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私が考える今後の3つのトレンド

Coral Capitalでは、特定の業界や、最新の注目トレンドなどにあまりこだわりません。それよりも、全てのスタートアップ機会を可能性として検討できるようなフレームワークで投資判断を行うようにしています。そのうちの1つが、「Directionally Right(方向性の正しさ)」でスタートアップを判断するというものです。簡単に言うと、私たちが予想している世界の発展の方向性と、そのスタートアップの基本的な方向性がマッチしているかどうかを1つの基準にしているのです。私たちが投資するようなアーリーステージでは、スタートアップが最初に始めたビジネスも、最終的な形に落ち着くまで徐々に進化していくものだからです。

例えば、私たちがGrafferへ投資したとき、彼らのGovTechへの取り組み方が本当にベストかどうかわかりませんでした。しかし、行政のデジタルトランスフォーメーション自体が今後進むことは確実でしたので、「方向性は正しい」と判断しました。Kaminashiに投資したときも、彼らのアプローチの仕方が本当に適切かどうか確信はありませんでしたが、デジタル化が現場のタスクマネジメントの世界でもいずれ必ず起こることはわかっていました。どちらのスタートアップも、投資した後にビジネスの形がやや変化しています。いずれにしても重要なポイントは、世界で通用するレベルの起業家なら、少なくとも「正しい方向性」に進んでさえいれば、業界で勝ち抜く方法を見つけ出せるということです。

そのため、Coral Capitalでは短期的に注目されている最新のバズワードなどを調べることに時間を費やすよりも、中長期的なスパンで世界がどう発展するかを考えることに重点を置いています。

こうした視点から、今後の展開について個人的に以下のように予想しています。

2022年中には社会が軌道に戻る

日本を含む多くの国で新型コロナウイルスの感染者数が増え続ける中、なかなか楽観的にはなれません。しかし、個人的には、いずれも短期的な落ち込みであり、今後半年から1年かけて急速に回復が進むと考えています。現時点ではまだ配布の進み具合に差がありますが、ワクチンだってすでに完成しているのです。正直なところ、日本のワクチン接種ペースの遅さ、しかも先進国の中で最も普及が遅れている国の1つであるというこの状況にはかなり落胆させられていて、非常にもどかしく思います。ですが、今年中には接種ペースも加速して順調に接種率も上がるだろうとポジティブに考えています。

集団免疫の獲得が進んだ場合の生活がどのようなものか、米国を前例として考えるなら、平常に近い状態へ次第に戻っていくことが予想されます。多くの人がオフィス勤務に復帰し、集会や旅行など、パンデミック前は当たり前に思っていたことが再びできるようになるでしょう。もちろん、何もかもが完全に元通りというわけにはいきませんが、少なくともなんらかの形でほとんどが元に戻っていくと考えられます。

コロナ禍で最も打撃を受けた業界にこそ、有望なスタートアップ機会が生まれる

一見直感に反するようですが、コロナ禍で最も打撃を受けた業界にこそ、有望なスタートアップ機会が生まれる可能性が高いと私は考えています。実際、すでにいくつもの機会が新しく生まれてきています。コロナ禍によってあらゆる業界でデジタルトランスフォーメーションが加速し、変化を拒んできた業界でさえも動きはじめました。しかし、それだけにとどまらないと私は予想しています。旅行や小売業界などで、従来からの大手企業が痛手からの回復に専念せざるを得ない中、スタートアップならその機敏さとゼロからスタートできる柔軟性で有利に展開できる可能性があります。また、コロナ禍の影響で人々の行動様式や、新技術等の導入、規制などに様々な根本的な変化が生じることで、ところどころに新たな機会が生まれ、新規プレイヤーが進出するチャンスになるでしょう。

ベンチャーキャピタルはますますグローバル化し、日本も例外ではない

Zoomは対面コミュニケーションの完全な代替にはならないと考えています。しかし、多くの人が想像していた以上に代替できた部分が多かったのも事実です。投資の世界でも、一度も直接会わずに、Zoomだけで数億円規模の投資が実行されるようになりました。おかげで物理的な距離の重要性がかなり低くなり、ベンチャーキャピタル界のグローバル化が大きく進みました。これまではクルマで行ける距離の企業にしか投資してこなかった投資家も、今では世界中の起業家とビデオ会議を通じて交流し、国境やタイムゾーンを超えて投資するようになっています。

言語や文化の壁の問題は残りますが、このトレンドは日本のスタートアップにも影響すると考えています。海外投資家と交流できる経営チームを作ることができれば、ある程度進んだ成長ステージで資金調達する際に、はるかに多くの資金へアクセスできるという非常に大きなアドバンテージになるでしょう。以前は、起業チームに英語力があっても大したアドバンテージになりませんでした。多くの投資家にとって、日本のような遠く離れた場所は基本的に投資の対象外だったからです。しかし、投資対象に含まれるようになった今なら、英語で交流できるスキルは、それを隠し持っていた起業家にとって大きな武器になり得ます。


投資する予定の業界や分野について、LP投資家やメディア関係者の両方からよく尋ねられます。しかし、Coral Capitalの投資アプローチとそもそも根本的に異なるので、なるべく回答を避けるようにしています。私たちが重視しているのは世界が向かっている方向という視点での「方向性の正しさ」であり、その中で最大の投資機会がFintechにあるのか、ヘルスケアにあるのか、はたまた違う業界にあるのか、必ずしも明確にわかっているわけではないのです。私たちにとってより良い判断材料になるのは、多くの場合、自分の人生を賭けてスタートアップに取り組んでいる起業家自身です。それに、どれほど入念に業界分析をしたとしても、並外れた才覚を持った起業家を見つけられなければ、全ての下準備が無駄になってしまいます。それよりも、私たちは世界がどこへ向かっているのかを常に考え、それに合った機会が現れればすぐに掴み取れるようにしています。ただし、未来の予想にあまり捕らわれすぎないようにし、未来を作っているスタートアップの起業家の方々をより重視するよう心掛けています。

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Founding Partner & CEO @ Coral Capital

James Riney

Founding Partner & CEO @ Coral Capital

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