「スマホ+マイナンバーカード」で自宅から住民票を取り寄せてみた

住民票といえば、かつては役所やその支所に出向いて取得するものでした。2010年から徐々にコンビニのマルチコピー機にマイナンバーカードをかざすことで住民票の写しだけでなく、印鑑証明や課税証明書なども取得できるようになりました。これはこれで便利で身近な行政サービスですが、2021年3月から、マイナンバーカードと、それを読み取り可能なNFC対応スマホを使って自宅から住民票の請求ができるサービスが一部で始まったのをご存じでしょうか。

Coral Capitalの投資先で、行政のデジタル化を推進するグラファーが、東京・港区で3月1日から開始したのは、住民票の写し、印鑑証明書、戸籍事項証明書、戸籍の附票の写し、課税(非課税)証明書、納税証明書という6種の証明書の請求が、NFC対応スマホとマイナンバーカードだけで完結するというサービスです。

スマホ画面に表示されるフォームに必要事項を入力し、マイナンバーカードをスマホ背面にかざせば本人確認も終了。請求すると、数日後に証明書が封書で郵送されてくる、という流れです。コンビニどころか家を出る必要もありません。

確定申告も住民票取得も自宅でスマホのみで完結

ちょうど運転免許証の更新に住民票が必要なタイミングだったので、実際にスマホを使って自宅から住民票を取り寄せてみました。それで感じたのは、やはりわざわざ役所やコンビニに出向かなくて良い便利さです。コロナで毎日通勤しているわけでもないので、なおさらそう感じました。

ちょうど確定申告の時期だったことから、ほぼ同時にスマホとマイナンバーカードだけ(PCもタブレットもなし)で申告をしたのですが、こちらもやはり税務署への持ち込みなど不要で、非常に便利でした。私はPCを使った確定申告の経験がないのですが、それはUSB接続の外部NFCリーダーが必要だったり、対応ブラウザが限定されているなど、苦労が多いと聞いていたことから、「紙でやったほうが速い」と思ってきたからでした。でも、スマホ単体で完結するとなれば話は別。途中ソファーに移動してコーヒーを飲みながら作業できるのも気分的にラクでした。

一方で、こうした行政のDXは、まだ黎明期だなと感じることもありました。

まずNFCリーダーの反応が悪いのが意外でした。スマホによってNFCリーダーの内蔵位置や読み取り精度が違うそうで、SuicaなどFeliCaによる反応速度の速い「ピッ」という決済に慣れた身からすると、最初は「あれ、反応しないな?」と焦る人が多いのではないかと思います。私が使っているのはiPhone 12 Pro Maxというメジャーな端末だったので、絶対にサポート対象だという確信がありました。それでも初めて使ったときには何度かマイナンバーカードの位置をもぞもぞと動かして、「ここ」という場所とアングルを知る必要がありました。

スマホによる確定申告のほうでは、支払い元の法人住所や法人名を入力するために、スマホで全角の「ー」(ハイフン)を数字と混ぜて入力するのが苦行でした。社名にアルファベットがある場合、もはや忍耐力検定5段のような感じです。「Coral Capital」をすべて全角で、大文字・小文字を使い分けてフリックで1文字1文字入れるのは本当に苦行でした(英字キーボードでは全角入力ができません)。これはもちろん使っている日本語入力システム次第の話ですし、もしかしたらもっとラクな方法があるかもしれません。法人であればクラウド会計と連携させる方法もあるかと思います。ただ、PCと違って制約が多いスマホであるからこそ、文字種の違いくらいシステム側で吸収してほしいと感じる場面でした。ほかにも、スマホのブラウザ(Mobile Safari)から拡張子が「.data」の申告データファイルをダウンロードして、それをDropboxに保存する方法が、なかなか分かりませんでした。PCでは良くやる作業ですが、スマホではあまりない操作だからです。このデータファイルがあれば来年は同じデータの入力の手間が省けます。例えば住宅ローン減税の申告で自宅の総床面積や土地面積などを入れるのですが、これらは向こう10年ずっと変わらない数字です。なぜこうした10年先も不変の申告データを国税庁や税務署はクラウドで保管してくれないのでしょうか?

スマホによる確定申告全体を通して思ったのは、操作の難易度が高く、途中で諦める人が結構いるのではないかということです。実際、Twitterを検索してみると「便利」という声と、できなかったという声の両方があります。

それでも垣間見えた、便利で効率的な未来

まだまだシステムは発展途上ですが、今回、「オンライン化された行政サービスをスマホだけで利用する」ということを2つ続けてやったことで、より便利で効率的な社会が、はっきりと体感できた気がします。利用者側だけの話ではなく、住民・国民から請求や申告を受け取って、それを手作業で打ち込む行政コストにダイレクトに響くと思えば、なおさらです。マイナンバーカードも、近年ようやく普及速度があがり、昨年は交付枚数が約1558万と最多を記録。2021年3月時点での累計4500万枚、交付率は28.2%となっています。ふるさと納税など一部の証明書は、確定申告でのオンライン連携が可能になり始めています。

さらに、本人確認が手元だけで完結できるようになって思ったのは、免許更新などで「住民票を媒介しなければならないのはおかしい」という点です。そもそも運転免許証の更新に必要なのは本籍地を含む本人確認です。身分証がDXしてオンライン化した未来には、免許センターから役所へと、当人の了解(マイナンバーカード)を得て勝手に裏側で照会してくれれば良い話で、住民票という紙の仲介物は不要なはずです。これはネットの世界ではOAuthなど認可プロトコルですでに実現している世界観です。もし紙の書類とハンコが旧態依然としているというのであれば、全く同じ理由で「紙の住民票」など前時代の遺物です。私たちはメールアドレスの所有を証明するために、メールを紙に印字したりしていません。

さらに先の話をすれば、試験場以外の免許センター全体をオンライン化することも可能でしょう。窓口業務はスマホに置き換えられるはずで、免許センターに行って「何番窓口へ行ってください」と流れ作業で行列する必要などなくなります。視力検査の結果に検査者の電子署名を施すことも技術的に可能ですから、最寄りの眼鏡屋で受けた証明付きの視力検査の結果を添えて、自宅からスマホだけで免許の更新を申請するという未来も来るでしょう。現在、菅政権は2024年までにマイナンバーカードと運転免許の統合を行うとしていますから、全て手元のスマホとマイナンバーカードだけで運転免許更新が完結する世界が実現するでしょう。

行政のDXは始まったばかりです。スマホ申請は第一歩で、5年、10年という単位で見れば、現在とは全く違うレベルでの効率化が可能ではないかと思います。

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Partner, Chief Editor @ Coral Capital

Ken Nishimura

Partner, Chief Editor @ Coral Capital

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