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高齢化社会を支える世界のスタートアップ (3)高齢者向けFintech編

第1回目の「介護ケアサービス」、第2回目の「見守りソリューション」に引き続き、今回も高齢者の生活支援事業を展開する世界のスタートアップをご紹介します。今回は、米国を中心に高齢者に特化したお金にまつわるFintechサービスをご紹介します。

退職した高齢者の多くは働いていた現役世代と比べ収入は減り、年金を主な収入源としつつ、場合によっては貯蓄を取り崩す生活になり、お金や資産の管理は非常に重要な事項になると考えられます。また、日本同様、米国においても団塊の世代の高齢化により、医療費負担の増加や年金給付額の減少といった問題もあります。加えて、高齢者を対象にした詐欺も存在し、高齢者の資金は脅威にさらされているといっていいでしょう。

米国の団塊の世代が抱える課題

  • 健康保険財源の圧迫による医療費負担の増加
  • 年金給付額の減少
  • 学費ローンの返済
  • 高齢者を狙った詐欺

(参考:https://www.bvp.com/atlas/fintech-for-the-aging/

以下、(1)資産保護・詐欺防止、(2)資産運用、(3)保険、(4)副収入、(5)遺産相続・終活の5つに分類して、スタートアップをご紹介します。

1) 資産保護、詐欺防止

高齢者の資産は、詐欺などの脅威にさらされています。日本においても、高齢者を対象とした振り込め詐欺などが社会的に問題となっています。

2012年創業のEverSafeは、高齢者の銀行口座や投資口座、クレジットカードを監視し、異常な引き出しや預金減少、不規則な投資活動、支出パターンの変化、請求書の支払い遅延を検出しアラートを発します。

退職後障がい者や高齢者向けのプリペイドVisaカードを提供するTrue Link Financialは、認知機能が低下した高齢者がより安全に財産を管理できるのが特徴です。家族や保護者、後見人らが、小切手などのプロセスを必要とせずに顧客のお金を入金管理でき、支払い先や金額などに制限を設定できます。共同創業者でCEO(連続起業家、前職はLendUpでリスクマネジメントのヘッド)の認知症の祖母が、高額なクレジットカード詐欺にあったことがきっかけで創業に至ったとのことです。

2) 資産運用

Kindurは団塊の世代向けに、「ワンストップのオンラインフィナンシャルアドバイザー」として資産運用と定額型年金を提供しています。資産を短期間に使い切ってしまわないよう、月額払いで振り込まれるのが特徴です。創業は2016年ですが、2019年4月からサービス提供を開始し、2019年7月時点で1000人の無料ユーザーが利用しているとのことです。運用資産の0.5%を年次の管理手数料として徴収するモデルです。また、2016年に創業し、2019年6月にCapital Oneに買収されたUnited Incomeも、退職後の所得と資産を管理するプランニングソリューションとアドバイザリーサービスを提供しています。

しかしながら既存のオフラインの資産運用の支援がある中で、中高年層にオンラインだけでアプローチするのは、ユーザー獲得と拡大が難しいと考えられます。ミレニアム向けに支持されるや仮想銀行サービスのChime、ロボアドバイザーのWealthfrontBettermentらと比較すると、高齢者向けソリューションは短期間での急成長が厳しいと考えられます。実際に年齢グループ別のFintech利用率を見ると、25~34歳の48%がもっとも高くなっています(EYによる2017年の調査レポート)。一般的な退職年齢である65歳~74歳は15%、75歳以上は9%となっています。しかしながら同社が2015年に出した、年齢別の利用率とその将来予想を見ると65~74歳の利用率の将来予想9.7%を2017年は上回っています。中高年は既存の金融ソリューションへの信頼を優先したり、Fintechソリューションを活用するリテラシーの獲得に苦労するといった障壁がありますが、緩やかに利用は増えていると言えるでしょう。

3) 保険

米国の高齢者や障がい者向けの公的な健康保険であるメディケアには、カバー範囲が異なる4つの種類があります。そのうちのメディケアアドバンテージは、民間の保険会社が代行して提供するものです。このメディケアアドバンテージをスタートアップ自体が提供するモデルも立ち上がっています。

2013年に立ち上がったClover Healthは、アリゾナ州、ジョージア州、ニュージャージー州などの7つの州で保険を提供しています。データ分析と予防ケアを活用することで、より手ごろな価格で高齢者の健康保険を提供しています。同社は2019年1月に5億ドルを追加で調達し、これまでにGV、Sequoia Capital、Floodgate、Bracket Capital、First Round Capitalらから総額9億2500万ドルを調達しています。2017年のシリーズD調達時のバリュエーションは12億ドルで、直近ラウンドは非公開となっています。同社は保険を提供するだけではなく、高齢者の慢性疾患の治療薬の研究開発にも取り組んでいます。2019年7月には子会社としてClover Therapeutics社を設立し、ロシュ傘下のGenentechと提携およびライセンス契約を締結しました。この子会社において、高齢者の眼疾患に関して研究を進めるとのことです。

Clover Healthの後発として2017年に立ち上がったDevoted Healthも、メディケアアドバンテージをテキサス州とフロリダ州で提供しています。すでに2度の調達で3億6200万ドルをAndreessen Horowitzらから調達しており、2019年10月には、加入者に対し、Apple Watchとそれを活用した健康プログラムを大幅に割引して提供を開始しました

これらの企業以外にも、Bright HealthOscar Healthといったスタートアップもメディケアアドバンテージを提供しています。

4) 副収入

退職後の高齢者が、補助的に収入を得られるためのオンラインプラットフォームを提供するスタートアップもあります。

収入を増やすプラットフォームであるSteadyは、高齢化に特化したものではありませんが、遊休資産や自分の時間をお金に変えられる柔軟な機会を提供しています。通常のパートタイムの求人だけでなく、Uber EatsやPostmateのようなオンデマンド系の副業や、自宅の不動産や自動車の貸し出しといったシェアリングエコノミー系の募集もまとめて掲載されています

また、2015年に創業したSilvernestは、自宅をシェアするルームメイトを探せる高齢者のためのプラットフォームです。また住居を安全に貸し出すための、バックグラウンドチェックサービスやオンライン契約ツール、家賃引き落としソリューションも提供しています。

5) 遺産相続、終活

日本でも「終活」という言葉がメディアで取り上げられていますが、終末期を踏まえたライフプランの設計「エンドオブライフプラン」を支援するスタートアップもアーリーステージ中心で出てきています。

2015年に創業した、Y Combinator出身のスタートアップWillingは、法的効力がある遺言書をオンラインで作成できるサービスです。フォームにそって入力するだけで、医療的な介入に関する希望(リビングウィル)や資産の委任管理や相続管理に関しての計画を立案できるサービスです。Willingは500 StartupsやFounders Fundから総額710万ドルを調達し、2019年11月にメットライフによって買収されました

Willingと同時期に立ち上がった、同様のサービスとしてCakeGraceがあります。Cakeはマサチューセッツ州の病院と提携し、終末期に本人の希望通りのケアを受けれるよう支援しています。Graceも終末期の計画立案を支援するオンラインサービスを提供していましたが、2017年ごろに閉鎖しています

AgetechFintech
吉澤 美弥子

吉澤 美弥子

Senior Associate @ Coral Capital

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