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人事担当者が語る「自分にマッチするスタートアップを見つける4つの要素 」

新たな経験を求めて、スタートアップにジョインする人は多い。AIでホテルの市場分析と料金設定を支援する株式会社空の人事責任者・田島一平さんもその一人。

もともと田島さんは新卒でコンサルティング会社に入社。その後、フリーランスを経て現在に至ります。大企業もフリーランスも経験したうえで、スタートアップである空を選んだ理由は何だったのでしょうか? また、転職先としてスタートアップを選ぶときの判断軸とは? 聞き手は、Coral Capitalで投資先スタートアップの採用支援を行うタレントマネージャー津田遼です。

アメフトでの原体験を求めて「空」へ

ー田島さんは大企業やフリーランスを経て、現在はスタートアップである株式会社空で人事責任者をしています。色々な組織規模や業界を経験した後、なぜ空への入社に至ったのでしょうか?

田島:そもそも僕は2009年に、新卒で株式会社リンクアンドモチベーションに入社しました。そこで、中小〜大手企業を対象に、新卒採用のコンサルティングを行っていたんです。4年半ほど勤めていましたが、その後はフリーランスで中小企業の事業継承関連のコンサルティングをしていました。

ー事業継承のコンサルでは、どんなことをやっていましたか?

田島:わかりやすくいうと、創業30年以上の中小企業の事業をどうやって次の世代へつないでいくのかを人事的観点から支援していました。僕のクライアントには世の中の大半の人は知らないが「地元では有名でちゃんと利益を出している企業」が多く、事業を次世代にどう引き継いでいくかなどを支援していましたね。

ーそこからなぜスタートアップである空へ?

田島:フリーランスとして働いている中で、スタートアップと仕事をする機会がありました。今までスタートアップの会社のことを正直あまり知らなかったのですが、本当に何もないところからサービスや組織を作っていくことへの圧倒的な熱量に惹かれました。そして、それが本当に面白かったんですよね。自分も、そんな環境でチャレンジして会社を成長させて圧倒的な自己成長がしたい思いました。

僕は大学時代、アメフトをしていました。アメフトって、けっこう戦略的なスポーツなんですよね。チームの戦略にあわせて「どんなチームにするのか」「どんなメンバーを採用するのか」を考えていく。そして、それが実行につながっていく過程もおもしろいんです。思えば、僕の原体験は、アメフトでの「日本一になりたいという想いと能力を持っている人を集める」「チームがワークする」「結果につながる」という感動や面白さにあったのかもしれません。仕事を通じてスタートアップに出会ったとき、このときの感動や面白さに近い経験、それを超える経験ができると感じました。

ー「チャレンジをする」という視点で考えた際に、これまでの職場とスタートアップである空はどのように違うと感じますか?

田島:誇れる経歴を持っているわけではありませんが、これまでの職場でもチャレンジは常にしてきたと思っています。しかし、ゼロから事業や組織をつくっていくような経験ではなかったんです。スタートアップである空で人事としてメンバーや事業にとって価値ある会社づくりに挑戦することは、僕にとってアメフトでのエキサイティングな日々に似たところがあるように感じました。

転職するにあたって重視したのは、「つくりたい組織」が経営者と一致しているかどうか。そして事業そのものに可能性があるかどうか。そして、10人以下のアーリーステージであるかどうか。この条件に当てはまるスタートアップを探していたところ、空にたどり着きました。

「会社にとっても、採用候補者にとっても、100%納得できる採用をする」

ー今、田島さんは空で唯一の人事担当者です。具体的に、日々どういった仕事をされているのでしょうか?

田島:空には「Happy Growth」というビジョンがあります。これは、空で働く人や関わってくださる一人ひとりが幸せに働けるかを追求したもの。このビジョンを実現させるには、僕らが楽しく働いていることはもちろん、会社としても経済的に成長している必要があります。その両軸での成長を目指すという意味が込められています。僕は、そのビジョンを人事的側面からつくろうとしています。具体的に言うと、採用や人事制度設計、カルチャーの浸透などがおもなミッションです。

ー田島さんは前職などでも人事的観点でのコンサルティングをしていました。空での働き方は、そことはどう違いますか?

