常に変化の最中にあるような世の中だからこそ、大きな夢にチャレンジするスタートアップがマイルストーンを達成したと聞くと、自分のことでなくても心躍るものです。今回は、まさにそんな躍進をしている日本発のスタートアップ、「CADDi」と「Telexistence」の2社に注目したいと思います。CADDiは受発注ソフトウェアのリーディングカンパニーであり、最新の資金調達ラウンドで118億円を調達したと発表しています。Telexistenceはコンビニ向けの商品陳列ロボを開発するスタートアップですが、こちらもソフトバンクやFoxconnを含む投資家陣から230億円を調達しました。両社はどちらも先週に大規模な資金調達ラウンドの成功を発表したことに加え、もう1つの共通点があります。日本のスタートアップとしては珍しく、両社とも調達した資金を米国における事業拡大に活用すると宣言していることです。
どちらもCoral Capitalの投資先ではありませんが、彼らの野心的な活躍には拍手を送らずにいられません。ソニーやトヨタなど、第二次世界大戦後の日本に生まれた偉大なスタートアップの歴史を振り返ればわかるように、グローバル進出は単に高い目標として掲げるものではなく、将来的に市場の圧倒的リーダーになるための重要な足掛かりなのです。そしてご存知の通り、その前代未聞の功績はそれぞれの業界を作り変える革新となり、世界経済にさえも不可逆的な変化をもたらしました。
また、彼らはCoral Capitalの重点投資分野の1つである「ジャパン・アドバンテージ」を象徴する企業でもあります。つまり「日本固有の強みを活かしてグローバルに競争する企業」であり、例えばCADDiなら製造業、Telexistenceならロボティクス業界においてその優位性を展開しています。Coralの投資先で言えば、原子核工学における日本の世界的な強みを活かした京都フュージョニアリングや、ロボティクスで活躍するGITAI、半導体分野に取り組む大熊ダイヤモンドデバイスなどもそうです。これらの企業は多くの場合、中核となる技術的・科学的な部分で他社と差別化できる要素を持っているため、日本のスタートアップにとって壁となりがちな言葉や文化の違いを超えて活躍できるのです。
これらの企業の活躍は、自らの道を切り開くだけではなく、日本経済における重要な転換点の訪れを予兆しているとも考えられます。近年、経済の再活性化に向けて日本政府によるスタートアップへの重点的な支援が行われています。おかげで海外機関投資家からの関心が高まるなど、取り組みの成果がさっそく現れ始めているようです。さらにCADDiやTelexistenceの躍進は、日本のスタートアップにもグローバルで戦えるポテンシャルがあることを示すものであり、彼らの米国進出は日本経済にとっても大きな前進となるでしょう。つまり、これは単なる個々のスタートアップとしての成功の話ではなく、「日本のスタートアップたちが今後の日本の経済成長を加速させる」という遥かに大きなストーリーに発展する最初の一歩なのかもしれないのです。
Founding Partner & CEO @ Coral Capital