この度、Coral Capitalの長年のチームメンバーであるMiyako(吉澤美弥子)がシニアアソシエイトから客員起業家(EIR:Entrepreneur in Residence)に役職変更となることをお知らせいたします。これから彼女は、スタートアップ界で社員として働く人たちの健康増進を目的としたプロジェクトの立ち上げを進めていきます。詳しいことはまだ公表できませんが、何年も前からCoral内で綿密に練られてきたアイディアであり、今後のスタートアップ・エコシステムを大きく変えるポテンシャルがあると私たちも考えています(あの新型コロナワクチンプロジェクトも超えるかもしれません)。ようやくその実現に向けてMiyakoが本格的に取り組める段階まで来れたことを、非常に喜ばしく思います。今後数カ月の間により詳しい内容が発表されていく予定ですので、ぜひこの機会にMiyakoのTwitterをフォローし、最新情報をチェックしてみてください。
ちなみに、スタートアップを作る側へ転籍していったCoralのメンバーはこれで3人目になります。以前にも、井口彰太がインターン卒業後に「レターファン」を起業しています(Coralから出資もしました)。世古圭も、Coralのシニア・アソシエイトから投資先企業の1つである京都フュージョニアリングへ転籍し、執行役員に就任しています。
Coralで成長したチームメンバーが起業家として羽ばたいていくのは、私たちとしても非常に誇らしいことです。ですので、Coralのアナリストプログラムにもそれを踏まえて新たな選択肢を加えることにしました。アナリストプログラムではベンチャーキャピタルに関わるあらゆるノウハウを2年間で学び、プログラム修了後には実績に応じて昇進も検討されます(また、VCが自分に合っているか見極める期間でもあります)。アナリストは幅広い業界について研究する機会が得られ、有能な起業家たちとの関わりの中で様々な学びを得ると同時に、強力な人脈を作ることができます。このようにVCで働くことには多くの利点があるため、プログラムの当初の目的である「優秀なCoralメンバー候補の育成」以外にも、「起業前に必要な経験を積む機会」としても最適であることがわかってきました。そのため、これからは「起業を目指す」というキャリアパスも、プログラム修了後の選択肢として推奨することにしました。
もしこれを読んで当アナリストプログラムに興味を持たれましたら、ぜひこちらからご応募ください。
多くの優秀で熱意のある人材を常に確保することは、投資家としてもファームの創業者としても非常に重要な仕事です。しかし、ファーム全体としての能力密度(極めて優秀な人材の割合)は必ずしも単純に測れるものではありません。代わりにいくつかの評価方法がありますが、個人的に参考にしているポイントの1つが「元メンバーのその後の活躍」です。
例えば、スタートアップ界では「ペイパル・マフィア」と呼ばれる集団が有名です。PayPalの元創業者や元社員が起業家などに転身し、TeslaやLinkedIn、Palantir、SpaceX、Affirm、Slide、YouTube、Yelp、Yammerなど数多くの有名企業を生み出している精鋭揃いであることから、そう呼ばれているのです。同様に、投資家の世界にも「Tiger Cubs」と呼ばれるTiger Management出身の集団があります。そのメンバーは独立後、Tiger GlobalやD1 Capital Partners、Coatue、Arena Holdingsをはじめとした多くの新たなヘッジファンドを設立して成功していることで知られています。
VC界にも様々な例がありますが、個人的に好きなのが「元VCがスタートアップを立ち上げ、成功する」というパターンです。David Vélez氏の成功談など、特に面白いと思います。彼はまずSequoiaに入社し、南米地域への投資の立ち上げを担当しました。しかし多少の成果を出した後、ファームを辞めて今度はその南米でNubankを立ち上げるのです。そして世界最大のチャレンジャーバンクへと育て上げ、2021年に上場した際には時価総額が520億ドル(約6.7兆円)にまで到達しています。また、あまり知られていないかもしれませんが、DoorDashの創業者であるTony Xuも実はVC出身です。DoorDashはIPOで時価総額が720億ドル(約9.2兆円)にまで伸びていますが、その起業の前にはMatrix Partnersでアソシエイトを務めていたのです。
VCファーム内でスタートアップを立ち上げた成功談もあります。Kleiner Perkinsの現役社員が立ち上げたGenentechやTandem Computersは、いずれも70年代を代表するスタートアップとして成功を収めています。Founders Fund内で立ち上げられたPalantirやAndurilも、今では時価総額が数十億ドルにまで達しています。
これらの例にはまだ遠く及ばないですが、Coralもいつかそのようなファームになることを目指しています。起業を通して世界を変えたいという熱意にあふれる優秀なメンバーが揃い、「Coralマフィア」と呼ばれるくらいの起業家集団を輩出するファームを目標に今後も取り組んで参ります。Miyakoの新たなベンチャーもこの未来像に近づく一歩であり、その立ち上げにこれからも身近に協力できることを非常に楽しみにしています。今後の続報にぜひご期待ください!
Founding Partner & CEO @ Coral Capital