Robinhoodへのアンチテーゼ「Trade Republic」やインド版Twitter―、Accelの5月投資先

米国のトップティアVCの新規投資先をまとめて手短にご紹介する連載。今回はAccelの5月の投資先から計6社のスタートアップを紹介します。

Robinhoodにインスパイア、でも思想が違うTrade Republic

1社目は5月20日にシリーズCで$900Mを調達したベルリン発の「Trade Republic」です。1年前の調達時から約17倍となる$5.3B(約5,800億円)のバリュエーションとなり、一気に巨大ユニコーンになりました。Trade Republicは2015年スタートのモバイル証券アプリで、Robinhoodと同ジャンルのアプリです。Robinhood同様に使いやすいUIで株式やETFが手数料無料で取引ができるので「ドイツ版Robinhood」と呼ばれています。

欧州のスタートアップシーンをカバーするメディアのSiftedのインタビューでTrade Republicの共同創業者でCEOのChristian Hecker氏が答えたところによれば、Robinhoodとの違いは「取引」よりも長期の資産運用をするプラットフォームを目指している点だといいます。例えば最低10ユーロ(約1,330円)から各種ETFに無償の積立ができるといったサービスがあります。

Trade RepublicとRobinhoodは収益モデルも違います。ユーザーの手数料はいずれもゼロですが、Trade Republicでは手数料は外部提携のサービスで決済するごとに固定の1ユーロを提携事業者から取るモデル。Robinhoodはヘッジファンドへの送客でキックバックをもらう仕組みです。

Robinhoodは株取引を大衆化しました。そのことのマイナス面として、これまで株取引をしてこなかった利用者が大量に参入。一部銘柄の株価高騰やボラティリティーの高さの一因となっているとの見方があるほか、個人投資家を過度のリスクにさらしているとの指摘で批判されています。2021年2月には75万ドルの損失を出してしまったと勘違いした20歳の利用者が自殺し、両親がRobinhoodに対して訴訟を起こすという事件もありました。また、2021年1月にはネットで呼びかけあった個人投資家たちとヘッジファンドがGameStop株を巡って攻防。現実離れして急騰する株価によって混乱したとき、取引を急停止させたRobinhoodの対応が批判にさらされました。

現在大型IPO銘柄として期待されているRobinhoodですが、ヘッジファンドから課金するという、その収益構造から個人投資家の利益を蔑ろにするのではいかなど、多くの批判にさらされています。こうした背景もあってTrade Republicの大型資金調達は注目です。なお、Robinhoodは2013年スタートでユーザー数は1,300万人。一方Trade Republicは120万ダウンロードだとSiftedが伝えています。

インド版Twitterの「Koo App」が急激な伸び

2020年にインド・バンガロールでローンチしたばかりの「インド版Twitter」のKoo Appも、5月にAccelから資金調達をしています。このラウンド規模は$30Mで、Tiger Global Managementがリード投資家です。インドには地域ごとの言語が多数存在していて、これらの言語による地域ニュースサービスや地域ごとのハッシュタグ対応など、Twitterが提供できていないかゆいところに手が届く地域型アプリとなっています。

Koo Appはインド政府主催のアプリコンテストで優勝したり、モディ首相がスピーチで言及するなど、いわゆる「お墨付き」を得てユーザー数が急増。ただ、これは近年高まるTwitterの政治利用を巡る、インド政府とTwitterの確執から出てきた面があるようです。インド政府はTwitterへ凍結要請アカウントのリストを送付。これをTwitterが受け付けなかったことがあってから、Koo Appは政府イチオシという状態になってます。Koo AppのほかにもChingariという「インド版TikTok」も、政府主催アプリコンテストで受賞しています。中国に引き続き、インドも重要なプラットフォームについては独自路線ということになっていくのかもしれません。ちなみに、Koo Appは日本のIPアドレスからはアクセスできません。


ほかのAccelの5月の投資案件ですが、SaaS系に加えてデータ系が目立ちます。

従業員に最適なタイミングで、個別化された最適なメッセージを届けるための組織向け社員エンゲージメントツールを提供するPyn(累計調達額:$10.2M)や、メール誤送信やコンプライアンス上問題のあるメール送信を検知してデータ漏えい防ぐ「Tessian」(累計調達額:$123.7M)、アプリやデータベースのデータをクラウド上のデータウェアハウス(DWH)に同期させるサービスを開発する「Airbyte」(累計調達額$31.2M)、ウェアラブルデバイスによって心拍データを収集・分析をし、利用者には有料の分析結果レポートを、研究者にはデータを提供する「IDoven」(累計調達額:$2M)などがあります。

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Editorial Team / 編集部

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