本ブログはニューヨークのベンチャーキャピタルUnion Square Venturesでパートナーを務める、Fred Wilson(フレッド・ウィルソン)氏のブログ「AVC」より、「バーンレートに関する考察」についてご紹介します。
過去にご紹介した、バーンレートに関する記事
スタートアップやベンチャーキャピタルのビジネスは、価値創造を高め、拡大し、加速するために、ビジネスに多額の投資をすることが可能であり、またそうするべきであるという一般的な考えに基づいています。
これらの投資は主に、チームの人員数によって引き起こされる営業損失の形をとります。毎月の支出が収益よりも多く、しばしば遥かに多くなります。これらの損失は業界用語で「バーンレート」と呼ばれています 。文字通り、毎月現金をいくら燃焼 (バーン) するか、という意味です。
しかし、合理的なバーンレート (燃焼率) はどの程度なのでしょうか?
この数年、私はこのことについて検討を重ねてきました。私は直感的に、多くのポートフォリオ企業、そしてスタートアップ・セクター全体の運営において、バーンレートは高すぎであり、持続不可能だと感じます。しかし、創業者、経営陣、または取締役会に、客観的な視点でバーンレートについて話すことは困難です。バーンレートに関する厳格な基準が存在しないために、「それは正しく感じられる、感じられない」といった感情的な議論に陥ることになります。
これほど重要なトピックに関して、感情的に議論してはいけません。そのため、私は経験則のようなものを探し続けてきました。
私が気に入り、ブログで書いてきたのは、「40%ルール」です。40%ルールは、収益成長率と年間営業損失との明確な関係を提示します。 40以下は悪く、 40以上は良いということです。しかし、40%ルールについて問題なのは、それが価値と収益との間に、十分に理解された関係性がある (SaaSのような) ビジネスや、すでに合理的に発展したビジネスに対して用いられる指標であるという点です。
そのため、私は、バーンレートのより根本的な真理に到達したいという希望を抱いて、40%ルールを分析してきました。
そして以下のような考えに至りました。
会社の年間の価値創造 (年末の企業価値から年始の企業価値を引いたもの) は、会社が年間に消費した現金の倍率であるべきだということです。これはシンプルかつ明白に見え、それ自体は良いことです。
しかし、これを機能させるには、以下の2点を理解する必要があります。
- 資金調達のないケースで企業価値をどのように客観的に測定するのか?
- 倍率とは何か?
後者の方が簡単に理解できると思います。倍率は大きい方が良いです。1倍では当然、十分とは言えません。2倍でも同じです。3倍がボーダーラインです。5倍なら問題ないでしょう。私なら、年間のバーンの5倍のリターンを望みます。
年間価値創造は、年間のバーンの3倍から5倍となるべきだと思います。ここれが適度な範囲でしょう。
一方、前者の問いの方がより難解です。売上がある場合、企業価値を試算するためにレベニューマルチプルを用いることは良い方法です。比較可能な企業の資金調達や買収、そして公開会社の企業価値評価を見れば、どのレベニューマルチプルを使用するのかを判断することができます。ただし、レベニューマルチプルは売上高成長率の関数であることを注意深く理解する必要があります。売上高が早く成長すればするほど、レベニューマルチプルはより高くなります。
それでは、これらのすべてを具体化するために、ここで練習をしてみましょう。
あなたの会社の2017年の年間売上高が1000万ドル、2018年には1800万ドルに成長するとしましょう。そして公開会社を見渡すと、あなたの会社に似た会社が、6倍のレベニューマルチプルで取引されているとしましょう。
すると、今年あなたの会社は6000万ドル、来年は1億1000万ドルの企業価値があると見積もることができます。
ですから、2018年には5000万ドルの価値創造があることになります。
バーンの5倍のリターンが欲しい場合、2018年には1000万ドル以上のバーンを出すべきではありません。3倍のリターンでもいいという場合、2018年には1600万ドル以上の損失を出すべきではありません。
このようにこのルールは機能します。
このルールは客観的で、バーンレートに関して、感情的ではなく、合理的な議論へと至るので、私は気に入っています。
しかしこのルールは、価値創造を客観的に測定することが難しい無収益の会社では機能しません。無収益の会社において資金調達時のバリュエーションを代用として使用することはできますが、年末の価値は願望的な数値となり、不合理な願望や期待は、そもそも持続不可能なバーンレートを導くものなので、すぐに感情的な領域へと戻されてしまいます。
Editorial Team / 編集部