「タグライン」という言葉をご存知でしょうか。定義はさまざまあると思いますが、我々はタグライン=「企業が自社のサービスやブランドを一言で表すための言葉」と定義しています。例えば、これらはとても有名なタグラインです。
ココロも満タンに(コスモ石油)
NO MUSIC, NO LIFE.(タワーレコード)
100年をつくる会社(鹿島建設)
聞いただけで企業名が思い浮かぶという人もいるかもしれません。コスモ石油が満たすのはガソリンだけではないですし、鹿島建設がつくるのはただの建物ではないのです。たった一言でその企業がどんなことを成し遂げようとしているかが伝わります。
そう考えると、こうしたタグラインはスタートアップ企業にこそ欠かせないものだとも言えそうです。先日、Coral Insightsでこんな記事を出しました。
【ピッチコンテスト】書類選考のポイントは? 審査員に聞いてみた
数多くのピッチコンテストで審査員を多く務めてきたCoral Capitalの西村賢は、スタートアップが書類審査や予選を通過するためには、自分たちの事業を一言で表す「タグライン」を作ることが大事だと話しました。
「自分たちの事業をズバッと言い切れるとキャッチーですよね。まだタグラインがないスタートアップは、ピッチ大会のエントリーをきっかけに社内でディスカッションしてみるのもよさそうです」
今回の記事ではこれを踏まえて、スタートアップ企業のタグラインやミッション、バリューなど、そのブランドに深く関わる「言葉」についてまとめてみました。よかったら社内ディスカッションの参考にしてみてください。
【LINE】CLOSING THE DISTANCE
音声通話およびチャットアプリ「LINE」を提供するLINE株式会社は、「CLOSING THE DISTANCE」というタグラインを掲げています。グループアプリを通じて、人と人のみならず、人と情報やサービスをつなぎ、あらゆる距離を縮めたいと願うLINEの姿勢が伝わってきます。IT企業においてもっとも有名なタグラインであり、企業ミッションの1つでしょう。
【メルカリ】新たな価値を生みだす世界的なマーケットプレイスを創る
フリマアプリ「メルカリ」を提供するCtoCサービスの雄、株式会社メルカリはとても直接的な言葉を使って自社の目指す方向を謳います。「新たな価値を生みだす世界的なマーケットプレイスを創る」。とても明快でありながら、「新たな価値」や「世界的な」などといった言葉一つひとつにメルカリの飽くなきビジョンが反映されています。
【10X】10xをつくる
スーパーマーケットやドラッグストアなどの小売店向けECプラットフォームを提供する株式会社10Xは、社名そのものがタグラインと言ってもいいでしょう。10Xとは「10倍」のこと、つまり非連続な成長を表します。タグラインの「10xを創る」はそのまま小売業界に非連続なDXをもたらすことを宣言しているわけです。
【LayerX】すべての経済活動を、デジタル化する。
LayerXの事業内容を完全に把握している人は決して多くないでしょう。しかしそのタグライン・ミッションを見れば、自ずと何の会社なのかが見えてきます。「すべての経済活動を、デジタル化する」。もうこれで十分です。LayerXのSaaS製品が提供する顧客体験はそういうことなのです。
【ビズリーチ】選ばれた人だけのハイクラス転職サイト
株式会社ビズリーチが運営する「ビズリーチ」は、管理職や専門職、グローバル人材などの即戦力・ハイクラス人材に特化した転職サイトです。タグラインは「選ばれた人だけのハイクラス転職サイト」。ここまで言い切るからこそ、サイトを使う求職者のレベルも自然と高くなるのでしょう。タグラインは「ユーザーを選ぶ」という役割も果たします。
【スマートニュース】朝1分で世界のニュースをチェック
「朝1分で世界のニュースをチェック」。ニュースアプリ「SmartNews」を提供するスマートニュース株式会社のタグラインはとても機能的で、ニュースアプリによって得られるものが端的に表されています。自分に合わせたセレクトで、毎朝ニュースが届く。ローンチ時からその最大の価値は変わっていません。
【アタマプラス】教育に、人に、社会に、次の可能性を。
atama plus株式会社は学習システム「atama+」を全国の学習塾に提供しています。AIを用いることであらゆる生徒に合わせた「自分専用カリキュラム」を作るのがその特徴。「教育に、人に、社会に、次の可能性を」。このタグラインは効率的な学習によって、生徒だけではなく教育そのものに、ひいては社会に新たな可能性が訪れることを示唆しています。
【キャディ】モノづくりに、革命を。
製造業の受発注プラットフォーム「CADDi」を提供するキャディ株式会社はとても力強いタグラインを掲げます。「モノづくりに、革命を」。そのシンプルな言葉は、日本の製造業とモノづくりをDXによって再び盛り上げようという意思表明です。同社が「世界最大産業のDX」と呼ぶチャレンジは、着実に革命を起こそうとしています。
【Voicy】音声xテクノロジーでワクワクする社会をつくる
音声メディア「Voicy」および音声配信プラットフォームを提供する株式会社Voicyは「音声xテクノロジーでワクワクする会社をつくる」というタグラインを掲げます。特に注目すべきところは「音声xテクノロジー」、そして「社会をつくる」という言葉。テクノロジーを活用することで社会を変え得るプラットフォーム企業を目指す、という意気込みが見えてきます。
ちなみにCoral Capitalの投資先企業はどうでしょうか。いくつかの会社を見てみましょう。
【justInCase】助けられ、助ける喜びを、すべての人へ。
株式会社justInCaseは新しい保険のかたちを追求し、いままでにない保険商品を提供しています。しかし、その背景にあるのは「助けられ、助ける喜びを、すべての人へ」というタグラインに見られるように、保険そのものの存在意義に立ち返る姿勢です。「わりかん保険」や「歩くとおトク保険」などのユニークなサービスはそこから生まれています。
【CAPS】幸せの総量の最大化
クリニックのチェーン展開を支援するCAPS株式会社は、「幸せの総量の最大化」というタグラインを使って、医療と健康に関わる事業を提供することの意義を表現。同社のクリニックは現在も、365日年中無休でその使命を果たそうとしています。
【SmartHR】仕事の無駄よ、さようなら。
こちらはCMでも有名な株式会社SmartHRのタグライン。同社のクラウド人事労務ソフト「SmartHR」を導入することで「仕事の無駄が解消され、従業員が気持ちよく働く」ことの価値を表現しています。木梨憲武さんと伊藤淳史さんを起用したテレビCMのキャッチコピーとしても使われました。
Contributing Writer @ Coral Capital