これまでに私が見てきた起業家のよくあるジレンマのひとつは、事業に対し短期的に大きなインパクトをもたらすイニシアチブにフォーカスすべきか、それとも長期的にみて大きなインパクトのあるイニシアチブを優先すべきか、ということです。
短期的なイニシアチブとは、今後6か月間にわたって主要な指標を向上させますが、必ずしも持続可能とは限りません。たとえば、売上高の増加だけに注力し、その達成のためには手段を選ばず、ユニットエコノミクスやチャーンにもそれほどこだわらない、というやり方がありますが、この場合のフォーカスは、健全性よりも成長です。
長期的なイニシアチブとは、これとは本質的に逆で、長期的にみてより堅実な事業を構築するために、短期的な業績を犠牲にすることがあります。ウェブサイトの性能を向上するためのインフラ整備や、より優れたカスタマーサクセスチームを作るための業務再編、あるいは、ユニットエコノミクスの効能のためのマーケティングチャネルの再検討などがその一例です。
どちらも大切な考え方ですが、リソースの限られたスタートアップ企業の起業家は、これに優先順位をつけなければなりません。このジレンマを何度も目にするうちに、私は、起業家にとって重要なことは、自分が資金調達スケジュールの何合目にいるかを考慮することだと気付きました。今後6か月以内に新たなラウンドの調達を計画している場合、起業家は短期的なイニシアチブに重点を置くべきです。もちろん投資家は事業の健全性も考慮しますが、現実的には右肩上がりの成長を示すチャートを見せられたほうが心に強く響きます。なぜなら、成長こそが投資家の求めるものなのですから。
とは言え、いかなる犠牲を払っても成長だけにフォーカスするという戦略は、持続可能ではありません。事業の健全性を証明しなくてはならない時がいずれ来ます。その健全性のチェックを行う最善のタイミングは、新しいラウンドの資金調達の直後です。というのは、その時点では次の調達までに最も時間が残っており、(通常推奨されるように)18カ月間の運営が可能な資金が調達できた場合、資金調達が次に必要になる前に長期的なイニシアチブが結実する可能性もあるからです。
投資家の受け取り方はいつも合理的とは限りません。外部から資金を調達する必要がある限り、投資家の受け取り方にどのようなダイナミクスがどういう影響を与えるかを熟考する必要があります。長期的なイニシアチブよりも短期的なイニシアチブを優先すべき時と場合をよく理解しておけば、最終的には長期的な成功につながるでしょう。あなたのスタートアップの生死は、資金調達できるかどうかにかかっているのですから。
Founding Partner & CEO @ Coral Capital