客先に営業に行くとき(あるいはZoomで面談するとき)、既存プレゼン資料を複製して、そこから、その会社向けに数枚のスライドだけを調整してプレゼン資料を用意することは良くあると思います。こうしたケースでクラウド上にある各種最新データを自動でグラフ化したり、表、テキスト、画像としてまとめたりしてGoogle SlidesやPowerPointのスライドを数分で自動生成してくれる、そんなサービスを提供するスタートアップがサンフランシスコ拠点の「Matik」です。2019年創業で、2021年9月にa16zやMenlo VenturesからシリーズAで$20m(約22.8億円)を調達しています。
面談5分前でも間に合う自動生成
モバイルやSNS、IoTの普及でビジネスにおける顧客接点が増加し、取得できるデータも爆発的に増えています。近年はビジネスアナリティクスの世界で民主化が進み、かつて大企業ユーザー向けだったデータウェアハウスやBIが、データレイクやSaaSに代替され、DXの掛け声とともにデータ基盤が一般企業でも整い始めています。
こうして得られたデータをビジネス分析や報告資料として使うときには、各種SaaSから引っ張ってきてCSVとしてコピペして整形したり、画像としてキャプチャしたものを貼り付けることが多いかもしれません。
データレイクは自社でマーケティングやカスタマーサクセスで顧客別インサイトを得るための基盤という面が今のところ強いと思いますが、社内向けに四半期レポートを「生成する」とか、営業資料を「生成する」というところも自動化が可能になってきている、というのがMatik登場の背景です。Matik利用顧客に受付業務管理SaaSのEnvoy(日本で言えばRECEPTIONIST)がありますが、カスタマーサクセスのために使う四半期レポートはMatikで自動生成していて、資料作成時間の8割を削減したそうです。
ノーコード・レスコードの時代だなと思うのは「アクティブユーザーが45人以上の場合」とか、「顧客の業界が『テック』の場合」などと条件分岐してスライド生成できるところです。
もともとビッグテック企業では社内業務ツールとしてプレゼン資料自動生成ツールがあったりするものです。顧客名を入れて少し選択肢を選ぶ程度で、その顧客企業の業界のトレンドにはじまり、社内に蓄積している各種データを可視化・文章化して10〜20枚のスライドが生成されるというものです。営業に出る5分前でも資料作成が間に合うということで極めて有益なツールです。もちろん本質的な洞察は人間がやるので5分で良い資料が作れるというわけではありませんが、データを探して、コピペしてグラフ化、さらに微調整する工程が自動化される効果は劇的です。
資料がリアルタイムに自動更新される世界
さらに、Matikではスライドに埋め込まれたグラフや表などのデータが、SalesforceやLooker、Redshift、BigQuery、Snowflakeなどから常に流し込まれて最新状態に保たれて資料が動的になる世界を目指しているとしています。
経理・財務クラウドが典型ですが、SaaS普及によって情報がクラウドにリアルタイムに蓄積するようになったことで、そのデータを活用するスタートアップが多く登場しています。今後は人間のコミュニケーションに供するドキュメント生成というのも1つのジャンルになっていくのかもしれません。ドキュメントというものも、ある瞬間を切り取ったスナップショットから、常にアップデートされるデータとリンクしたものに変化していくのではないでしょうか。
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