田島:これまで働いてきた会社では、先人たちが積み上げてきたノウハウがあります。当時は、そういったノウハウを組み合わせながら、下地の上に自分なりに働いてきたイメージです。しかし今は、ノウハウどころか、下地らしいものもありません。ゼロからすべてを整えていくところは、前職とはだいぶ違うところですね。

ーまさにゼロイチなんですね。それに、アーリーステージのスタートアップにとって、採用や人事制度は、組織だけでなく事業の成長にも大きく影響する部分です。

田島:そのとおりです。かつ、会社のブランドのようなものもつくっていく必要があります。空は2017年にTechCrunchのスタートアップバトルで最優秀賞を受賞しています。スタートアップ業界では多少名前を知っていただけるようになったものの、世の中にインパクトを与えるような存在になれたわけでは当然ありません。まだまだ世間では「空ってどんな会社?」のほうが圧倒的に強いです。そんななかで、求人を出しただけでは誰からも応募がない。つい最近になってようやく月10人くらいだった応募数が150人くらいに増えましたが、それまではひたすら会社の魅力を発信し続けていました。

ー応募が増え始めたのは、いつごろからですか?

田島:約半年かかりましたね。その間、全然採用できていなかったので「自分の価値はなんなんだ」と、無力感に苛まれる時期が続きました。

ーなかなかのハードな状況ですね…。田島さんはどうやってその時期を乗り越えたのでしょうか?

田島:僕は、組織づくりや事業づくりにおいて最も強い武器となるのが「採用」だと考えています。多くの会社が採用後の戦力化や教育に力を入れています。もちろんそれも重要だと認識しているのですが、そもそもその人が入社して成し遂げたいことと会社としてやりたいことをすり合わせることも重要です。

空では、候補者の方に求めていることをしっかり擦り合わせたうえで、双方の合意のもとで入社してもらうかどうかを検討していただいています。短期的には手間暇かかりますが、中長期的に見るとそのほうが圧倒的に効率的だと考えています。会社として認知が低い時期だからこそ、1件や2件の応募に一喜一憂してしまいがちなのですが、目線は下げないように意識していました。この点は、代表の松村も同じ思いでした。アーリーステージだからこそ、僕らだけでなく採用候補者にとっても100%納得できる採用をする。その想いがあったおかげで、乗り越えられたのかもしれません。

スタートアップへの転職「うまくいくかどうかは考えていなかった」

ー田島さんは大企業もフリーランスも経験していますが、なぜスタートアップの一人目の人事担当というポジションへ飛び込むことができたのでしょうか?

田島:僕の場合、期待やワクワクのほうが大きかったですね。自分ができるかどうかは、あまり考えていなかったかもしれないです。もちろん、失敗していいと思っていたわけではないのですが。世の中に前例のないビジネスや組織を作ろうとしているから、そもそも1発でうまくいくとは思っていません。多く挑戦し、失敗できる幅を増やしていく。そういう意味での不安はなかったですね。

津田:なるほど。

田島:そして、空は「とりあえずやってみよう」という風土があり、チャレンジすることも応援してくれる会社です。それにダメだったらやめよう、というのを許容してくれる。だからチャレンジしやすいんですね。でも、圧倒的に苦しい(笑)。正解がないからこその苦しみや不安は常にあります。同時に、だからこそ生み出す喜びや楽しみもそれ以上にあると感じていますね。

ー苦しいけど楽しいという(笑)。

田島:そうなんです(笑)。空も含め、アーリーステージのスタートアップは、組織のフェーズも1ヶ月単位で変わっていきます。これほどまでに毎月、それこそ2週間で変わっていくスピード感は味わったことがないですね。僕は人事担当なので、変化があるなかでも採用したメンバーが活躍している姿を見ることができています。それはやっぱり、うれしいですよね。

ーそれはうれしい手応えですね。

田島:あと、最近感じ始めている手応えが、空のブランディングです。僕は直接サービスをつくっているわけではありませんが、採用した人たちによって顧客から嬉しいフィードバックが寄せられるようになりました。また、採用での応募でも「空のカルチャーがいいと思った」というメッセージが添えられることも増えました。そう言ってくださるすべての人を採用できるわけじゃないですが、着実に空のファンが増えてきていると実感できて、嬉しい限りですね。

自分にマッチするスタートアップを見つける4つの要素

ーこれまでの経験を踏まえて、スタートアップに向いていると思う人、楽しめそうな人ってどんな人だと思いますか?

