私たちは、投資先企業のファウンダーたちのことをまとめて「Coral Family」と呼んでいます。その理由は、「Family (家族)」という言葉が意味することがしっくりくるからです。理想的な家族は、あなたがよちよち歩きのころから温かく見守り、大人になり自立するまで支え続けてくれます。楽しいときも辛いときも側にいて、どんなときも無条件に愛してくれます。そしていつか自立したら、今度はあなたが家族に恩返しをする番になります。
こういった文化がCoral Familyに根付くように、私たちは努力してきました。自分たちの帝国を築こうとしているファウンダーたちには、いざとなったら頼ることができる力強い後ろ盾があると感じてほしいのです。そして、困ったときにはお互いを助け合ってほしいのです。
そんな文化をつくるために、私たちは以下の3つのことに気をつけました。
投資を採用プロセスとして捉える
ファウンダーに投資をするということは、いろいろな意味で採用プロセスと同じです。ファウンダーたちはみな、Coralとは全く異なる企業を作り上げようとしています。その一方で、彼らはある意味、Coralの一員にもなっているのです。私たちが投資するファウンダーたちは、Coral Familyの顔として振る舞う存在です。彼らに出会う人たちがみな感銘を受けるような、そんな存在でいてほしいのです。そして、新しくFamilyに加わったファウンダーたちには、Coralの一員であることを誇りに思い、心強い仲間ができたと思ってほしいのです。
採用はもちろんですが、投資する時でもこれを意識してる。僕らが出資する人はCoral Familyに入るので、ある意味組織にも入社してる。誰であっても、「Coralの起業家はやっぱいいよね」と思って欲しいし、新しく出資受けた人に「Coral Familyにジョインして本当に良かった」と感じてくれると嬉しい。 https://t.co/s4BybjUNlY
— James Riney?Coral Capital (@james_riney) September 6, 2019
私たちはある特定のタイプのファウンダーに投資しており、詳しくはマニフェストで説明しています。端的に言うと、誠実かつ高潔で、自信に満ちていて、IQとEQが高く、揺るぎない大志を抱き、ホームランを狙おうとする人々です。社内では、そういったタイプの人々を表すのに「Coralっぽい」という言い回しを使っています。
横のつながりをつくる
ファウンダー同士のつながりをつくることも大切にしています。そのために、オフラインではイベントを開き、オンラインでは様々なコミュニティーを運営しています。たとえば春にはお花見を、夏にはバーベキューを、冬には鍋パーティーを開催しています。1年を通して、Career Fairをはじめとする採用イベントから、毎週火曜日に行っているカジュアルな飲み会まで、数え切れないほどのイベントを主催しています。こういった機会を通してファウンダーたちは親睦を深め、イベント以外でも交流するようになり、やがて友人同士になるのです。そして、オフラインで深い関係をつくることができれば、オンラインでも互いに相談しやすくなります。この記事の執筆時点で、Coral FamilyのFacebookグループでは、過去1か月で91人中89人が何らかのアクションをとっていました。グループでは「どの銀行で口座を開設するのがいいか」といった質問から「採用したい人材がいるのだが、彼の配偶者をどう説得すればいいか」といった質問まで、様々な話題について議論されています。Coral Familyの絆を言葉で言い表すのは難しいですが、シンプルな言葉で言うと、みな互いの成功のために助け合うことを惜しまないのです。
恩返しの文化をつくる
こういったコミュニティーをつくる際に、直面しやすい課題があります。一般論ですが、こういったコミュニティーのメンバーにとって、コミュニティーから何かを受け取りたいという気持ちのほうが、貢献したいという気持ちよりも強くなりがちです。ファウンダーが成功の道を歩むにつれ、受け取る物よりも与えられる物のほうが必然的に多くなります。Coralではとても幸運なことに、恩返しの文化が自然に生まれました。この点については、SmartHR代表の宮田さんに、さまざまな面でたいへん感謝しています。私たちの1号ファンドの投資先の中では、(今のところは)宮田さんがスーパースターのファウンダーですが、彼はいつも時間とアドバイスを惜しみなく提供してくれています。彼は今でもCoral Familyの一員として積極的に活動してくれており、後進の成功したファウンダーたちのロールモデルになってくれています。宮田さんが先陣を切ってくれたおかげで、みな互いの質問に答え、実践的なアドバイスをし、人を紹介し合うようになりました。他のファウンダーたちも、大きな成功の兆しが見えたときには、同じように貢献する姿勢を大切にしてほしいものです。
多くの人にとって、スタートアップを立ち上げるのは人生で最も困難なことのひとつです。戦略面や、精神面で頼れるコミュニティーがあれば、みなが強くなれるのです。スタートアップが直面する課題の多くは、各社に共通しています。だからこそ、投資先企業の間で知見を共有しないのはもったいない。助け合い、全員で苦難を乗り越える。これこそが、Coral Familyの一員であることの意味なのです。
Founding Partner & CEO @ Coral Capital