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有名人を「お飾り」の取締役として入れてはいけない

本ブログはニューヨークのベンチャーキャピタルUnion Square Venturesでパートナーを務める、Fred Wilson(フレッド・ウィルソン)氏のブログ「AVC」の投稿、「Trophy Board Members」を翻訳したものです。


私はセラノス(Theranos)を題材にした書籍『バッド・ブラッド』(Bad Blood:未邦訳)を読んでいませんが、友人や同僚で読んでいる人はかなりいます。

セラノスが良い企業ではないことを示す「徴候」はたくさんありました。対外的な箔付けとなる、高名な人物を取締役会に集めたのもそうした点のひとつです。

こうした見せびらかすための「トロフィー」のような取締役会のメンバーは、理屈の上では、その知名度を生かして会社に信用と人脈とをもたらしてくれます。超一流の政治家、Fortune 500企業のCEO、ウォール街の大立者といった圧倒的な経歴の持ち主であることもしばしばです。

私はそうしたトロフィー的な取締役を好みません。投資先スタートアップ企業にも、避けるように助言しています。しかし助言を受け入れてくれないこともよくあります。

良い例がレンディング・クラブ(Lending Club)です。レンディング・クラブは良い会社で、すぐれた起業家が経営していましたが、私見では、トロフィー取締役会に裏切られてしまいました。

この騒動で最終的にどちらに理があったのか。それについては、この起業家が新たに立ち上げた企業にUSVが投資したという事実が何よりも雄弁に物語っています。

トロフィー取締役はその企業の経営よりも、まず自分の名声が傷つくことを恐れます。危機や困難に直面したときに好ましくない行動に出ることが多いのです。そうしたときにこそ取締役会は会社を助けるべきであるのに。

トロフィー取締役はよく取締役会を欠席しますし、出てきても何の準備もしていないことが多く、たいていの場合、その企業のビジネスについて時間と労力をかけて真に理解する意志もありません。

私は、取締役会のメンバーとして創業者や投資家を補完する役割を果たす、独立系の取締役を大いに買っています。投資家や創業者を上回る数の独立系取締役がメンバーにいるとき、その取締役会は最もレベルが高くなるものです。皆さんの会社でも、その比率をできるだけ早期に正しくすることをお勧めします。

とにかく、取締役会で「名前」を重視するのはやめた方が良いでしょう。それよりも実務を大事にするべきです。できれば、非常に経験豊かな実務家をメンバーに加えましょう。会社が行おうとしている事業でひととおりを経験しており(できれば複数回)、問題が重大化する前に危険を指摘したり、行動を起こすだけの時間的余裕を持ってチャンスの到来を教えたりと、さまざまに助言してくれる人物です。

理想的な取締役会のメンバーは有名人であることは少なく、また通常は過度のエゴを持っていません。冷静で、堅実で、まさに値千金です。性別に関係なく、人種や民族にも関係なく、そうした人物は存在します。確かに、実務に秀でたメンバーからなる多様性に富んだ取締役会を構築するには多少の労力が必要です。しかしそれだけの価値があります。

いずれにしても、トロフィー取締役には手を出さないようにしてください。役に立つことはほとんどなく、害になることの方が多い存在です。

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Editorial Team / 編集部

Coral Capital

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