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気候特化ファンドで原子力発電へ取り組む理由

本ブログはニューヨークのベンチャーキャピタルUnion Square Venturesでパートナーを務める、Fred Wilson(フレッド・ウィルソン)氏のブログ「AVC」の投稿、「Nuclear Energy」を翻訳したものです。USVは2021年1月に$162M(約180億円)規模の気候ファンドを立ち上げています。Fred Wilson氏による過去の翻訳記事の一覧は、こちら


私がまだ20代前半だった頃、父とこんな話をしました。私は父に、原子力発電は危険だし、安全に処理する方法がまるで分かっていない放射性廃棄物を発生させるので、原子力発電には反対と言いました。すると父は、原子力発電には確かに問題もあるが、化石燃料を燃やすのに比べれば大したことないと答えました。当時はまだ、温室効果ガスや気候変動について、私を含め、多くの人が真剣に捉えていませんでした。私は父の話に納得できませんでした。

あれから40年、父はもうこの世にはいませんが、父の言葉は今でもはっきり覚えています。私の考えは一周回って、今では数ある発電方法の中でも、原子力発電は良い手段と考えるようになりました。

原子を使って発電する方法は2つあります。原子を分裂させて発電する「核分裂」と原子同士をぶつけて発電する「核融合」です。

核分裂で発電する原子炉の作り方は80年前から分かっています。しかし、核分裂炉には未解決の問題が2つあります。1つは、まれに制御不能になり、メルトダウンすることです。スリーマイル島、チェルノブイリ、福島をはじめ、過去にいくつかの原子力発電所で事故が起きました。稀なケースではありますが、これらの事故は原子炉の安全性に対する世間の信頼を揺るがす恐ろしい出来事でした。また、核分裂炉は放射性廃棄物を発生させ、その廃棄物を処理する良い方法がまだ見つかっていません。そのため世界中で核廃棄物の量が徐々に積み上がっています。

まだ持続可能な方法で、核融合発電ができる原子炉の作り方は解明されていませんが、この数十年で、核融合に関するエキサイティングな技術的進歩がありました。私は、核融合による発電はできるかできないかの問題ではなく、いつできるかの問題であると考えています。

エネルギー消費を電力に頼るようになるほど、ますます多くの電力が必要になりますが、電力消費について研究する人の多くは、再生可能エネルギー(太陽光、風力、水力など)だけでは生活に必要な電力の全てはまかなえないと考えています。私たちが必要とする電力と、再生可能エネルギーで発電できる電力の間には30〜40%のギャップがあると言われています。

現時点で、そのギャップを埋めるには原子力発電が最適です。

USVでは、核分裂炉の問題の解消と核融合炉の実用化は、十分な創造性と資本があれば実現できる技術的、工学的な問題であると考えています。

核分裂炉の場合は、壊滅的なメルトダウンが起きない原子炉の設計と核分裂で発生する放射性廃棄物の利用・消費方法を考えることです。これを実現できるかもしれない有望な技術がいくつか存在します。

核融合の場合は、与えられたエネルギーよりも多くのエネルギーを生み出す原子炉を設計することです。この面での技術の進歩には希望が持てますが、まだまだ先は長いですし、核融合炉を実現するためには、より多くの創造性と資本が必要です。

私たちの気候特化のファンドは、気候危機の緩和と適応の両方に重点を置いて投資しています。核分裂と核融合にまつわる技術的な問題を解消することは、気候危機を緩和するための重要な要素であり、私たちはこの分野に取り組むチームと話をしています。

私はこうした活動に関われることにワクワクしていますし、父もきっと喜んでくれているでしょう。

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Editorial Team / 編集部

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