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事業会社から調達して本当にシナジーが生まれるのか?

先週の記事でも書いたように、私はスタートアップの起業家からよく「〜という事業会社/CVCから資金調達することについてどう思う?」と聞かれます。この質問への答えを出す前に把握しておくべきこととして、先週は3つのタイプの事業会社/CVCについて説明しました。今回の記事では、事業会社/CVCがスタートアップに投資する最も大きな理由の1つである「シナジー」について説明したいと思います。

※本記事は事業会社/CVCから資金調達を検討する際に考慮すべきことをまとめた5本の記事のうちの1本です。他の記事については、以下をご覧ください。

連載目次
第1回:事業会社から調達する前に知るべき3つの投資体制の違い
第2回:事業会社から調達して本当にシナジーが生まれるのか?
第3回:「信用力」のために、スタートアップは事業会社から資金調達すべきか?
第4回:事業会社からの資金調達が競争環境に与える影響
第5回:どのタイミングで事業会社から資金調達するべきか?

シナジーは、起業家だけではなく、事業会社/CVCからも投資のメリットとしてあげられる理由として、おそらく最もよくあるものです。新しいプロダクトやテクノロジーの共同開発、互いのプロダクトやサービスを組み合わせた新規事業など、シナジー効果を生み出すあらゆる活動を指しています。シナジーへの期待が、事業会社からスタートアップ市場への近年の資金の流れを牽引している最大の要素であると言ってもいいかもしれません。

スタートアップにとって、候補の中から最終的に組むべき事業会社を決めるのは簡単ではありません。ディスカッションが探り合いの段階で長引いてしまったり、シナジー効果を期待したはずが、実質的に何も実現しない、もしくは計画に遠く及ばない効果しか得られないような投資を決行してしまったりすれば、お互いに多くの時間を無駄にしてしまいます。これらの失敗の主な要因となるのは、投資担当チームと、実際にシナジーを生み出す現場の人たちとの間にある根本的なインセンティブや事情の違いです。

投資担当チームは、多くの場合、投資を実行しなければならないというプレッシャーを受けています。あらかじめ予算を設定されていることが多く、与えられた資金を一定期間内に使い切るという目標が前提としてあります。バランスシート型の投資家(先週の記事を参照)の場合、次の人事異動までがタイムリミットかもしれません。シナジーを狙って投資を実行したとしても、通常はその成果を生むまでに時間がかかるため、投資の実行自体が成果の指標になってしまい、結果的に投資担当チームもそれをベースに社内で評価されがちです。

一方で、現場の人たちは狙っているシナジー効果を実際に実現しなければなりません。評価に関しても、投資そのものではなく、シナジー効果による該当部署への貢献が重視されます。例えば、売上への実質的な貢献やネット・プロモーター・スコアの改善、重要な新プロダクトの開発につながったかどうかなどが評価の対象になり、それらの期待に応えるべく行動することになります。逆に、投資担当チームがどんなに素晴らしいシナジー効果があると約束していたとしても、現場の人たちの評価に直接影響しない場合、それを実現しようというモチベーションも著しく低下してしまいます。このようなギャップが、事業会社との提携における失敗の大きな要因の1つとなるのです。

つまり、起業家にとって肝心なのは、どの事業会社/CVCとパートナーシップを組めば、成功する可能性が最も高いのかを見極めることです。これにはいくつかの方法があります。

1つは、経営幹部がどれくらいディスカッションに関与しているかを見る方法です。スタートアップへの投資に対してトップダウンの強いサポートがあれば、多くの場合、他の部署へもそのサポートが波及します。ただの投資担当チームによる投資ではなく、経営幹部によって決められた会社全体の方針になるからです。関与している幹部がその事業会社の創業メンバーであれば、なおさら良いです。

かといって、経営幹部が関与しなければシナジー戦略が必ずしも失敗に終わるというわけではありません。経営企画部や、オープンイノベーション部署などの優れたメンバーの活躍よって、スタートアップ提携が成功する例もあります。問題は、そのような相手をどうやって見極めるかですが、これには1つ簡単な方法があります。候補となる部署が過去に投資したスタートアップについて調査することです。それらのスタートアップの起業家たちから直接話を聞いたり、他の投資家から事例などの情報を集めたりしてみましょう。情報を集めることで、期待している結果が得られるかどうか、より確信を持って判断できるはずです。

また、投資をパートナーシップから切り離して考える方法もあります。事業会社/CVCとのパートナーシップを投資と関連づけて考えがちですが、実際は資本提携がなくても成功しているパートナーシップはたくさん存在します。それらのパートナーシップが実現できているのは、双方の目標実現に向けて本質的かつ明確なメリットがあるからです。現場のチームを含め、関係している人たち全員にメリットがあるのです。つまり、スタートアップ側の目標が相手の会社との協力によるシナジー効果である場合、投資抜きのパートナーシップを提案してみることで、相手もシナジーに対して同様の姿勢であるかどうかを確認できます。明確なメリットが存在し、シナジーへ向けた体制が整っているなら、投資自体はもはや判断の要素として重要ではありません。最初はパートナーシップだけを結び、順調であれば次のラウンドで出資を受け入れるという提案も良いでしょう。しかし、投資が必須条件だと相手側の担当者が返答した場合、パートナーシップも成功しなかった可能性が高いと考えた方がいいかもしれません。

シナジーは、スタートアップが事業会社から出資を受け入れる数多くの理由の中の1つに過ぎませんが、おそらく最も注目されることが多い要素です。次回以降の記事では、信頼性やネットワーク、アドバイスなどの、他の戦略的に重要な要素についても説明していきます。

CVCエクイティファイナンス事業会社からの資金調達
James Riney

James Riney

Founding Partner & CEO @ Coral Capital

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