製造業におけるオートメーションやデータ活用、IoT化によるイノベーション「インダストリー4.0」の変化の波が、いよいよ本格的に製造業を変えようとしています。工場における自動化・データ化・IoT化も、ますます進んでいます。以下のIoT Analyticsの調査データによれば、インダストリー4.0関連市場は、年平均成長率37%という勢いでの拡大が予想されています。
Source:IOT ANALYTICS (https://iot-analytics.com/product/industry-4-0-smart-manufacturing-market-report-2018-2023/より Coral Capital作成
インダストリー4.0の市場拡大に伴って、工場の業務を効率化する「FactoryTech」分野におけるスタートアップへの期待も高まっています。
分かりやすい例でいえば、Amazonが2012年に7億7500万ドルで買収したスタートアップ企業のKiva Systems(現 Amazon Robotics)があります。工場内を駆け回る自走式ロボットが荷物を運ぶ動画をご覧になったことのある方も多いのではないでしょうか。
この分野では、いまもイノベーションが続いています。2019年7月には工場や倉庫での荷物の運搬を行うロボットを開発するシリコンバレーのスタートアップ Fetch Robotics がシリーズCで約50億円の資金調達を完了しました。Fetch Roboticsは従来のロボットによる作業の自動化のみだけではなく、クラウド管理によるロボットの一括制御や作業によって収集したデータを元にした分析による業務効率化支援などを行なっています。ソフトバンクも2015年にシリーズAで約20億円の出資を行なっていることからもFactoryTech分野への期待の高まりが分かります。
さらにFactoryTechとは少し定義が違いますが、CB Insightsの調査(下のグラフ)でもIndustrial IoT分野への投資は毎年増加傾向にあるとされ、毎四半期500〜1000億円の投資が行われていることが分かります。マーケットの成長に伴い、今後もFactoryTech分野への投資額も増加していくことが予想されます。
Source: CB Insights ( https://staceyoniot.com/how-to-succeed-building-a-startup-today-in-industrial-iot/ )
下の図は、インダストリー4.0という分野のカオスマップです。どのようなプレイヤーがいるのかを把握するのに適しています。分類としてグループ化されているのは、「設計ツール」「プロトタイピング・3D」「分析・業務効率化」「ロボティクス」「IoT・ミドルウェア」「トラッキング」「ウェアラブル」「メンテナンス予測」「検査」「現場ワークフロー」です。
Source: Robin Dechant (https://medium.com/point-nine-news/industry-4-0-reinventing-the-factory-stack-bc9054398efa)
上記カオスマップを見るとFactoryTechの分野は、これまで人間が行なってきた業務を自動化するものが多いようです。ただ、それ以外にもARや3Dプリンターなどの最新技術を活用し、既存の業務をさらに効率良く行うことができるテクノロジーを開発しているスタートアップが数多くあります。
ここでは、現在注目されている米国のスタートアップ4社をご紹介します。
1) ARでベテランが現場作業員に遠隔指示
RE’FLEKTはiPadやARグラスで操作可能なARソフトを開発しています。ARを活用することによって、オンラインで経験のあるオペレーターの指示をAR上に表示することにより、作業指示をリアルタイムに行うことも可能になっています。自動車関連分野で利用が進んでおり、実際にアウディやBMW、ポルシェなどに導入されています。下の動画をみると、ネットワーク機器の遠隔サポートが効率化される様子が良く分かります。
2) 金属部品のプロトタイプが可能な3Dプリンター
Desktop Metalはステンレスや銅など、さまざまな金属加工が可能な3Dプリンターを製造販売しています。このボストン発のスタートアップは2017年に1億1400万ドルを調達してユニコーンの仲間入りを果たしています。創業から、わずか21カ月という驚異的な成長速度です。Desktop Metalはプラスチック加工で使われる射出成形と、金属粉末冶金技術とを融合した新しい技術により、オフィス環境でも利用できる安価な3D金属プリンターを実現しています。また独自のソフトで複雑なデザインなども生産可能となっており、NEA、GE Ventures、Google Venturesといった著名VCだけでなく、フォードやBMWなどの自動車関連企業からも出資を受けています。以下の動画は少し専門的ですが、世界で唯一オフィス内に設置可能と同社がうたうStudio Systemの概要が分かります。
3) 工場の機械設計と同時に発注もできるオンラインCAD
VENTIONは工場に必要な機械の設計と発注が、ワンストップでできるオンラインのサービスを提供しています。ソフトに組み込まれている既存の部品データを組み合わせることによって視覚的に機械の設計を行うことが可能です。部品ごとの値段もソフト上で分かるので、素早く金額の見積もりができ、即日発注可能となっています。以下の動画で、CADで設計して各パーツを発注するまでの流れが分かります。
4) データ分析による機械の故障予測
Sight MachineはIoTとダッシュボードを活用して、機械の故障予測や業務効率化を実現しています。機械の稼働状況のデータを統合することにより、効率的に利用するための分析なども可能にしています。また、グローバル企業向けに世界中に点在する工場を一括管理できるサービスを提供しています。AWS、 Google、ナイキなどのグローバル企業クライアントやパートナーとなっています。
ロボットによる工場の自動化はすでに行われているように見えますが、実際は中身のソフトウェアがアップデートされていないままだったり、作業状況のデータ分析などは不十分な部分が残っています。さらにグローバル化が進む中で外国人従業員への業務指導などの新たなタスクも発生していて、さまざまな課題への解決策がスタートアップに期待されています。
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Editorial Team / 編集部