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なぜ友人同士で創業したチームが最も壊れやすいのか?

Coral Capital創業パートナーCEOのJames Rineyが先日、「恋愛関係にある共同創業者は成功できるのか?」というブログ記事を公開しました。ブログ記事の中では、海外の事例として、恋愛・婚姻関係にあるカップルが共同創業し、10億ドル以上のバリュエーションにまで成長した企業を3社紹介しました。

反例は1つあれば十分なので、「成功できるのか?」という問いに対する答えは、もちろん「イエス」です。これは海外に限らず、日本を見ても自明です。日本の隠れたユニコーン企業(?)と言われるアパホテル創業者の元谷夫妻は成功事例ですし、日本に限らず多くのスモールビジネスは夫婦経営です。

楽観が必要な起業において、成功事例など1つあれば十分だと考えるのは大事なことだと思います。ただ、恋人や夫婦と言わずとも、親友や友人同士が共同創業者となった場合には、元同僚や知人といった場合と比べてチームとして最も不安定であるという調査データがあることは知っておいて良いかもしれません。

創業チームの安定性は「元同僚 > 知人 > 家族・親友」

調査データは米国のものです。約1万人の起業家へのインタビューから得られた知見をまとめた著書『起業家はどこで選択を誤るのか ― スタートアップが必ず陥る9つのジレンマ』(ノーム・ワッサーマン著、英知出版、2014年)に、詳細な分析とインタビューした起業家や投資家の声がまとめられています。例えば、Twitter共同創業者で連続起業家のエバン・ウィリアムズが恋人とスタートアップを立ち上げて苦い思いをした話など、いくつも起業に関する人間関係のハードシングスが証言とともに出てきます。

ワッサーマンが挙げるジレンマの1つが、似た者同士や近くにいる人と共同創業することのリスクです。気の合う仲間や友人、良く知った家族同士というのは共同創業者に選ぶ自然な選択肢である一方、実は最もチームの安定性が低いという直感に反するデータがあるのです(さらに言うと、スキルや人脈のオーバーラップが大きく、大成功する可能性が低いということも)。

驚くのは、友人同士で創業すると不安定だというばかりでなく、知人の知人など、もともとは赤の他人同士で起業したほうが、まだマシだというデータです。組むなら友人より、むしろ他人。これは、かなり直観に反するのではないでしょうか? ワッサーマンの研究によれば、最も安定性が高いのが一緒に働いたことのある元同僚で、次に安定しているのが知人。そして最も安定性が低く、崩壊しやすいのが家族や親友だというのです。

なぜ、そういうことが起こるのでしょうか?

まず、基本的な話としてワッサーマンが指摘するのは社会的な関係性(家族や友人)は、プロフェッショナルな仕事上の関係性とは異質なもので、そこを混同してはいけない、ということです。これは組織で仕事をしていたことがある人なら納得できると思います。友人や家族は利害を超えて対等な存在であることが多い一方、仕事の関係というのは実力や貢献度に応じて収益や株式を分けるものだからです。また一般には仕事には上下関係となる指揮系統や、意思決定のストラクチャーがあります。

ワッサーマンが400のスタートアップを調査した結果、社会的関係性があるメンバーが1人増えるごとに、共同創業者の誰かがチームを去ることになる可能性は28.6%も増えると分かったそうです。

関係悪化のダメージが大きいからセンシティブな話題を避ける

ワッサーマンによれば、家族・友人同士の創業メンバーが問題を抱えがちなのは、よりたくさん問題が起こるからというよりも、問題が大きくなるまで放っておかれがちだから、ということです。

友人は仕事を抜きにしても友人のはずです。その関係性が仕事で壊れてしまうことの精神的ダメージは大きいでしょう。家族はなおさらです。だから、ついセンシティブな会話を先送りにしてしまって問題が手遅れになってしまうことがあるのです。元同僚であれば、言いづらいことを言うのも仕事です。何か問題があっても前向きに調整したり解決した過去があれば、早めに腹を割って話すこともできます。

これを図示したのが以下のチャートです。破線は「話しづらいセンシティブなことを話し合う可能性」です。真ん中のV字の実線グラフは関係が壊れたときのダメージの大きさです。この2つの傾向から、左側の「家族・親友」のほうが創業メンバーとしての安定性が低い、ということです。

創業チームメンバーの安定性

創業チームメンバーの安定性(左ほど不安定) 出典:The Founder’s Dilemma, Noam T. Wasserman

センシティブな会話というのは、例えば、こういうものです。創業メンバーが5人いたとしましょう。全員が友だちです。しばらく仕事をしてみた後に、このうち誰か1人のパフォーマンスが明らかに悪かったとき、どうするでしょうか? 他のメンバーたちは薄々は「彼は何をやってるんだろうか?」と疑問に思いはじめて問題に気づいています。ところが、誰も口にせず放置してしまうことが起こります。誰だって友人を傷つけたくはないですよね。

あるいは個人のプレイヤーとしては良いエンジニアでも、CTOとしてピープルマネジメントに問題があり、エンジニアの離職が多数発生するようなこともあるかもしれません。CEO以前に友人であった場合、この問題を早めに話し合ったり、最悪の場合には役職をはずしたり、辞めてもらうという意思決定ができるでしょうか?

悲観的シナリオを想定すること、話しづらいことを話すこと

『起業家はどこで選択を誤るのか』には、友人・家族で創業する場合に取り入れることができる、具体的な処方箋もいくつか書いてあります。例えば、あらかじめ悲観的なシナリオを想定して話し合いをしておくことや、話しづらいことを無理してでも話す場を設けることなどです。センシティブなので創業時に避けがちであるものの、話しておいたほうが良い重要な論点としては、例えば資金が尽きたとき、どこまで行ったら互いに「失敗」と認めて解散するのかという話もあるでしょうし、期待値に合わない働きのメンバーの扱いをどうするか、という話もあるでしょう。全員が家族・友人というわけでないのなら、そこの「濃い」関係を別扱いとして、ビジネス上のコミュニケーションをあえて別経路で迂回させるとか、必ず特定の2人の議論は他のメンバー全員に見える形でシェアするようにするとか、センシティブな話題のときには第三者的な仲介者を入れるといった対策も挙げられています。

友人と起業をした結果、友人を失ったという話は日本でも良く聞くことです。おさななじみの共同創業者たちが、気づいたら子どもの頃にまでさかのぼって非難しあっていたという話も聞きますし、空中分解したチームの話も珍しくありません。

そうそう、もちろん友人同士での創業をお勧めしないなどという意図で、これを書いたわけではありません。あらかじめリスクを知り、悲観シナリオも見つめて準備をすること、センシティブな会話から逃げないことなど、友人や会社を失う前に取れる対策はあるのではないかと思うのです。

企業文化の構築共同創業者

西村 賢

Partner, Chief Editor @ Coral Capital

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