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資金調達記事はスタートアップにとって名刺になる

Coral Capitalは投資先企業に対して「採用、広報、資金調達、コミュニティー」の主に4つの面で支援を提供しています。広報という観点からシードステージで出資するスタートアップに毎回お伝えしているのが、シード資金調達のニュース記事を出すことの重要性です。TechCrunch JapanやTHE BRIDGE、CNET、Forbes、日経新聞などのメディアに取り上げてもらえれば、その掲載記事はスタートアップにとって向こう1、2年は名刺代わりになるのです。きれいな名刺を用意することも、メディアに記事が掲載されることも、事業をつくって伸ばしていく上で本質ではありません。しかし、どちらもあったほうが便利なのです。第三者からみて必要十分な情報が記事としてまとまっていると、「こちらを見てください」とURLを1つ伝えるだけで済むからです。

資金調達の記事は数十億円規模でもない限り、WeWork騒動やZOZOの買収劇、Chatwork上場のようにビッグニュースというわけにはいきませんが、スタートアップ企業が初めて広く名乗りを上げる機会として、十分に関係者の耳目を集めます。私たちのようなVCはもちろん、起業家やコンサルタント、エンジニア、当該事業領域に取り組む企業の経営企画部やオープンイノベーション担当者、弁護士や会計士といった人々が、様々な理由からスタートアップの資金調達記事を見ています。最近なら人材系サービス、不動産サービスといった人々も、特に大型資金調達の動向などは見ているものです。

スタートアップの動向を気にしている人なら初対面であっても「TechCrunchの記事で見ましたよ」という会話は良くあるものです。同じ3000万円をシード調達している場合でも、メディア露出があるのとないのとでは全く業界内での認知度が違ってきます。よほど意識的に「ステルス」にして初期フェーズを走りきりたいということでもなければ、資金調達のリリース記事を出さないというのは、非常にもったいないことだと思います。

資金調達はニュース性が高い

初めてスタートアップする起業家の皆さんの間で、あまり認識されていないなと思うのが、ほかのプレスリリースのネタに比べて資金調達のニュース性が圧倒的に高いということです。第三者割当増資という形で初期フェーズのビジネスやサービスについて誰かが投資するというのは、きわめて重要なシグナルです。それは誰か第三者が、その領域に未来の可能性があると判断したということですし、似た領域で資金調達が続けば、それはテックビジネスのトレンドにおける先行指標だと考えられるからです。

シード期のスタートアップは新領域に取り組んでるか、新しいアプローチを採っていることでしょう。良いか悪いかは議論がありますが、メディアは新規性を重視します。だから、シード期の最初のリリースというのは取り上げられやすのです。資金調達の事実と、プロダクトの説明がセットというのが重要です。例えば、すでに資金調達の事実が先に出てしまっている場合、プロダクトのローンチですといってメディアに声がけをしても、掲載確率はぐっと下がるということです。ニュース性が低くなるのです。

新規性を重視するメディアにとって「初出かどうか」も重要です。元メディアの中の人としてお伝えしたいのは、「○○新聞にも掲載されました」というのは掲載依頼時に伝える言葉としては逆効果だということです。すでにどこかで記事になっているのであれば、それは新規性が低いのです。特に資金調達の事実を伝える記事であれば、数時間の差であっても新規性はガクッと落ちます。逆に、「御社にだけ記事掲載をお願いしたい」という交渉カードは有効で、「もし御社が記事にしてくれるのであれば、他には事前に情報共有をしない」というのも、よくある交渉方法です。

メディアには、わらしべ長者効果がある

案外知られていないのはメディアの人たちが、情報収集やネタ集めのために他社のメディアを結構広く見ているということです。例えば、TechCrunchの記事はForbesや東洋経済、日経新聞の記者が見ていたりします。そして日経新聞の記事はNHKやワールドビジネスサテライトのプロデューサーというように、カバー範囲に応じて各メディア間には間接的な接続性があります。専門媒体に対してテレビの民放から取材が入ることも珍しくありません。

1つの話題が多様なメディア間で波及していく様子はリップル効果と呼ばれたりするようですが、私は「わらしべ長者効果」と呼ぶ現象があると考えています。各メディアは影響力やリーチの幅などで格上、格下というものがあります。面白いのは、最初は専門媒体の小さな記事であっても、それが徐々に大きな媒体に広がっていくことがあることです。それは事業が成長軌道に乗るスタートアップにとって自然なことでもあります。わらしべ長者が1本の藁から始まって、徐々に、より良いモノへと物々交換していくようなものです。シード期の資金調達リリース記事というのは、スタートアップにとって最初の藁でもあると思うのです。

社内にも良い影響がある

メディアに記事として掲載されれば、そのことで認知度や信用度があがります。これは採用広報として有効ですし、近い将来に社員を採用するとき、新聞などに記事が出ていれば、その社員の家族を説得する材料としても強力です。もちろんB向けであれば、営業時にも利用できるでしょう。

もう1つ、見落とされがちなのはメディアに掲載されることによる、社内メンバーに対するポジティブな心理的影響です。シード期のスタートアップであればプロダクトのトラクションが未知数かもしれません。そんなときに大手メディアや業界で知られた媒体に自社の記事が掲載されれば、社内の士気が上がります。シリーズAぐらいであれば、ビジネスにさほど興味がない社内のエンジニアであっても、「うちの社長は絵空事を言ってるわけではないのか」と理解してくれることでしょう。この社員の士気向上という効果は過小評価されていると思います。

 モメンタムを失わないために

資金調達のリリースもシリーズA前後で数が増えてくると、毎回やる意味があまりないように感じるケースもあるかもしれません。この辺りは考え方次第ですが、個人的にはやらない理由がないと思っています。

1つは、やはり採用広報に有利だからです。資金調達額が最重要指標というわけではありませんが、潜在転職層にとって、あるスタートアップが直近でいくら資金調達しているかというのは重要な話です。ほとんどの転職者は法人登記簿謄本を取り寄せることはせず、ググるだけで済ませるものですし、売上やトラクションを外部から推測するのは容易ではありません。以下はCoral Capital投資先のSmartHR創業者で代表取締役の宮田昇始さんのツイートです。

資金調達に限りませんが、プレスリリースを出すというのは、スタートアップにとっては外から聞こえる鼓動のようなところがあります。冒頭に書いたこととも似ていますが、事業をつくる上で本質ではないことであっても、広い意味での「周囲からの見え方」は軽視できません。1年とか2年という長期にわたって特に何も聞こえてこないスタートアップというのは、外からはモメンタムが失われたように見えるものです。たとえそれが事実に反するとしても、そう見えるものです。そうならないためにも、資金調達というニュース性の高い機会を逃さずに、内外に向けてシグナルを出すのは良いことだと思います。

シードファイナンス広報
西村 賢

西村 賢

Partner, Chief Editor @ Coral Capital

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