【新刊紹介】「爆速成長マネジメント」「プロダクトマネジメントのすべて」

スタートアップの起業家や、そこで働く方々が気になりそうな書籍を2冊ご紹介します。いずれも3月に出たばかりの新刊。ゴールデンウィークにいかがでしょうか。

「爆速成長マネジメント」 イラッド・ギル著、浅枝大志/大熊希美訳(日経BP社、2021年3月)

爆速成長マネジメント」はテック系の起業家でエンジェル投資家としても知られるイラッド・ギル氏の新刊。氏の過去のブログ記事や、交流のある著名な起業家、投資家との対談インタビューを1冊にまとめた本で、CEOの役割、取締役会の運営、人材・マーケ・広報、プロダクト、資金調達やM&Aなど、多岐にわたるテーマで450ページにわたる詳細なアドバイスと知見が詰まった本です。

タイトルの「爆速」と「マネジメント」が意味するのは、急成長するスタートアップが対象であるということ。一般的な経営関連書籍はスタートアップを対象としていません。組織や売上規模を問わず適用できることも多いでしょうし、いったん規模が大きく上場企業になればスタートアップも一般企業も経営という点では違わないかもしれません。しかし急激に組織や売上が拡大する組織をどう運営していくのか、ということを明確に意識した上で経営の話を取り使った本はあまり多くないかもしれません。著者のイラッド・ギル氏はTwitterに買収されたMixer Labsの創業CEOで、TwitterやGoogleで要職に就いたこともある人物。投資家やアドバイザーとしてはAirbnb、Airtable、Coinbase、Flexport,Gusto、Instacard、Opendoor、Opitimizely、Pinterest、Square、Stripeなど、数多くの名だたる急成長組織に関わってきています。

最初から書籍として書き下ろしたものではなく、いろいろなトピックについての記事や対談をまとめた本なので、教科書というよりも、気になるところをパラパラ読むべき参考書としても読めそうです。翻訳書の通例として米国の事情・やり方が全て日本で当てはまるわけではないかもしれませんが、起業家予備軍や、急成長組織をマネジメントするスタートアップの役員・マネージャーであれば参考になる知見が多く詰まっていると思います。

「プロダクトマネジメントのすべて」 及川卓也、曽根原春樹、小城久美子著(翔泳社、2021年3月)

プロダクトマネジメントのすべて」は、その書名通り、プロダクトマネジメントをする人が知るべきことを、丸っと1冊にまとめた書籍です。こちらは上記の「爆速成長マネジメント」と異なり、だいぶ教科書然としています。取り扱うテーマは、事業戦略、IT開発、UXデザイン、セキュリティー、マーケティング、カスタマーサクセス、知財、チーム・組織運営など非常に多岐に渡ります。トピックは多いですが、構成としては、プロダクトの成功とは何か、マネージャーの仕事とは何かというPart1から、プロダクトをまとめる(Part2)、ステークホルダーをまとめプロダクトチームを率いる(Part3)といったように順序よく章立てされています。スタートアップであれば、プロダクトマネージャーやCEOが知っておくべき領域に関して概観できる「海図」のような1冊です。

どんな書籍かをお伝えするために1トピックだけ例に取りましょう。例えば「UXのデザイン」。この章の中には、さらにサブカテゴリーとして「デザイン」があります。そこには「デザインの6原則」(可視性、フィードバック、アフォーダンス、マッピング、制約、統一感)や「ビジュアルの階層性」といったデザインの基礎を実例とともに手早く説明しています。さらに、デザイナーとのコミュニケーションで注意すべきことを3ポイントでまとめるなど、デザインが本職でない人に向けに要点を抑えた手際良い8ページほどの解説になっています。同じUXデザインの章にはマーケティング施策やプライバシーポリシーや利用規約も同様にまとめられています。書籍全体では、このような章立てが21あり、標準的な方法論や心構え、考え方がコンパクトに集まったミニ百科事典のような印象もあります。3人の著者は、米大手テック企業や日本のメガベンチャーでエンジニアやプロダクトマネージャーを経験してきたベテランで、その点で安心感があります。

本書は、どんな読者に向いているでしょうか? DXを叫ぶ大企業の新規事業担当者や経営企画部の方々であれば、デジタルを活用した現代的プロダクトのベストプラクティスを学び、自社に適用していくということができるかもしれません。スタートアップの起業家やプロダクトマネージャーであれば、経験に応じて抜けているポイントを探して拾い読みする使い方もできそう。スタートアップなどデジタル系で起業志望であれば、まずこうした概説書を一通り通読するのも良いのではないかと思います。

(紹介者:Coral Capital 西村賢)

Coral Capital

Editorial Team / 編集部

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