本ブログはニューヨークのベンチャーキャピタルUnion Square Venturesでパートナーを務める、Fred Wilson(フレッド・ウィルソン)氏のブログ「AVC」の投稿、「Cliff Vesting」を翻訳したものです。本記事は株式報酬制度に関する米国でのプラクティスについて述べたもので、必ずしも日本に当てはまらないこともあることにご留意ください。
社員の入社時に渡すストックオプションやRSU(譲渡制限株式ユニット)には、「1年間のクリフベスティング」の条件を付けるのが一般的です。これは1年間、会社に在籍しなければストックオプションやRSUのベスティング(権利確定)が行われないことを意味します。この期間を過ぎると、四半期ごと、あるいは月ごとにベスティングが行われます。
クリフベスティングの条件を付けることには賛成です。社員または会社側の採用の失敗で、雇用がすぐに終了した場合、株式を使わずに済むからです。
ただし、クリフベスティングにはいくつか気を付けるべきことがあり、これは誰もが知っておいた方がいいと思います。
1つは、社員が入社した年のベスティング分は入社後1年が過ぎるまで権利が確定しないと契約書には書かれていますが、入社後1年となる日の数週間前、場合によっては数か月前に雇用主が正当な理由なく雇用を終了した場合、雇用主は社員のベスティング分についてなんらかの便宜を図るのが適切ということです。さまざまな理由から、この内容を契約書に明記するのは難しいですが、雇用契約の終了日がクリフベスティングの期限に近いのであれば、雇用主は何かしらの調整をするのがベストプラクティスです。
2つ目は、多くの企業がリテンショングラントにクリフベスティングの条件を盛り込んでいる点についてです。リテンショングラントは、入社時のグラントの補完やより長期間会社にいてもらうために提供する報酬のことです。リテンショングラントにクリフベスティングの条件をつけるのは適切でないと私は考えています。リテンショングラントを提供している時点で、その採用は社員と雇用主のどちらにとっても有益であったことを示唆しているからです。
多くの企業、特に経験豊富で洗練された人事部門を持たない若い企業は、このニュアンスを理解していないので、適切な株式報酬制度が設計できません。公正で公平な株式報酬制度は会社にとって素晴らしい価値をもたらすものであり、ここでの失敗は社員と雇用主、どちらにとっても悪影響を及ぼします。
Editorial Team / 編集部