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仮説がクリアなら、VCはリスクを取って起業家に賭ける:投資判断の舞台裏(3)

こんにちは、Coral Capitalパートナー兼編集長の西村です。先月新たに開始した「投資判断の舞台裏」シリーズの第3回です。毎月投資を検討する300〜400社のスタートアップの中から投資に至る1、2社とのコミュニケーションがどのようなものか、またそのときの投資判断のロジックをお伝えするのがシリーズの狙いです。8月にCoralにジョインした西村が創業パートナーの澤山陽平に話を聞く形で記事にしています。

第1回目は「コスメ動画アプリに見えて実は違う、NOINはEC前提のプラットフォーム」というタイトルで、「動画、EC」というテーマでも、従来と切り口が逆であれば、勝ち筋が見えるので投資したというロジックを紹介しました。第2回目は「投資時からクロスボーダーM&Aも想定していたポケットコンシェルジュ」と題して500 Startups Japanの第1号案件でもある投資のロジックを紹介しました。Coral Capitalはまだ設立4年目の比較的新しいファンドですが、出資時の読みと、その結果が両方そろっているディールとして、今後起業を検討されている方の参考になるのではないかと思います。

さて、第3回目は不動産テックです。

不動産テック分野でCoral Capitalは「すむたす」「BluAge」の2社に出資していますが、実は2社とも私たちCoral Capitalのほうからお声がけをしています。何年も前から国内スタートアップ投資を見てきた人であれば、少し意外に思うかもしれません。というのも、これは教育系スタートアップのEdTechにも言えることなのですが、国内では2010年代初頭からの不動産テックへのスタートアップ投資が一巡し、少しモメンタムが落ちていた背景があるからです。

「不動産テックというセクター全体に対して積極的でない投資家が国内に多いということは、確かにありました。ただ、ゼロベースで評価して見ればポテンシャルは明らかだっんです」

と澤山は振り返ります。

米国では不動産テック領域でGAFAならぬ「ZORC」という言葉が生まれるほど、目覚ましい伸びを示す不動産テックのスタートアップが出て来てもいました。ZORCは「Zillow」「Opendoor」「Redfin」「Compass」の4社です。

ごく簡単に紹介すると、Zillowは不動産ポータルとして2011年にIPOをしていて約6,000億円の時価総額となっています。Redfinは2004年創業で2017年にIPOしています。2019年10月現在時価総額は1,500億円ほどです。掲載料や広告でマネタイズするほかの物件掲載ポータルと違って、不動産エージェントが入る形のトランザクションに対して課金するプラットフォームを提供しています。同様に不動産のトップエージェントを集めるCompassは2012年創業で、2018年時点で5,000億円近いバリュエーションと報じられています。Opendoorは2014年スタートで、独自の価格査定アルゴリズム「iBuying」を提供していて、やはり時価総額は2019年3月時点で約4,000億円のユニコーン企業となっています。

私たちの投資先の、すむたすはOpendoorに似たモデルを日本で展開しています。

「不動産領域はスタートアップが取れるマーケットがあるはずということで、リサーチしていました。2018年5月頃です。そのとき、すむたすを見つけてこちらからアプローチしました」

すむたすは、中古マンションを手間なく現金化したいという売り手のニーズを掴んでトラクションを出していますが、これはOpendoorでも似ていて、3つのDがカギだそう。離婚(Divorce)、相続(Death)、Debt(借金)。例えば、離婚のための財産分与で揉めている夫婦は、3か月もかけて中古マンション売買エージェントに販売依頼をして内見に対応するということができません。すぐに現金化したいニーズというのがあるのです。

「すむたすに出資をしたとき、まだプロダクトはありませんでした。ただ、創業者の角高広さんは長く業界にいた人で、プランもしっかりしていました。ここまでは分かっていて、この部分は仮説です、ここから先はやってみないと分かりません、という説明もクリアでした」(澤山)

何が仮説で、その仮説を検証するための資金がどれくらい必要かということも明確だったため、出資の意思決定に至ったといいます。

「恐らく即時現金化のニーズはある。ただ、実際に中古売買プラットフォームを使った直接売買の市場が全体の1%なのか20%になるかは分からない。そこは角さんに賭けてみよう、チャレンジする価値があるよねということで、その分からない部分のリスクをVCとして取ったということです」(澤山)

Coral Capitalとして、すむたすにはシードで5,000万円を出資し、その資金で実際にマンションを3件ほど買い取り、売却するところまでやってみました。そして、このモデルが回ると分かったことから、プレシリーズAの追加投資を実施して、現在はさらなる拡大を進めているところです。

さて、不動産テック領域の投資先のもう1社は「BluAge」です。こちらはRedfinやCompassのように、個々人の不動産エージェントが活躍するような、現在の日本の不動産売買のあり方を変えるようなビジョンを掲げて「カナリー」というモバイルアプリを提供しています。

「まず創業者の佐々木さんがメリルリンチからボストンコンサルティングというキャリアを経ていて、議論をしていても間違いなく優秀だったということも出資を決めた理由として大きいですが、期待したのは将来のところ。不動産売買を、すべて不動産仲介会社が担う必要はないはず。今後、ギグエコノミーのようになっていき、個人エージェントが活躍する可能性がありますよね。Airbnbが物件を持たないホテルチェーンだとしたら、BluAgeは営業マンを持たない日本最大の不動産エージェントになる。この仮説をテストするために現在は自社で営業マンを抱えています」(澤山)

以上、不動産テックの出資案件2つをご紹介しました。いずれも潜在市場規模は大きく、テクノロジーやプラットフォーム、あるいは分散したエージェントが大きくビジネスのあり方を変える可能性がある領域です。

これは不動産分野に限った話ではありませんが、何が仮説で、その仮説検証に何が必要か、それをクリアに説明できる起業家の皆さんであれば、私たちVCは一緒にリスクを取りたいと考えている、ということがお分かりいただけたのなら幸いです。

BluAgeすむたす不動産テック投資判断の舞台裏

西村 賢

Partner, Chief Editor @ Coral Capital

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