VCにおける「再投資」(リサイクル)
本ブログはニューヨークのベンチャーキャピタルUnion Square Venturesでパートナーを務める、Fred Wilson(フレッド・ウィルソン)氏のブログ「AVC」の投稿、「Recycling」を翻訳したものです。Fred Wilson氏による過去の翻訳記事の一覧は、こちら。
ほとんどのベンチャーキャピタルファンドは、投資で得た株式をいくらか売却して手にした利益をリミテッドパートナーに分配する代わりに、新たな投資に使えるようにする「リサイクル」条項を設けています。リサイクル率の一般的な水準は決まっていませんが、20~25%が多いと思います。
Union Square Venturesでは投資のリサイクルを積極的に行っています。これにより管理報酬分を補い、ファンドのすべてを有効活用することができます。例えば、1億ドルのベンチャーキャピタルファンドは、10年間の運用でおよそ2,000万ドルの管理報酬を受け取ります。つまり、実質8,000万ドルしかスタートアップに投資できません。しかし、そのファンドが2,000万ドルをリサイクルして新規投資に回せば、2,000万ドルの管理報酬を差し引いても、1億ドルのすべてを投資に回せます。
また、リサイクルして投資することで、ファンドが調達した金額以上の投資を行えることもあります。私たちは、いくつかのファンドでそうしてきました。私たちの最初のファンドは1億25,00万ドルのファンドでしたが、投資家から集めたのは1億1,000万ドルほどで、最終的におよそ1億4,000万ドルを投資しました。
些細な施策のように思うかもしれませんが、ファンドの3倍以上の利益を目指すなら非常に重要な施策です。1億1,000万ドルの3倍は3億3,000万ドルですが、1億4,000万ドルの3倍は4億2000万ドルです。
もちろん何をリサイクルし、何をリサイクルしないかについては賢明な判断が必要です。ほとんどのベンチャーキャピタルファンドでは、投資した額と同等か、やや多めに資金が返ってくる投資案件がいくつかあります。ファウンダーが断れないほど魅力的な買収のオファーを受けて、早くイグジットしたのかもしれません。あるいは、最初からある程度しかうまくいかない投資案件だったのかもしれません。これは資本をリサイクルする絶好のタイミングです。投資した分と同じくらいか、やや多めに返ってきた資金を再び投資に回します。
ロケットのようにうまくいった投資案件でも、いくらか利益を得て、残りをリサイクルするのは理にかないます。ただし、やりすぎるとファンドのリターンを増やすのではなく、減らす結果になる場合もあります。私はこれで失敗したことがあり、以後同じ失敗はしないようにしています。
ベンチャーキャピタルのポートフォリオやファンドの管理について、あまり語られることはありません。パフォーマンスを上げるのに最も重要なのは、適切な投資機会を見つけ、適切なタイミングで投資をすることです。そのためベンチャーキャピタルにいるほとんどの人は、そこに時間とエネルギーを費やしていますし、それが正しいでしょう。
ただ、私は適切なポートフォリオ管理、つまりポートフォリオを適切に分散させること、流動性の機会を把握すること、積極的に資本をリサイクルすることが、ファンドとVCファームのパフォーマンスに大きな違いをもたらすと考えています。なのでUnion Square Venturesでは、こうしたことに関しても時間とエネルギーを割いています。このように長年運営してきたことが、当社に大きな違いをもたらしたのだと思います。
(過去のAVCの記事翻訳一覧はこちら)
Editorial Team / 編集部