自分の会社を売却するかどうかの決断は、起業家にとって人生の中で最も重要な瞬間の一つです。買手企業側から十分な買収額をオファーしてくれる場合がないわけではありません。YouTubeやInstagramなどがその一例です。しかし、このようなケースは稀で、ほとんどの場合、会社は自分から売却するものであり、待っていたからといって買収してもらえるものではありません。プレスリリースや華やかなTechCrunchの記事には書いてありませんが、会社の売却には自ら外に働きかけるというプロセスが伴います。そのプロセスはセールスファネルに似ていて、見込み売却先をジェネレーション(情報収集)、ナーチャリング(関係構築)し、そしてうまくいけばクロージング(決定)します。
このプロセスを開始する前にまず、売却のタイミングはどのように判断するのでしょうか?私の友人であるBedrock CapitalのGeoff Lewis氏が上手くまとめているので、以下にご紹介します。
1) スタートアップが当初の想定通りに展開しなくなったとき
このようなタイミングは様々な形でやってきます。トラクションが思ったほど伸びず、プロダクトマーケットフィットを見つけられていないのかもしれません。または、あなたと共同創業者との間に埋めようのない深い溝ができてしまったり、ビジョンを共有できなくなったのかもしれません。あるいは、次ラウンドをリードしてくれる投資家がどうしても見つからないのかもしれません。どのような想定外のケースでも、その状況が行き詰まっていると感じたら、売却プロセスの開始を検討すべきです。
2) 他の選択肢がなくなってしまったとき
資金が残っていれば、ピボットして別のアイデアで再スタートすることもできます。とはいえ、相当な信念、モチベーションやユニークな優位性がないと、ピボットをやりきることはできません。これらが一つでも欠けた状態であり、しっかりピボット出来るほどではない場合には、他の選択肢がもうないのかもしれません。
3) 業界の人々からは、あなたの会社はまだ順調にみえるとき
会社を売却する際に用心しなければならないのは、売却したいという思いを何とか秘密にしておかねばならない点です。上手くいっているのにどうして売却を検討するのだろうか?あなたの会社の様々な指標が、会社の成長を、少なくともそこそこ上手くいっていることを示しているときが望ましいタイミングです。あなたの業界の方々が、実は怪しいのではないかということを嗅ぎつけてしまった後だと、ちょっとまずいかもしれません。
4) ランウェイが6ヶ月残っているとき
会社を売却するには時間がかかります。適正な価格で売却したければ、きちんと交渉するためのランウェイが必要です。でないと、売却までに資金がショートするか、酷い条件で売却をせざるを得なくなります。ランウェイが残り6ヶ月になった時点で、状況を再度検討し、売却プロセスを開始すべきか否かを判断すべきでしょう。
Founding Partner & CEO @ Coral Capital