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a16zは「NFTのShopify」などクリプト投資継続、4、5月の新規投資先

米国のトップティアVCの新規投資先をまとめて手短にご紹介する連載。今回はAndreessen Horowitz(a16z)の4月、5月の投資先から、6社のスタートアップを紹介します。Coinbaseへの出資で知られ、クリプト専用ファンドを運用するa16zらしく、NFTのShopifyとも言うべきBitskiへの出資が目を引きます。NFTについては、こちらの記事を御覧ください。

NFTのShopifyを目指すBitskiへ$19M出資

1社目は「NFTのShopify」を目指すスタートアップのBitskiです。5月上旬の$19M(約21億円)のシリーズAラウンドでリード投資家としてa16zが出資しています。前回のシード調達は10か月前。ポストマネーでバリュエーションが$15Mだったところから、今回は$79Mと急激に大きくなっていて勢いを感じさせます。Pitchbookによれば、社員数はまだ5人です。

よく知られているように、a16zはクリプトに対して骨太の仮説とテーマを設定し、合計$865Mの専用ファンド2本を組成して投資を継続しています。5月27日には、この現在の約1,000億円近いファンド運用額を一気に2倍にする1,000億円規模のクリプト専用の3号ファンドを組成中との噂が流れました。ちなみに、a16zは全体のファンド運用額が$16.5Bですから、もしクリプト専用ファンドが$2B規模となれば、全体の12%超となります。

a16zの仮説というのは、ブロックチェーンというのは新しいコンピューティングプラットフォームの登場であるというものです。1960年代のメインフレーム、70年代のPC、90年代のインターネット、2000年代のスマホに続くものです。それぞれ全く異なるコンピューターの使い方が登場し、社会を変えてきました。ブロックチェーンは国や法人、個人など誰かを信用することなくコードの実行ができる初めてのコンピューターが登場したというのが彼らの基本認識です。クリプトの応用分野として、決済、価値の保存、DeFi(分散金融)、Web3(GAFAなど特定プラットフォーマーに依存しない分散ネットワーク)などに加えて、クリエイターの新たなマネタイズ手段ということを挙げています。

NFTのShopifyを目指すBitskiは、まさにクリエイターがマネタイズする手段を提供するスタートアップです。これまでNTFで話題になってきたのは、NBAの動画ハイライトや「Twitter共同創業者であるジャック・ドーシーの最初のツイート」といったデジタルではあるものの、現実社会側の何かをデジタル化したものだった印象もあります。一方のBitskiは、メタバース上でデジタルグッズについて所有という概念を実現する基本構成要素がNTFだということを言っています。そこで、デジタルのファッションアイテムやフィルター、アートなどを創るクリエイターと、それを購入して所有する利用者を結ぶために、クリエイター向けにはShopify並に使いやすい販売機能を提供するのだ、というのがBitskiです。今のところNFTの自分で発行するには、どのブロックチェーン上でトークンを発行するのかを決めて、そこで使われる規格(例えばEthereumならERC-722やERC-1155)に対応したウォレットをインストールして……、というふうに、まだアーリーアダプター向けの印象を拭えません。Bitskiはそうした手間を省くプラットフォームと言えそうです。

クリプトへの世間の関心の高まりと、新しい実験的アイデア・開発は、暗号通貨の価格高騰と合わせて2011年、2013年、2017年とサイクルでやってくる、とa16zのクリス・ディクソン(Chris Dixon)氏は説明してます。そうした波とは無関係に、2009年に専用ファンドを組成して投資を続けてきたa16zが、引き続きクリプト投資に強気、かつ一貫してポートフォリオを増やしていることが分かります。もちろん、Coinbaseの上場という大きな成功事例があったことも背景にあります。

Fintech、バイオ、コロナ禍に乗ったスタートアップへの投資も

a16zの4月、5月の投資先を見てみると、アデノ随伴ウイルスベクターを利用する遺伝子療法にAIを適用する研究開発する「Dyno Therapeutics」(累計調達額$109M)や、メンタルヘルス領域で患者とセラピストをつなぐプラットフォームの「Headway」(累計調達額$100.5M)などバイオ・ヘルスケアも目に付きます。

a16zの投資案件でほかの注目は、2015年創業のFintechスタートアップ「Current」です。4月末の$220MのシリーズD調達ラウンドでバリュエーションが3倍の$2.2Bとユニコーンとなりました。給与前払いサービスがあったり、最低預金残高の制限などがないCurrentはミレニアル世代に支持されています。既存の銀行は巨大な業界である一方、消費者のNPSがきわめて低いことから、今後10〜20年で大きく変化する業界であるとa16zは投資の背景を説明しています

シリーズCで累計調達額が$204MとなったDeelは、外国人社員の雇用支援プラットフォームで、150か国以上の給与支払いや税制に対応しています。コロナで従業員の地理的制限について考え直す組織が増える中で、伸びていることを伺わせます。

同様にFirstbaseもコロナ禍で顕在化したビジネス機会に応じた投資に見えます。Firstbaseはリモートワークを前提として、社員の什器やデバイス、ライセンス管理するプラットフォームを提供します。自宅で仕事をする社員に対してセキュリティー対策を施した上でPCを配送するようなことができるといいます。

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Editorial Team / 編集部

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