バリュエーションを気にしすぎてはいけない

本ブログはニューヨークのベンチャーキャピタルUnion Square Venturesでパートナーを務める、Fred Wilson(フレッド・ウィルソン)氏のブログ「AVC」の投稿、「Valuation Obsession」を翻訳したものです。なお、記事は2018年6月の米国のスタートアップ事情について書かれたものですが、バリュエーションの高騰は現在も続いています。Fred Wilson氏による過去の翻訳記事の一覧は、こちら


資金調達をする際、会社の評価額にこだわりすぎる風潮があります。以前からありましたが、最近はこれまで以上にひどくなっています。

毎日、必ずと言っていいほど、どこそこの企業が驚くほど高いバリュエーションで資金調達をしたとか、調達する予定であるとか、調達しようとしているといった記事を目にします。

これをメディアのせいにするのは簡単です。毎年でも、毎月でも、毎週でも、毎日でも、これが重要な話であるかのように記事を書いて発信しているメディアにも責任の一端があるでしょう。

しかし、メディアは人々が読みたい話や話題にしたいことを書くものです。

問題はテック業界にいるわれわれのほうで、バリュエーションが自分たちの事業の成果を示す成績表であるという考え方にあると言えます。

もちろん、バリュエーションは重要です。GitHubがMicrosoftに数十億ドルでイグジットしたのなら、その売却額は重要な情報です。買収の資金源を提供したMicrosoftの株主にとって重要です。買収で利益を得たGitHubの創業者や社員にとって重要です。素晴らしいリターンを得たGitHubの投資家にとって重要です。自分たちが使用しているソフトウェアが、大手テック企業にとってどれほど重要かというメッセージを受け取ったGitHubユーザーにとっても重要です。

Microsoftが支払った金額抜きにこの話を伝えることはできません。この話において、会社のバリュエーションには大きな意味があるからです。

しかし、イグジット前に付くスタートアップのバリュエーションは違います。確かに、その会社が調達できた金額には興味をそそられます。しかし、彼らが市場に投入しようとしているプロダクトやサービス、社内で構築しているチームや文化、事業のために使っているテクノロジーと比べたら、そこまで興味をそそるものではありません。

ですが、そのような話は少なくなり、どこもバリュエーションの話ばかりです。

その結果、他社より高いバリュエーションを目指したり、バリュエーションにこだわりすぎたり、バリュエーションを自慢する文化が生まれます。ある起業家が「1,000億円以上のバリュエーションで調達しないと失敗とみなされる」と言っているのを聞いたことがあります。そんな馬鹿げた話があるでしょうか? でも、彼がどうしてそう思うようになったかは明らかです。

CEOや会社の人事部から、驚くほど高いバリュエーションで調達した方が人を採用しやすくなるという話をよく聞きます。バリュエーションが高いほど、社員が株式で得られる利益は少なくなるので、これは特に問題であると思います。ただ、人材市場は、働く価値がある会社を見極めるのに、投資コミュニティの動向を目印にしているようです。

本来ならば逆であるべきでしょう。私は賢い人たちが参加している会社に投資したいと思っています。資本は人に続くべきで、人が資本に続くべきではないのです。

この投稿を読んで呆れる人がいるのも承知しています。「フレッドはバリュエーションが膨れ上がっている今の環境が好きではないから、冷水をかけようとしている」と。この環境を良く思っていないのは事実ですが、私も他の人と同様、この環境の恩恵を受けています。

私が気に入らないのは、中身よりも形を重視し、数字だけにすべてを削ぎ落としてしまっていることです。これが新しい「普通」となり、これからのスタートアップ業界の常識になるのかもしれません。私の方が、こうした状況に慣れなければならないのかもしれません。

けれど、そうならないことを願っています。本当に大事なものは隠れたところにあり、見出しの数字は数字に過ぎないということを多くの人に理解してもらえることを願っています。大きな数字は人々にリンクをクリックさせ、広告を見てもらうための良い手段なのです。

(Fred Wilson氏による記事の翻訳一覧はこちら

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