的機能を把握することが大事です。

投資先の勉強会などで法務について話すことがあるのですが、その際は「must do(やらねばならないこと)」と「should do(やるべきこと)」の2つに切り分けて考えることが大事だと話しています。最低限やらねばならないmust doに抜け漏れがあると、次の資金調達の際のデューデリジェンスで問題になり、その修復作業に時間を取られて事業に集中できなくなる可能性があります。

シードの場合の基本方針としては、(1)must doは全て抜け漏れのないよう実行すること(2) should doはコストパフォーマンスやマインドシェアを考慮すること、(3)タイムリーに現状を把握できるようにすること、(4)逆算思考で物事を考えることの4つを重視するとよいでしょう。

会社を設立してから最低限やらなければならないmust doの業務は登記関連です。具体的には設立登記・会社移転登記・増資登記・新株予約権登記などです。これらは、自分でやるよりも、司法書士に依頼して行うのがベターです。もちろん、自分でもできるのですが、素人が手続きを行うとミスするリスクが高く、ミスがあった場合は更正登記を行うなど、リカバリー作業に時間を取られることもあるので、この点は専門家に任せたほうがよいでしょう。

ーー「一般法務」では、最低限どのような仕事をすべきでしょうか。

安田:一般法務の実務として、外せない3つのポイントがあります。

  • 契約書の管理
  • 業務委託やNDAなどの重要な契約書類の弁護士レビュー
  • 知的財産保護(Pマーク、商標登録など)

澤山さんのmust do/ should doで分類すると、契約書の管理と重要な契約書類の弁護士レビューはmust do。知的財産保護はshould doだと分類できるでしょう。

各企業の業界なども異なりますので、全てのスタートアップに当てはまるとは言い難いですが、最低限これらのことをやっておけば問題ないでしょう。法務としての最低限の仕事が何か見分ける嗅覚を身につけるためには、まず自社が取り組んでいる事業領域の業務や慣行、プレイヤー、法規制などに関する「業務知識」を、きちんと理解することが大事です。

スタートアップ法務の3つのポイント

安田さんが挙げた、

  1. 契約書の管理
  2. 契約書類の弁護士レビュー
  3. 知的財産保護

という3つのポイントを軸に、それぞれの業務の内容や気をつけるべきことは何か、2人が答えます。

起業初期からすぐに取り組むべき「契約書の管理」

ーーまず、「契約書の管理」ですが、具体的に何をすべきでしょうか。

安田:まずmust doとして、定款や株主総会議事録など、登記申請に必要な書類の作成です。またこれらの書類の管理で、最も注意すべきポイントは、PDFのみでなくWordファイルも忘れず管理することです。

特に定款については、他の書類と少し異なるので、絶対にWordファイルで保管してください。定款以外の書類の場合、一度契約をしてしまえば、PDFで保存しておいてもよいのですが、定款については、手続きをした日時の定款であることを証明しないといけません。そのため、Wordファイルでないと、日付を追加で入れたりできませんよね。さらに、定款は新しいものに書き換わることもあります。PDFでしか残っていなければ、改めて文字起こしをして、作り直さければいけません。そのような無駄な作業をなくすためにも、Wordファイルで保存する必要があるでしょう。最新のものだけでなく、起業初期のものからWordファイル、PDFファイルの両方を全て残しておきましょう。

また、資金調達時のデューデリジェンスで必要になる文書の管理もはじめからしっかりと心がけましょう。定時株主総会をきちんと開催し、議事録は管理すること。その他、役員再選任・役員就任・役員報酬改定を確認できる文書は、アーリーステージで漏れがちですので、気をつけてください。例えば、任期2年の役員再選任など登記事項の変更手続きが漏れ、登記懈怠となると過料の制裁に処されることもあります。

これらに加えて、should doの業務として契約書の管理までしっかりとやっておくことも大事です。この点について前回も話しましたが、紙の文書は全てスキャンしてクラウドに保存しておきましょう。また、こうした契約書を格納するフォルダの整理も早めに取り組んでおいた方が良いです。

以下のようにスプレッドシートで管理することで契約書の管理はGoogleドライブでもできますが、契約書の管理ツールとして、HolmesHubbleというサービスもあるので紹介しておきます。

契約書をクラウドで管理する場合、単にフォルダを分けるだけでなく、スプレッドシートで管理しておくのがお勧め

スタートアップを守る「契役書類の弁護士レビュー」

ーー「契約書類の弁護士レビュー」については、何をすべきでしょうか。

安田:まず、フォーマットの作成時点から弁護士への相談をはじめましょう。これはmust doです。インターネット上には、様々な雛形がありますが、それらをそのまま使用するのは少々危険です。事業領域や事業内容によって、重視すべきポイントがそれぞれあるからです。フォーマットを作成するときには、弁護士に必ず相談しましょう。相談時には、「積極的に不安を伝える」ことをお勧めします。

特に業務委託書やNDA、サービス約款(利用規約)については、基本的に弁護士レビューが必要です。サービス約款(利用規約)については、β版の提供時から用意しておく必要がありますが、コンサルタントにお願いすることもできます。

スタートアップの場合は、法務体制が整っていない会社が比較的多いのも事実です。そうした状況を分かった上で利用する人も、残念ながらいます。「法務知識の少なさ」を利用し、あくどい契約条件で不十分な仕事をする人や、NDA/競業避止義務違反締結の漏れで知的財産が盗まれるようなトラブルが発生した事例も耳にします。

そうした問題を防ぐためには、委託する業務の検品・改修・競業避止・秘密保持などの事項を記載し、法律的に有効な契約書を作成することが重要です。

契約書のチェックには、AI契約書チェックサービスも使えるので参考にしてみてください。

澤山:どのタイミングから弁護士をつけるか、ということについては一概には言えませんが、かつて、同様の質問を木村・多久島・山口法律事務所の山口先生にお尋ねしたところ「株が絡むタイミングからは弁護士に相談してください」と言及されていました。

また、企業として弁護士に相談する際は、業界に特化した弁護士と一般的な弁護士をうまく使い分けると良いでしょう。

また、スタートアップの場合は対応速度なども重要ですので、契約書類次第ではありますが、相談する弁護士を選ぶ観点として、対応の早さという点も重要です。

プロダクトを守る「知的財産保護」

ーー「知的財産保護」では何をすべきでしょうか。

安田:これらは、基本的にはshould doの業務です。サービスの肝である知的財産を守るために、起業初期から意識しておくことが大事です。ただ、この中でも商標登録は優先的になるべく早く取り組んでください。

澤山:そうですね。商標登録は、早めに取り掛かるべきだと思います。シリーズAの資金調達以降にサービス・プロダクト、場合によっては会社名が変わることがありますが、そうした事態の多くは、商標がすでに他社に取られていたためだったりすることが多いんです。

名前の変更を行うと、新たにブランドを構築しないといけませんよね。そうした失敗を避けるためには、早めの商標登録が必要です。

ーープライバシーマーク(以下、Pマーク)も早めに取得すべきでしょうか。

安田:Pマークは、素人が着手するとカオスになりがちですし、アーリーステージでは費用・工数を捻出しづらいかと思われます。

ただ、Pマークがあると取引時に便利だと感じることも多いです。個人的な意見としては、管理する個人情報が少ないうちから着手すると工数も少ないので、余裕が出てきたら早めに取り組むとよいと思います。その場合でもPマークの取得が目的となってしまうのではなく、最低限の運用と教育をきちんとすること大事です。

(構成:馬本 寛子)

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Coral Capital

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