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コロナ禍で顕在化した領域や新発想のIoTチップなど―、Sequoiaの7月投資先

米国のトップティアVCの新規投資先をまとめて手短にご紹介する連載。今回はSequoiaの2021年7月の投資先から6社のスタートアップを紹介します。

Blues Wireless(10年間の回線契約、通信費込みのIoT)

Blues WirelessはIoTデバイス向けの組み込み小型ボードを提供。モバイル通信ネットワークでIoTデバイスとクラウドを繋ぐ「全部入り」のデバイスです。IoTで良く使われる通信機器系ATコマンドではなく、JSONによるシンプルなAPIで開発者フレンドリーということと、通信料金がハードウェア購入代金(49ドル)に含まれているのが特徴です。通信会社と契約したり、通信量に応じて課金されることなく、10年間ずっとネットワークが使えます。ネット系の開発者であれば、通信方式や通信機器固有のコマンド体系などに気を取られず、クラウドへの直結感がある興味深い試み。ハードウェアスタートアップではありますが、ビジネスモデルの変革と言えそうです。ちなみにBlues Wirelessは、往年の企業向けコラボソフトウェア「Lotus Notes」の父と呼ばれ、かつてマイクロソフトのCTOを務めたレイ・オジー氏が創業したスタートアップです。2018年のBlues Wireless創業時、オジー氏は60歳を超えていたはずですから、米国のテック系起業家の層の厚さをうかがわせる話です。

Pomelo(ベテラン起業家・経営者創業の南米のFintech-as-a-Service)

Pomeloは南米向けFintech-as-a-Serviceプラットフォームです。Fintech企業や非金融系の企業が、プリペイドカードやクレジットカード発行できる機能を提供しています。近年FintechやInsurTechスタートアップは、直接エンドユーザーにサービスを提供するだけでなく、他社に対してAPIによる埋め込み型サービスとして金融や保険機能を提供する流れが大きくなってきています。Pomeloは2021年創業のスタートアップで、今回のSequoiaによる$1M(約1億円)のシード投資も控えめなもの(累計調達額は$10M)。会社のランディングページには「サイトを作る時間がない」と書いているような状態ですが、Sequoiaのほか、欧州名門VCのIndex Venturesもラウンドに参加するなど注目です。特に南米のスタートアップシーンはタイムマシン経営のように、北米やアジアでユニコーンが生まれた領域に対して数年遅れて、最も有望なチームに投資するという流れがあるようにも見えます。TechCrunchの記事によれば創業メンバーとして南米Googleの初期社員でTripAdvisorへのエグジットを含む2度のバイアウト経験がある連続起業家、ネオバンクスタートアップの元CEO、Mastercardの元エグゼクティブも参画するなどゴールデンチーム感があります。

Acelerate(Uber、Lyft、Yelp、OpenTableなどに対応するレストラン向けSaaS)

Acelerateはレストラン向け管理SaaSで、7月にシリーズAとして$14.44M(約15.8億円)をSequoia 1社から調達しています。バリュエーションはポストマネーで$100M(109億円)を超えており、創業2年、社員10人のスタートアップとしては急成長です。Acelerateを創業したのはフードデリバリーのDoordashの元社員で、レストラン経営者から見ると使いこなすべきサービスが多数で複雑になっているところに目をつけた形です。Uber EatsやDoordash、Grubhubといったフードデリバリーサービスだけでなく、レビューサイトのYelp、予約サービスのOpenTableなどを使いこなす必要があります。Acelerateはオンライン注文の受付や、メニュー構成の管理、売上やマーケ管理も支援するといいます。レストラン向けフードテックではレジ決済から売上や顧客管理を提供する領域がすでに日米とも立ち上がっていますが、コロナ禍でOMOが加速する中で、新サービス群に対応するニーズが高まっています。

Otter(他の家庭の子どもを預かる子守りマッチング)

Otterは家事専業の子育て中の親が、他の家庭の子どもを有償で預かるマッチングを行う保育系マーケットプレイスです。ぱっと見ると、今までにもたくさんあったもののように思えますが、コロナ禍で変わるリモートワーク環境から出てきたニーズをすくい取ったサービスです。Otter創業者のヘレン・マイヤーさんは、自ら職探しをしたものの子ども預けることができずに仕事することを断念した幼い双子の母親。自分自身が痛感したペインや、子育てコミュニティーでのアンケートから、リモートスクールで自宅にいる子どもを他の家庭に預けるというニーズが強いことを確信。利用実績が急成長したことからSequoiaも投資した、という形です。創業1年でバリュエーションは$98M(約107億円)、累計調達額は$23M(約25億円)となっています。

Entos(AIで低分子化合物の薬品開発を1,000倍効率化)

Entosは治療薬として使われる低分子量の化合物の開発を機械学習で効率化する量子化学のシミュレーションエンジン、Entos OrbNetを開発しています。Pythonライブラリを使ったAPIによってプラットフォームを利用することで、従来の計算方法に比べて1,000倍に高速化するといいます。7月のシリーズAでは$133M(約145億円)のバリュエーションで$53M(約58億円)を調達しています。

Remote(外国籍社員の管理SaaSがユニコーンに)

Remoteは外国籍の社員を雇うときに発生する各国の法令に従った給与計算や支払い、従業員管理を行うSaaSです。既存の社内システム、例えば採用候補管理のATSやオンボーディング、バックグラウンドチェックのサービスなどをAPIで連携して使えるのも特徴です。コロナ禍でリモートワークが加速する中で、海外のタレントを海外在住のまま採用する流れが加速。Remoteはこの波に乗って7月のシリーズBラウンドとして$150M(約164億円)を$1B(約1,090億円)のバリュエーションで調達。ユニコーン企業の仲間入りをしました。

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Editorial Team / 編集部

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