スタートアップの新規採用オンボーディング、7つのオススメ施策
日本語で「社員、オンボーディング」と検索すると新入社員向けの話が多く出てきますが、スタートアップ界隈でオンボーディングといえば、ほぼ中途採用かと思います。新卒の研修・オンボーディングと異なり、基本的な社会人研修やスキル研修は不要でしょう。しかし、スタートアップでも新メンバーを迎えるオンボーディングは重要です。
終身雇用制度が強く残る日本と異なり、40歳になるまでに平均して10回ほど転職するほど人材が流動しているアメリカでは(アメリカ合衆国労働統計局、2019年の調査)、大手企業でも新メンバーを迎えるオンボーディングの重要性が認識されています。例えば、LinkedInに掲載されたこの記事には、手厚いオンボーディングはROIの高い取り組みであるというデータに加えて、Google、IBM、EY、Zappos、ロレアル、Mastercardなど各企業の施策の数々が紹介されています。
アメリカの労働者の平均在職期間は4.4年。特にGAFAなどビッグテックやIT系企業は在職期間が短いと言われています。少しでも長く会社にいてもらい、良い成果を出してもらうことが重要で、そのためにも「最初」が肝心だというわけです。もし平均在職期間が4年だとして、これを1年伸ばすことができれば、トータルの採用コストを20%削減できます。あるいは8人の採用コストで10人が採用できる計算です。成長企業であれば、これは大変なコスト差です。
「中途採用」という言葉が意味をなさないスタートアップ界隈
外資系の日本法人では中途採用という言葉をほとんど聞きません。ほとんど全員が中途入社だからです(日本法人設立30周年というような大手は日本企業化していて違うかもしれません)。同様に、スタートアップ界隈でも中途採用という言葉は聞きません。単に「新規採用(者)」と呼ぶくらいではないでしょうか。
「中途採用」「中途入社」という言葉は終身雇用制度を前提としています。何か特殊な事情で新卒ではない「それ以外の人」が途中から加わったというニュアンスがあります。実際、HR関連情報サイトの日本の人事部にも「中途採用とは、新卒採用以外で人材を採用することをいいます」と書いてあります。
今後、日本社会が米国型のように会社の平均寿命も、労働者の平均在職期間も短い流動的な社会になっていくのか、それとも企業の新陳代謝速度はあまり変わらないままなのかは良く分かりません。ただ、外資系企業やスタートアップ界隈は、すでに新しいモデルに移行しているようにも見えます。
そこでスタートアップでも大事になってくるのが、新規採用者のオンボーディングです。もちろんスタートアップの場合、社員エンゲージメントやリテンションに最も重要なのは事業の成長や組織文化の醸成でしょう。ただ、そうしたこととは別に取り組める上、効果が見逃されがちなのがオンボーディング施策ではないでしょうか。
新規採用オンボーディングのオススメ7施策
スタートアップに限らないかもしれませんが、新規採用者のオンボーディングで有効だと思われるものには、以下のような施策があります。
プレオンボーディング
入社日前に必要な会社関連の情報を1箇所にまとめておき、気持ちに余裕を持って入社日を迎えられるようにします。職種によっては読んでおくと良い書籍リストというのもいいかもしれません。事務的なメールだけではなく、チャットツールでグループを作るのも仲間感が出て良いと思います。
初日はサプライズで歓迎
いまはコロナで難しいですが、新規採用者の出社初日は、できるだけ多くのメンバーで歓迎の言葉をかけるようにします。もしメンバーそれぞれ固定の机があるなら、リボンや風船で机の周りを装飾したりするだけで、その場に誰もいなくても歓迎ムードは伝わるものです。
会社ロゴ入りグッズをプレゼント
ちょっとしたプレゼントを用意するのも良いサプライズになります。ロゴ入りステッカーやTシャツが定番で、アーリーステージであっても高価なものではないため、とても良い投資だと思います。Googleでは新規採用者をNooglerと呼び、全員が頭にタケコプターのようなものがついたNooglerキャップを渡されて初日や研修期間中にかぶります。キャップをかぶることで国籍を超えた強烈な帰属意識を感じたのを個人的にも良く覚えています。
マネージャーと1on1を組む
もしレポートラインが決まっているのであれば、直属の上司との1on1を設定します。スタートアップであれば一定規模になるまではCEO自らが1on1の時間を入社日に確保すると良いでしょう。期待する役割と責任、キャリアプランについて話をしたり、新規候補者が会社に関する質問ができるようにします。
GoogleのHR関連制度や文化をまとめたWork Rulesによれば、以下の5つのチェックリストをマネージャーにリマインドすることで、新規採用者がオンボーディングから仕事でパフォームするまでの期間を25%短縮できたといいます。
- 役割と責任を議論する
- 同僚たちに引き合わせる
- 社内外の人脈ネットワークづくりを手伝う
- 話しやすく対話できる環境づくりを心がける
- 半年間にわたり月1でオンボーディング状況確認の場を設ける
そのくらいやってるよというリストかもしれませんが、重要なのはチェックリストとして渡すことで、抜け漏れがなくなるということでしょう。
メンターをつける
マネージャーとは別に、社内メンターをつけるのもエンジニア組織などでは良く聞くベストプラクティスです。同様に会社規模が一定を超えてくれば、職位や役割が近い仲間を明示的に引き合わせるような仕組みも良いオンボーディング施策です。
スモールウィンの機会をつくる
新規採用者は1日も早く他メンバーに認められようと頑張るものですし、周囲も多かれ少なかれ様子を見ているもの。特に期待されて入った新メンバーであれば、分かりやすい成果が出せることが大事です。大それた目標ではなく、達成可能な小さな勝利が早いタイミングで得られることで、当人は「ここで、やっていける」と思えるでしょうし、周囲にもプラスの影響を与えるでしょう。
バーンアウトに気をつける
上記の話とも通じますが、新規採用者が成果を焦るあまりオーバーワークに陥るのを未然に防ぐのも大事な観点かもしれません。特にコロナでリモートワークが増えている今はなおさらです。その意味でも対話がしやすい環境づくりを意識しておくのは重要なオンボーディング施策の一貫でしょう。
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