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成功したスタートアップ創業者の平均年齢は45歳、米調査より

スタートアップを創業するのに最適の年齢は何歳でしょうか? これは問いの立て方自体がおかしいかもしれません。しかし、「成功したスタートアップの創業者たちが、創業時に何歳だったか?」を調べることには意味があるでしょう。

米ハーバード・ビジネス・レビュー誌が米国の国勢調査局のデータを用いて調べたところ(記事公開は2018年7月)、創業後5年の成長率でトップ0.1%に入った米国のスタートアップの創業者たちの、創業時平均年齢は45歳だったといいます。以下のグラフの青いバーは、上位1%の成長率が最も高いスタートアップの創業者の年齢分布です。

国勢調査の「創業者」には、ネットやハイテク以外のスモールビジネスも含まれています。そうではなく、いわゆるスタートアップ企業の場合はどうでしょうか? 彼らは調査で、VC投資を受けていたことや、理系(STEM)出身者が従業員の大きな割合を占めること、地理的要因(シリコンバレー拠点)などをパラメーターとしてフィルターをかけたところ、結果は大きく違わず、ハイテク分野でも大きく成長したスタートアップの創業者の年齢は40代前半であることが分かった、といいます。唯一、バイオや燃料に比べてソフトウェア領域の創業者が若め(40歳)ということはありつつも、40代です。

読者の皆さんは、この数字を意外に思うかもしれません。最近でこそ業界経験10年といったベテラン起業家が日本でも増えていますが、「スタートアップ」は若者の特権というイメージをお持ちの人がいるかもしれません。それはマーク・ザッカーバーグやビル・ゲイツなどの大成功したテック企業の創業者たちがスタート時点で若かったことによるものだと思います。ただ、ハーバード・ビジネス・レビューが調査が指摘することで興味深いのは、例えばスティーブ・ジョブズの最大の成功といえるiPhoneのローンチは、ジョブズが52歳のときでしたし、Amazonの成長率が最も鋭角になったのはジェフ・ベゾスが45歳のときだったということです。

日本国内ではどうでしょうか。中小企業庁のデータを見てみると、起業家、起業準備者、起業希望者はどれも平均年齢が伸びています。これは単純に日本の平均年齢自体がじりじりと上がっている効果もあると思いますが、それでも起業の平均年齢が20代や30代ということはないように見えます。

では、何歳で起業するのが良いのかというと、また話は別かもしれません。成功確率やインパクトが出るのが45歳だとしても、その前の10年間や20年間に何をしてきたのかということについて、データは何も語っていません。

例えば、Dropboxの創業者であるアンドリュー・ハウストンにとって、Dropboxは3つ目のスタートアップでした。彼は今36歳ですが、DropboxのARRは1500億ドル以上もあるのに、2018年はYoYで26%も伸びています。これは驚異的です。彼らはストレージサービスから、オンラインコラボへとシフトするとしていてPaperなどオンラインコラボツールの提供しているほか、契約書の署名管理プラットフォームのHelloSingを買収しています。もしここで一定規模の市場が取れるとしたら……、ハウストンにとっての本当の黄金期はまだ先なのかもしれません。

このブログを読んでいるスタートアップやテック業界の人々の間でも、きっと人気の高いビデオ会議サービスの「Zoom」を立ち上げたエリック・ユアンは、2011年のZoom創業時には推定41、2歳(正確な生年不明)でした。それ以前、彼は28歳のときに同業のWebExの創業2年目にジョインして、2007年(37歳ごろ)にシスコ・システムズに約3000億円で買収される過程を経験しています。その後はVP of Engineeringまで務めたといいますから、業界10年以上にもなるベテランもベテランです。その彼が立ち上げたZoomは現在、ARRが450億ドル以上、YoYで110%という凄まじい伸びです。41歳でZoom立ち上げて8年目、年齢49歳にして2兆円を超えるバリュエーションを付けるSaaSスタートアップのCEOなのです。

上記の例はいずれも最大のインパクトを出す年齢が40代であるということであって、そのステージでいきなり始めたというわけではありません。それまでに何度か事業を作ったり、スタートアップ的な環境に身をおいていたということも重要なのではないか、と個人的には思います。日本の例でいえば、連続起業家の山田進太郎氏がメルカリを立ち上げたのは35歳のときですが、良く知られているように、彼はそれまでに多数のサービスづくりでチャンレジを繰り返しています。24歳で創業したウノウを売却したときには33歳。これも大成功といえるイグジットでしたが、山田氏のより大きな成功は35歳に創業して、現在42歳で引っ張っているメルカリです。確証バイアスがあることを承知で言うのですが、メルカリの北米進出を個人的に応援している私からすれば、山田氏の黄金期はまだまだこれからではないか、と思ったりもします。

ソフトウェアやネットがモバイル・ソーシャルを通じて様々な産業に作用し始めているのが過去10年のトレンドですが、この動きはまだ始まったばかりです。このトレンドの波に乗れるのは、産業・業界ごとのドメイン知識と暗黙知、人的繋がりを持つベテラン起業家ではないでしょうか。次の10〜20年で大きなリターンを生み出す投資領域の1つはヘルスケア・バイオと情報科学の融合領域という見方があります。こうしたことを考え合わせれば、次の10年は日本でも30〜40代のベテラン起業家たちが、今よりもっと活躍することになるのではないか、と思えるのです。

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Partner @ Coral Capital

Ken Nishimura

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