SEOに取り組みたいけれど、どこから手を付ければいいかわからない。そもそも、リソースも足りない。そんなスタートアップは少なくないかと思います。そこで今回は、コストをかけずに実践できる「SEOの基本のキ」をやってみた結果、1カ月でクリック数やCTRが倍増したというスタートアップ「Seibii(セイビー)」の事例を紹介します。
本記事は、Coral Capitalが投資するスタートアップのエンジニアコミュニティ「Coral Developers」で実施したイベント「スタートアップエンジニア開発課題LT」の発表を記事化しました。話してくれたのはSeibiiでエンジニアをしている辻天斗さんです。
半日かからずに点検できる、SEOの基本事項
Seibiiはクルマの出張整備・修理を行うWebサービスを運営しています。2021年6月に総額8.4億円のシリーズA調達を実施したタイミングで、サイトの流入数を増やすためにSEO対策に乗り出しました。
辻さんによれば、いざSEOに取り組もうとしたものの、エンジニアは別案件の開発に集中していてリソースが足りない状態でした。そんなときに、「SEOの神様」と崇める専門家に出会い、開発コストをかけずにできる「コスパの良いSEO」を教えてもらったそうです。
これらを実践した結果、わずか1カ月でクリック数は2倍に、CTRは4%台から7〜8%に急増。辻さんが実施したのは「SEO基本事項の点検」で、いずれも半日もかからないものばかりと言います。
1:タイトルは短く見やすく
辻さんがまず手を付けたのは、SEOで最も重要な要素とされるタイトルです。
「より短く、見やすくしたほうがいい」という助言を受け、トップページのtitleタグを以下のように修正しました。
「サービス名のSeibiiだけでなく、カタカナのセイビーも盛り込んでいたのですが、それを短くするためにアルファベットのSeibiiだけにしました」
2:タイトルにBigWordを漏れなく
トップページだけでなく、個別ページのタイトルにも手を加えました。
例えば「エンジン故障出張診断」のページは、検索数が多いビッグワードを意識しつつ、以下のようにタイトルを修正しました。
「検索のクエリで多かった『エンジン』という言葉を入れました。また、強調したい『出張』という言葉をあえて2回入れたのもポイントです。
3:ディスクリプションには知りたい情報とBigWordを
エンジン故障出張診断のページではさらに、検索結果の下部に表示されるディスクリプションに「ユーザーが欲している情報」を盛り込んだと、辻さんは説明します。
「ユーザーが知りたい情報を考えると、どんなふうに検索されているかがなんとなくわかってきます。このページでは『セルが回らない』だとか『異音がする』という知りたい情報と、『車のエンジン』や『出張』というビッグワードをdescriptionに追加しました」
4:タイトルの共通部分(媒体名)は後ろへ
Seibiiは本体サイトのほかに、クルマのメンテナンスに関するコンテンツを配信するオウンドメディアも運営しています。オウンドメディアの方では、記事のタイトルタグを以下のように修正しました。
「以前は『Seibiiマガジン』という媒体名を冒頭に記載していましたが、記事の見出しを先頭に持ってきて、共通部分の媒体名は後ろに移しました。さらに、『SEO的にはマガジンって文字はいらないよね?』ということになり、『Seibii』だけにしました」
5:オウンドメディアのヘッダーは本体サイトと似たものに
このほかには、「本体サイトとオウンドメディアが同じサイト扱いになったほうがSEO的に有利」という観点から、オウンドメディアのヘッダーを、本体サイトの白ベースに変更しました。
「同じドメインで運営しているサイトでも、見た目が違うと検索エンジンのクローラーから『別サイト』と判断されてしまう恐れがあります。ほぼ同じデザインにすることで、『別サイトと認識されるスキマを潰した』という言い方が正しいかもしれません」
6:本体サイトとオウンドメディアは「見た目」も寄せる
Seibiiのオウンドメディアは本体サイトと同じ「seibii.co.jp」直下のドメインで運営していましたが、「デザインが異なると別サイト扱いになる可能性がある」と辻さんは説明します。
「同じサイト扱いにするには見た目も大事ということで、ヘッダーに加えて、オウンドメディアのデザインも本体サイトに寄せました。両者を同じサイトとして認識してもらうことで、オウンドメディアのSEO効果を本体サイトへ波及させる狙いがありました」
Seibiiは「SEOの基本のキ」を実践したことでクリック数やCTRを倍増させることに成功しましたが、これらの施策は「SEOの表層部分でしかない」と辻さんは言います。「SEOの本質はユーザーの求めるコンテンツを提供すること」として、個々のコンテンツを最適化する必要性を語りました。
「とにかく大事なのは、ユーザーが求めるコンテンツを提供することです。それができているかどうかを検索エンジンも評価しているので、見やすさや使いやすさのUI/IXを極めていければSEOも良くなるし、本来の目的であるグロースにもつながっていくと考えています」
Content Lead @ Coral Capital