フルリモートで見えないストレス蓄積。シード期のスタートアップが「メンタルヘルスケア休暇」を導入した理由

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Written by 増田 覚
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「ここ数か月で仕事上の疲れ・ストレスなどから、しんどさを覚え始めている人、不調を自覚し始めている人がじわじわ増えてきているように感じています」

そう語るのは、ダイナミックプライシングを支援するSaaS「MagicPrice」を手がけるハルモニアCEOの松村大貴さん。同社は9月16日から、全社員を対象に1週間の「メンタルヘルスケア休暇」を付与しています。

最近では、Nikeが米オレゴン本社で働く全社員を対象に1週間のメンタルヘルスケア休暇を与えたことがニュースになりましたが、シード期の日本のスタートアップとしては珍しい取り組みと言えます。

(情報開示:Coral Capitalはハルモニアに出資しています)

全社員にセルフケアのための1週間休暇

ハルモニアのメンタルヘルスケア休暇は、すべての社員に最大5日間の特別休暇を付与し、1週間を通して休めるようにするものです。休暇のタイミングはチーム内で調整し、10月末までに各社員がローテーションで1週間の休暇を取得します。

メンタルヘルスケア休暇を導入した背景について、ハルモニアの松村さんは「自粛生活や緊張感のある日々が長引いたことで、多くのメンバーに見えないストレスが蓄積していました」と説明します。

「ハルモニアでは個人の裁量と自由な働き方を重視し、休むことも働くことも自分の意思で柔軟に選択できるようにしてきました。一方で、真面目で責任感の強い人が集まっており、ついつい頑張りすぎてしまう環境と言えるかもしれません」

ケロッとしている人ほど大丈夫じゃないことも。会社がリフレッシュの機会を作るべき

ハルモニアは2度目の緊急事態宣言が発令された2021年1月以降、原則出社をしないフルリモートワークを導入しています。その結果、チーム内での雑談の機会が激減し、社内のメンバーが「もやもやを抱え込みがちになっている」と感じていたそうです。

「大丈夫と思ってケロッとしてる人ほど大丈夫じゃないことがある」と、自身の経験も含めて語る松村さん。だからこそ「不調を自覚していないタイミングでも、会社側がリフレッシュする機会を作るべき」と考え、全社的に特別休暇を設けることにしました。

リモートワーク環境では休日も仕事を続け、オンとオフを切り替えられなくなりがちです。こうした状況に陥らないためにも、社員には「メールやSlackの通知を切って、セルフケアや自分の気持ちと向き合う時間を大切にしてほしい」と呼びかけています。希望する社員には、カウンセリングの受診費用を最大1万円補助する制度も用意しました。

ハルモニアは8月24日に「株式会社 空」から社名変更したばかり。写真右上が松村さん

シード期のスタートアップではよくあることですが、ハルモニアも少人数で多くの業務を回しています。休暇の時期はずらすものの、立て続けに社員が1週間の休暇を取ることで、業務に支障が出る懸念はなかったのでしょうか?

「業界やクライアント企業の長期の変化をもたらすような仕事をしているので、1週間程度のお休みであまり大きなロスはないと考えています。取引先には不便のないよう、メールやチャットは他のメンバーから返せるように工夫しています」

今すぐ自分を守る選択をしてほしい

今回の取り組みはスタートアップならではのスピード感で、松村さんが9月14日にアイデアを考えてから、わずか3日後に制度が固まりました。「根本的なメンタルヘルスケアを考えると、日常のリズムや過ごし方を改善するのが望ましい」としつつも、“非日常”が続いていることから、今後も同様の取り組みを検討していくそうです。

「コロナ禍で高ストレスな状態が長く続いていますが、今すぐ自分を守る選択をしてほしいです。不調や疲れを感じたら、まずは家族や親しい同僚に伝えてみる。予定をブロックして、数日間のまとまったオフを取る。ハルモニアと同じように全社休暇の取り組みを検討するなど、個人や企業でできることを考えて、行動に移してほしいと思います」

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