本ブログはニューヨークのベンチャーキャピタルUnion Square Venturesでパートナーを務める、Fred Wilson(フレッド・ウィルソン)氏のブログ「AVC」の投稿、「Splitting The Deal」を翻訳したものです。
ベンチャーキャピタル業界では、アーリーステージの会社にシンジケートを組んで投資する方法が昔から使われています。1980年代初頭、私がVCを始めた頃はとても一般的な方法でした。
個人ではなくベンチャーキャピタルのような組織的なベンチャー投資が始まった頃にシンジケート投資がよく行われていたのは、ファンドの規模がまだ小さく、投資リスクも高かったため、リスクを分散するのに何社かで共同投資した方が良かったからでしょう。
しかし、それからファンドの規模は大きくなり、1つのファンドでも投資先を分散することでアーリーステージの投資リスクを調整できるようになったり、大規模なベンチャーキャピタルがシンジケート投資することは少なくなりました。
エンジェル投資(と少ないながら一部のシード投資)でのシンジケート投資は健在ですし、今でも広く行われています。
ですが、ベンチャーキャピタルによる投資の場合、シリーズAで1社が資金調達ラウンドのリード投資家を務めて全額出資する、シリーズBではまた別の会社がリード投資家を務めてプロラタ分を除く全額を出資するというようなことがよく行われています。シリーズC、Dでも同じです。シンジケートは組まれていますが、個別のラウンドではなく、複数のラウンドを重ねる形で行われていると言えます。
これについて考えていたところ、私が過去10年間に行ったベンチャー投資で最もうまくいった3件は(私のキャリア史上、最高の3件でもあります)、投資先が初めてVCから資金調達したシリーズAラウンドにシンジケート投資した案件であるということに気づきました。
いずれの案件も4、5万ドル規模のラウンドで20%から25%分の株式を買い取り、その内の33%から50%を別の投資会社に分ける交渉をしました。
どの案件でも、やろうと思えばUSVだけで資金調達分の全額を出資することはできました。それだけの資金はあったのです。けれど、私はどの案件のときも他の投資会社にも参加してほしいと思っていました。正直に言えば、いくらか負うリスクを減らしたいという気持ちもありました。
いずれの投資も他社に分けた1.5万から2万ドル分の株式は、1億ドル以上の価値になりました。ですが、少しも後悔はしていません。
シンジケートに参加した投資家たちはどこも、投資先が大変なときに駆けつけ、私ができない形で手を貸してくれました。彼らはしっかりリターン分の働きをしています。
なので、ファイナンスの視点(オーナーシップとも言えます)からみて他社が入り込む余地のない案件であっても共同投資するのがいいと私は信じています。
これまでの経験から共同投資はうまくいくと私は考えています。高いリスクを調整できるし、会社の価値を高められる人たちに早くから関わってもらうことができるなど多くのメリットがあるからです。
ベンチャーファンドの規模はますます大きくなっていますが、昔ながらのアーリーステージ投資の特徴である「小規模ファンド」(※)「少額ラウンド」「シンジケート投資」が今でもベストプラクティスであると私は考えていますし、USVではこれを続けています。
※編注:USVの運用資産総額は4,000億円以上もありますが、大規模化する他の米国の老舗ファンドに比べて相対的に小さく保っています。
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Editorial Team / 編集部