田島:松村もブログ 「スタートアップで働くか大企業で働くか」はどっちでもいい:自分に合った自由さを考える に書いていたかと思うのですが、どのような組織で・誰と働き・何をするのか、それを自分で考え、実行できるのがスタートアップの特徴です。いろいろ決められるし、やっていい。しかし、責任を取るのは自分しかいない。その面白さと大変さを楽しめる人は向いているかもしれません。それが辛いと感じるなら、「ちょっと違うかもしれない」と判断していいと思います。

ー自由と責任という意味では、スモールビジネスやフリーランスにも近いことを言えそうですが、スタートアップのそれはどう違うのでしょうか。

田島:そうですね。「自由と責任」という意味では、近しい部分はあるかもしれません。しかし、本来のスタートアップの定義は、「これまで世の中になかった事業やサービスを創り出している」というフェーズを指しています。そうすると、スモールビジネスとはフィールドが違います。そして、フリーランスは基本的には個人で仕事を請負い、遂行していく形になります。対して、スタートアップでは新たなマーケット自体をつくるワクワク感があります。また、フリーランスのように個人ではなく「あくまでもチームとして」の立ち位置で価値を生み出す面白さがあると思いますね。

ースタートアップで働いてみたいと思っている人はいると思うのですが、自分にマッチするスタートアップはどのような軸で判断すればいいのでしょうか?

田島:おすすめしたいのは、4つの軸で考えることです。「1:事業への共感」「2:どういったスタンスで課題解決に関われるのか」「3:会社が目指すビジョンと自分の考えがあっているかどうか」「4:一緒に働きたい人かどうか」です。1〜3つ目までは、自分で調べていくことができます。最後の4つ目は、直接会って話してみて、同じ価値観があるかどうかを確かめてみるといいと思います。かくいう僕も、松村と数回会って話しました。そこでは面談と言うよりも「どんな組織、世界観をつくりたいのか」をディスカッションしていた気がします。

ーそこで違うと赤信号?

田島:30人以下だと、一人ひとりの影響力が本当に大きいです。組織が進む方向と自分が目指したい方向が違うとストレスです。そこに違いがあったら、他を選んだほうがいいですね。

ー最後に、スタートアップでのキャリアに興味を持っている方へ、メッセージをお願いします。

田島:特にアーリーステージでのスタートアップおいて、バックグラウンドはあまり関係なかったりします。正解のないところで戦わなければならないので、必要なのはあらゆる状況から学べる力と行動力。そして、その2つを支えるのは、目の前の仕事を「やりたい」と感じ、全力で楽しめる内発的なモチベーションです。スタートアップへの転職を考えるとき、まずは自分自身を突き動かすエンジンやエネルギーがどこにあるかを考え抜くといいかもしれません。

■プロフィール
田島一平(Ippei Tajima)
法政大学卒業。2009年に株式会社リンクアンドモチベーションに入社。中堅~大手の新卒採用コンサルティング業務に従事。その後、中小企業を対象とした事業承継のコンサルティング会社、個人事業主として活動し2018年3月に株式会社空に入社。

津田遼(Ryo Tsuda)
早稲田大学法学部卒業。日本GE株式会社のファイナンス部門でFP&Aアナリストとして経験を積んだ後、グリー株式会社に人事として入社。グリーでは、中途採用、組織人事(HRBP)、社内活性、派遣採用/労務管理、BPO、米国子会社での人事評価などに従事。Coral Capitalでは主に投資先スタートアップの採用を支援している。

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