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連戦連勝、カケハシ創業者中尾氏が語ったピッチ大会で勝つための3ステップ

シード期前後のスタートアップ企業にとってピッチ大会に出て優勝する、というのは認知を得るための投資対効果の高い選択肢となり得ます。では、良いピッチのポイントとは何でしょうか? そう考えるのが一般的かもしれません。しかし数々のピッチコンテストで優勝を勝ち取ってきたカケハシ創業者の中尾豊さんは言うことが違いました。

絶対に優勝することが大事――。

中尾さんは「良いピッチ」をボトムアップで定義したりしません。優勝した自分の姿、そしてその後に自分たちが得られる恩恵をリアルに想像して、そこからの逆算思考で組み立てていくべきだといいます。

ピッチで恩恵を得られるのは優勝者

薬局業界のDXを支援するカケハシ創業者の中尾豊さんが、一歩先ゆくスタートアップの先輩として、Coral Capital出資先向け勉強会で圧倒的なプレゼンノウハウを伝授してくれました。参加した1社1社に対して目の覚めるようなアドバイスをすると同時に、「ピッチの勝ち方」と題してセッションを行いました。

プレゼンのノウハウを伝えるカケハシ創業者の中尾豊さん

中尾さんの最大のメッセージは「勝て」というものでした。

当たり前に思うでしょうか? そんなことはありません。中尾さんいわく、多くのスタートアップは「失敗しないようにピッチを練習しよう」という程度。勝てればいいなというところが多いそう。そうではなく、優勝以外に目指さない覚悟を決めることが第1ステップだといいます。

なぜなら、ピッチ大会に出るのは時間でもマインドシェアでも一種の投資ですが、そのROIは圧倒的に優勝した場合の方が高いからです。実際、たとえ準優勝であっても、その後の認知度や問い合わせ件数は両者で全く異なってくるものです。それが良いかどうかは別として、起業家の登竜門となっている有名イベントで優勝するとバリュエーションが上がるということも現実にあります。もちろん採用にもプラスです。

中尾さんはピッチで勝つ方法を、以下の3つのプロセスで説明します。

以下では方法論について述べていますが、もちろん「事業がイケてることは大前提」(中尾さん)です。

圧倒的に想像せよ

まず、最初のステップは「圧倒的に想像する」こと。勉強会に参加していたスタートアップ創業者たちに向かって中尾さんはスライドを見せつつ、「何を想像するんだと思いますか?」と尋ねました。

「ステージでピッチしている自分の姿?」「会場に来る人たち?」などの答えが出てきます。しかし、中尾さんの答えは違いました。

「勝った後の自分の姿を想像してください。私は実際に、この写真、あるいはこの写真にあるように受賞シーンをリアルに想像していました。さらに、勝った後に問い合わせが増える、認知度があがって営業がうまく行くようになるなど、できるだけリアルに想像するんです。そして勝ちたいという強い欲求を持つこと。そのことで実現条件が見えてくるんです」

優勝の実現条件は何か、ということを考えるようになると、プレゼンの内容も自ずと変わってくるといいます。

圧倒的に寄せていく

優勝への強い欲求があると、話し方も変わり、勝つための条件が見えてくると中尾さんは言います。

「普通の人は勝ちたいから、うまく話そう、失敗しないように練習しようというレベルです。これだと場慣れしていないから緊張して早口になったり、単に伝えるレベルになってしまいがちです」

「一方、強い欲求があると練習のレベル感と精度が変わります。例えば、イベントで会場入りして挨拶回りをする人もいますが、絶対に優勝するんだと考えていたら、直前までプレゼンのイメージづくりを鏡の前でやるべきなんです。私は秒単位で声のトーンや仕草まで考えて練習していました」

寄せにいくもう一つの意味としては優勝するときの条件、つまりそのイベントの主催者の意図や審査員が評価するポイントをしっかり把握し、寄せにいくことが重要であることです。

