Coral Capitalでは、恒例のスタートアップの資金調達の相場の調査レポート「Japan Startup Deal Terms」の最新版(2020年夏)を9月3日にリリースしました。本レポートは、2017年と2019年に発行したレポートに続くものとなります。
スタートアップの資金調達の各種条件や数字は、様々な事情に基づいたケースバイケースの交渉の結果ですが、その時々においてモメンタムは存在します。優先株の条件が起業家寄りになったり、その逆に揺り戻しが起きたり、新しい手法が広まったりなどです。こうしたトレンドを大きな流れとして捉え、定点観測することには一定の意味があるのではないかと考えています。
また、昨今スタートアップに関する報道が増え、資金調達額や調達時のバリュエーションに関しては広く報じられるようになりました。そこで本レポートでは、起業家や投資家が実務で必要とするような観点をより掘り下げることに注力しています。
レポートのダウンロードフォームは一番下にありますが、一部を抜粋して紹介したいと思います。
優先分配は1倍が基本だが、一部ではより大きな優先分配も存在
優先株式の優先分配倍率は、四半期の推移で見ても、優先分配倍率1倍の優先株は、85.7%〜92.6%の範囲で推移しており、引き続き1倍がスタンダードである状況が続いていると言えます。逆に言えば1割程度は1倍を超える優先分配倍率の優先株が発行されていることになります。もっとも、優先分配倍率が高いからといって投資家有利という単純な話ではありません。バリュエーションが高い場合には、高い優先分配率でないとリスク・リターンのバランスが取れないといったこともあるからです。
コンバーティブルではJ-KISSの利用率が高まっている
シード資金調達において、コンバーティブルを使って早く・安く調達を終わらせることは一般化してきていますが、その中でもJ-KISSの利用率が高まっています。J-KISSと改変J-KISSを合わせると2019年第4四半期では9割を超えており、「誰でも自由に使えるシード資金調達の契約書」としてJ-KISSを公開した者としては感慨深いものがあります。
ブリッジにおけるコンバーティブルの利用が増えている
コンバーティブルの元々の設計目的はシードにおける資金調達ですが、その取引実行の早さや、意図的にバリュエーションの決定を遅らせることが可能な性質に注目し、ブリッジファイナンスで使う事例が増えています。
コンバーティブルによる調達の際の、バリュエーションキャップについて2019年通期で内訳を見てみると、キャップ10億円以下が合計約7割を占めています。一方、10億円〜30億円が17.8%、30億円以上も9.5%と、大きな評価額(キャップ)でコンバーティブルを発行している事例が増えていることがわかります。これはブリッジファイナンスでコンバーティブルが活用されていることを示唆しています。
レポートのダウンロード
本レポートでは、他にもステージ別のバリュエーション動向、希薄化率の動向などを収録しています。ダウンロードは以下のフォームから可能です。また、今後も定期的な発行を予定していますので、次回のレポート発行時にはフォームに入力していただいたメールアドレスにご連絡させていただく予定です。
Special Thanks
商業登記簿謄本の大量一括取得に関して、Coral Capitalの投資先で、Graffer® 法人証明書請求などのGovTechサービスを開発する株式会社グラファーに協力いただきました。
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