一般的に「ダイエットしたいなら『毎日体重計に乗りなさい』と言われます。数字が見えて、危機感を持てるとアクションに繋がることから、体重計を見るだけでも痩せる効果があると言われています。ダイエットにおける体重計のように、『GRAPH(グラフ)』は営業目標達成における適切なスケール(計り)となります」(グラフ代表取締役の藤田健太さん)。
株式会社グラフは、目標達成を支援する営業予実管理クラウド「GRAPH」を9月末にローンチしました。代表取締役の藤田さんは、GRAPHをダイエットにおける「体重計」に例えます。GRAPHのダッシュボードは、営業マン、営業マネージャー、経営者、それぞれの視点で「その日」の進捗と予実(目標達成率)を把握でき、目標達成へ向けたアクションを素早く取ることを可能にします。
藤田さん自身、弁護士ドットコム、メドレー、セルソースといったIPOを実現したベンチャーの営業責任者でした。各社でIPOを目指す最中「目標達成しないとIPOできない」「絶対に達成しないといけない」という環境下で編み出したスプレッドシートがGRAPHプロダクトのコアに反映されています。いわば、有能な営業マネージャーのベストプラクティスを、クラウドで手軽に使えるダッシュボードとして提供しているのです。
目標達成を目指す営業現場には似たようなエクセル、スプレッドシートが多く存在している
営業支援ツールといえば、CRM(顧客関係管理)やSFA(営業支援ツール)のような製品ジャンルがすでに存在します。それなのに、新たにダッシュボード特化の製品が必要な理由はなんでしょうか。コンサルティングも含めて多くの営業現場を見てきた藤田さんは次のように説明します。
「例えばSalesforceのようなCRMを導入している会社は多いのですが、営業管理をCRMで完結できているケースは稀で、多くの場合、CRMと並行して表計算ソフト(エクセル、スプレッドシートなど)の運用が存在しています。特に目標に対する実績の進捗管理=『予実管理』においては、各社ごと似たような目的のシートが量産され、それ単体として適切な運用が模索されています。
そうなっている要因は大きく2つ。
まずは、営業組織におけるツール構築と運用力不足によるもの。CRMを使って予実管理を行うにはノウハウを要する複雑なセットアップに加え、顧客情報や案件進捗など、多岐にわたるデータ項目の入力徹底が必須であり、その過程で多くの営業組織がつまづいています。
次に、CRMツールにおけるデータ加工の柔軟性不足、可視化に際する表現力不足があります。CRMには多くのデータが蓄積されるものの、そのデータの有効活用に際しては、適切な分析→可視化が必要であり、既存CRMツール運用ではその柔軟性、表現力に欠けるケースがあります。その結果、CRMからデータをエクスポートし、表計算ソフトやBIツールを活用してデータ分析されるケースが増えています。
GRAPHが、最少のデータ項目で運用可能な、営業予実管理に特化のダッシュボードを提供することは、各社で運用されている非効率な表計算ソフト運用を代替→最適化するとともに、営業マネジメントにおける ”車輪の再発明” 防止にも繋がります」(藤田さん)
既存のツールでは実現が難しいきめ細かな進捗管理、予実管理を、すぐに実現できることが、GRAPHの強みです。営業チームの数値管理ノウハウ、ベストプラクティスを注ぎ込んだダッシュボードを、導入した月から使い始められるわけです。「今後の新機能開発は、営業マネジメントに精通した複数名の知見者と相談しながら進めています」(藤田さん)。
日別、営業担当者別の進捗と予実を可視化
GRAPHの機能を、サンプル画面を使ってもう少し細かく見ていきましょう。
「例えば、この画面を見てください。
月初のDay1から月末のDay30まで、日々の売上やKPIの推移がグラフで可視化されています。3人の営業マンで、今月は合計57稼働日があり、それが43日消化されており、進捗は75.44%です。また、成約売上の実績値は目標に対して77.84%。これを見ると、進捗に対して実績がわずかに勝っている、つまりよい進捗ということが分かります。一方、成約売上の着地見込みは90.77%。これは、今残っているヨミや商談に鑑みると月末に目標達成率90%で着地する公算が高いことを意味し、追加のリードが必要なことが分かります」(藤田さん)
このように、日々変わっていく実績や見込みを見て、取るべきアクションを考えることができます。週一回の会議の場で初めて実績データを見て議論している会社も多いでしょう。GRAPHを使うと、営業担当者本人も、営業マネージャーも、経営者も、それぞれ必要な情報を日次で得ることができるようになるわけです。
また、「進捗昨対比」のグラフを使えば、日々積み上がっていく数字を「対先月」や「対前年同期」で比較できます。目標達成に向けてどのような段階にあるか、この先はどのようなカーブで実績が積み上がりそうか、そうした状況が可視化されているわけです。
当然、営業担当者ごとにグラフを出すこともでき、調子がいい人、悪い人も一目瞭然で分かります。「直視するのは辛いかもしれません。それは体重計を見るのが辛いのと一緒です」と藤田さんは言います。GRAPHは日々のリアルタイムな数字に向かい合うためのツールなのです。
Salesforceやkintoneとも連携
GRAPHは9月にローンチしたばかりですが、早くもCRMとの連携をスタートしています。ローンチ時はスプレッドシートのような使い心地のヨミ表に案件情報を入力すると、それがダッシュボードに反映されるものでしたが、CRMとの連携により、データ入力はCRMに一元化、一方CRMでは構築が難しい「個人ごとの予実管理」「1日単位の進捗ビジュアライズ」、その他ユーザーフレンドリーなUI/UXをGRAPHが引き受けてくれるわけです。
短期的な新機能リリースの予定はどうなっているのでしょうか。ロードマップを聞いてみました。
まず、商談ヒートマップ機能です。営業チーム内でアクティブな商談を「ヨミ」と「金額」でプロットし、商談をクリック選択することで、選択された商談を受注した際の着地見込みをリアルタイムで計算するなど、チームの目標達成に向けた議論をしやすくする仕組みです。
次に、レポート機能。例えば今日1日の営業活動のサマリーを次の項目で可視化します。着地見込み、実績、ヨミごとの数値変化。ヨミが好転した案件と暗転した案件の一覧。また商談金額の変更、受注予定日の変更。当日新規商談の結果サマリなど、営業責任者が気になる(気にすべき)項目を厳選して、適切に可視化する機能です。
営業成績を伸ばすことにフォーカスしたツールであり、機能であるといえるでしょう。
プロフェッショナルサービスは「鬼部長代行」
グラフはツールと併せてプロフェッショナルサービスも提供します。
プロフェッショナルサービスでは、GRAPHによって可視化された進捗と予実のデータを元に営業課題の特定、改善など達成に向けてのアドバイスを提供します。「GRAPHで可視化された数字をもとに率直に話をする。『目の前の数字から目を背けさせない』、それだけでも価値提供になることが多いです」(藤田さん)。
現在、プロフェッショナルサービスは藤田さんとCOOの飯塚さんで提供していますが、今後は営業に精通した外部人材の複業リソースを取り込むことでキャパシティを増やす準備をしています。
歴戦の営業マネージャーのベストプラクティスを織り込んだ、営業チームの進捗&予実を可視化するツールGRAPHと、鬼の営業マネージャーが指導してくれるプロフェッショナルサービス。これを提供していくのが、グラフが展開するビジネスです。
※グラフはCoral Capitalの出資先企業です。
(取材・西村賢/構成・星暁雄)
Editorial Team / 編集部