「普通のスタートアップピッチの構成だと市場規模、CVR、競合優位性、トラフィックなどを話すと思います。しかし、省庁主催のピッチコンテストで勝つにはそれではダメ。聴衆が共感する社会課題から入るストーリーとして、超高齢社会、医療リソース問題、生活習慣病の予防改善ソリューションの新規性など、そうした話になるはずです」

「みんな、つい自分たちのイケてるところを話そうとしてしまいます。そうではなく、聞き手が聞きたい言葉から入って行く。これは課題だな、問題だなという共感を得るところから入らなければ聞いてもらえません。共感がないところでソリューションを提案するのはナンセンスです。提案ファーストは刺さりません、受け手の共感を得てから提案する。この順番を忘れてはいけません」

まず、相手の潜在意識にある課題を言語化する。そのことで初めて聴衆は引き込まれるのだと言います。

圧倒的に魅せに行く

「ピッチの成否は本番までで9割決まっている」というのが中尾さんの持論だそうですが、では、本番は秒単位で準備した通りに話したり、身振りをしたりするのかと言うと、そうではないそうです。本番中その場で工夫する心構えや対応によって結果も変わるとのこと。その最後の1割がこの魅せに行く、つまり「惹きつける」ということです。

「まず会場の様子をみてイメージしていた圧倒的勝利の様子を再度想像します。本番中に最も重要なのは余裕を持つこと。ちゃんと自分自身が聴衆にどう見えているかを考える。会場に対して『Z』の形で目線を配る。すると、上の空でピッチを聞いていない人が見つかるかもしれません。そうしたら今度は秒単位で準備していたものを壊すときです」

「例えば間を空けたり、大きく身体を動かして興味を惹く。バッと声のトーンをあげてステージを踏み鳴らして振り返ったりする。そうやって、聞かせるぞというくらいに表現を工夫するんです」

そんな中尾さんは最初どうだったのか……

実は中尾さんはカケハシ創業者でありながら、ダントツの営業成績を記録する天性のトップセールスパーソンでもあります。スタートアップのピッチ大会も、B Dash Campで初の審査員全員が満点を付ける優勝、M&Aセンターピッチイベント優勝、ジャパン・ヘルスケアビジネスコンテスト(経産省主催)優勝と連戦戦勝。

ところが意外なことに、初めてピッチ大会に向けて練習していたときには「圧倒的」などではなかったそうです。

初めてのピッチ大会の3日前、当時カケハシに入社したばかりの社員にピッチを見せたところ、散々な評価だったとか。

これは逆に言えば、勝ちたいという強い思いを持つことの重要性を物語っているのかもしれません。

投資家向け資料で見直すべき5つのポイント

中尾さんのセッションは、それ自体が熱量があり説得力を感じさせるものでしたが、もう少し具体的なレベルでのポイントについても、簡単に付け足しておきたいと思います。今回の勉強会で起業家の皆さんに対して出てきたフィードバックとしては、

  1. ストーリーを箇条書きで整理してからスライドを作ると良い
  2. 絵や写真を使った印象に残る課題のスライドから入る
  3. エモーションが必要。元気に話そう
  4. 相手の潜在意識にあるニーズを言語化する
  5. スライドから文字や要素を減らす

というものがありました。シード期の創業者は投資家向けピッチ資料を作り込むことが多いかと思います。資金調達においては資料だけ先に渡すこともあるでしょうから、投資家が知りたい順にコンパクトかつ詳細にまとまっているのは良いのですが、より幅広い層に向けて短時間でアピールするイベント向けのスライドは、全く別物だと考えたほうが良いかもしれません。

スタートアップの成功は事業や組織づくりであってピッチ大会で勝つことは目的ではありません。しかし、どうせ出るなら必ず優勝するという意気込みで臨むのが投資対効果という点でも、勝ち癖を付けるという意味でも大切なのではないでしょうか。

なお、ピッチをテーマにした記事として以下も参考にしてみてください。

 

ピッチベンチャーエコシステム
西村 賢

西村 賢

Partner, Chief Editor @ Coral Capital

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