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資金調達の選択肢(5):優先株を活用する

本ブログはニューヨークのベンチャーキャピタルUnion Square Venturesでパートナーを務める、Fred Wilson(フレッド・ウィルソン)氏のブログ「AVC」のFinancing Optionsというシリーズの投稿を翻訳したものです。スタートアップの創業者向けの資金調達の選択肢について、各種の方法を紹介するものです。原文は全11回のシリーズとなっていますが、日米の違いから5本を割愛して、日本の創業者にも参考になりそうなものを6本ピックアップしました。本記事は「Financing Options: Preferred Stock」の翻訳です(注:翻訳を予定していた「コンバーティブル・ノートを使う」は記事が公開された2011年と今とで事情が大きく異ることから翻訳をキャンセルしました)。

これまでの連載と今後の掲載予定の翻訳版シリーズのリストは、以下のとおりです。

第1回 資金調達の選択肢:家族と友人に出資してもらう
第2回 資金調達の選択肢:政府の助成金を活用する
第3回 資金調達の選択肢:顧客から調達する
第4回 資金調達の選択肢:ベンダーから調達する
第5回 資金調達の選択肢:優先株を活用する
第6回 資金調達の選択肢:ブリッジ・ローンを活用する


今日の「資金調達の選択肢」シリーズでは、私が専門とする資金調達の方法である「優先株」について説明します。

ほとんどのベンチャーキャピタルは、出資する会社に優先株の発行を求めるでしょう。スタートアップへの出資の大部分は優先株の形で証券化しています。そのため、あなたが起業家であるなら、優先株が何かを知り、あなたとあなたの会社にとってどのような意味を持つかを理解しておくのが理に適っていると言えます。

優先株は、特定の権利や特典、優遇措置を加えた株式の一種です。優先株は、創業者が通常保有している普通株に比べ、優先的地位にあります。

優先株の名称は、優先株式の大きな特徴である残余財産優先分配権に由来します。残余財産優先分配権は、企業の売却(あるいは清算)の際に、優先株主が出資した金額を取り戻すか、あるいは普通株主となって創業者と利益分配を受けるかを選択できる権利のことです。

これが意味するのは、会社の売却額が優先株を購入したときのバリュエーションを下回った場合、投資家はお金を取り戻すことができるということです。反対に、売却額が優先株を購入したときのバリュエーションを上回る場合は、出資している会社の一部を取得することができます。その理由についてはすでに何回か過去のブログで書いているので割愛します。お伝えしたいのは、私を含め、多くの投資家にとって優先株は非常に重要な証券であるということです。

ただ、優先株の評判を下げている残余財産優先分配権のバリエーションがいくつかあります。投資家が当初の出資額の何倍ものお金を受け取る権利を求めたり、優先分配権に加えて、普通株主と同じ分配を求めたりすることがあります(参加権と呼ばれるものです)。

(編注:上記は米国での話です。米国では優先分配における非参加型の優先株による出資が全体の99%という調査がある一方で、日本では逆に97%を参加型が占めます

当社はこれらの「条件を追加した優先株」に魅力を感じていませんが、手にすることがたまにあります。特に、すでに証券が存在しているシンジケートに参加する場合は、参加権のある優先株で出資することがあります。残余財産優先分配権について起業家が知っておくべきことは、最初に投資家たちと合意した条件の優先株を、将来、調達ラウンドに参加する投資家も求めることになるということです。なぜなら、投資家たちは、参加するキャップ・テーブルにすでに優先分配権を持っている投資家がいるのは困ると思うからです。

投資家が優先株で確保したいと思う重要な権利と特権がいくつかあります。たとえば、取締役選任のための議決権、情報請求権、持分比率を保つために将来の調達ラウンドに参加する権利(プロラタでの優先引受権)、将来株式が売りに出された場合にそれを購入する権利(先買権)、既存株主が株式を売却する際に自らの株式も売却する権利(共同売却請求権)、株価が下がった場合に転換価額を修正する権利(希釈化防止条項)などです。

これらの権利についての説明は割愛したいと思います。ブラッド・フェルドとジェイソン・メンデルソンが優先株の権利について素晴らしいブログシリーズを書いているので、そちらを読むことを強くおすすめします(訳注:ここで推薦されているブログ記事は残念ながら、すでに見つかりません。日本国内の事情については、2018年3月に経済産業省から出された60ページほどの文書、「我が国における健全な ベンチャー投資に係る契約の主たる留意事項」も参考にしてください)。

人生のあらゆることに共通しているように、優先株取引は多種多様で、比較的親切なものから、とんでもない痛みを伴うものまであります。しかし、VCは起業家にとって親切な条件を提案するのが良いというのが私の結論です。なぜなら起業家たちはVCの対応を覚えていて、とんでもない要求をするVCは長期的に見ると有力な企業や良いディールに巡り会う可能性が低くなっていくからです。

「標準的な優先株のディール」がどのようなものであるべきかを規定する試みがいくつか行われています。National Venture Capital Association(NVCA)は標準的な条件をまとめた契約書を用意しています。弁護士事務所Fenwick & WestとGunderson Dettmerにも、それぞれ標準的な条件をまとめた契約書があります。Cooleyにも同様のものがあると思います。Lowensteinが出しているものを見ていたところですが、これも良さそうです。投資家が優先株による出資に際し、これらの「標準的な優先株のディール」に似た条件を提示しているなら、おそらくその投資家は、起業家と合理的で公平に対応する姿勢があると言えるでしょう。

AVCの賢いJLMがよく言っているように「人生において手に入れられるものは、あなたにふさわしいものではなく、あなたが交渉したものです」。投資家に優先株を発行する準備として、まずは重要な取引条件について知り、それがあなたとあなたの会社にどう影響するかを学んで「起業家フレンドリー」なディールがどのようなものであるか把握するようにしましょう。それを学んでから、あなたとあなたの会社のためになる資金調達を行なってください。

レバレッジがあることは重要です。資金調達におけるレバレッジとは、つまり交渉のテーブルに複数の投資家がいることです。投資家と交渉するときは、ほかの選択肢を用意し、重要な事柄についてよく理解した上で悪い条件で取引しないようにすることが大切です。

優先株での資金調達が起業家にとって悪い取引にならなくてもいいはずです。投資家と起業家にとってウィン・ウィンの条件にすることができます。けれど、そのためにはほかの事業の側面と同じように、資金調達に関しても十分手をかける必要があるでしょう。

AVCエクイティファイナンス資金調達の選択肢

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