本ブログはニューヨークのベンチャーキャピタルUnion Square Venturesでパートナーを務める、Fred Wilson(フレッド・ウィルソン)氏のブログ「AVC」の投稿、「The Second Quartile」を翻訳したものです。
Fred Wilson氏による過去の翻訳記事の一覧は、こちら。
過去に何度も書いてきたように、アーリーステージの会社へのベンチャー投資のリターンは大きく偏ります。少数の投資先がリターンの大部分をもたらし、その他多くの投資先からは何のリターンも得られません。リターンがべき分布する投資先にどう対応するかは難しい問題です。
USVではアーリーステージのファンド1本につき20から25の会社に投資しています。
各ファンドで最も優秀な4社か5社の投資先(つまり上位25%の会社)が、ファンドのリターン総額の80%以上を生み出します。私たちがこうした会社に多くの時間をかけていると思うかもしれませんが、大抵これらの会社は自然とうまく行きます。もちろん投資先を助けるために手を尽くしますが、すごく時間がかかることはあまりありません。時間をかけて対応する必要があっても一時的な場合が多いのです。
投資先の10社くらいがファンドリターンの5%をもたらします(下位50%)。これらの投資先への対応には多くの時間を割きますし、過去何年にも渡って書いてきたようにこれは大変な仕事です。ここに時間とお金をかけるのは合理的ではありませんが、ともかく私たちは手を貸します。
それから中間の投資先グループ(上位25%から50%の間に入る投資先、第2クオータイル)がファンドリターンのおよそ15%に貢献します。
この中間グループの対応が一番難しいと私は感じています。中間グループの投資先は優れた会社であるものの、上位25%に入る投資先が持つ爆発的な価値創造力に欠けます。最高の人材を採用したり、魅力的なバリュエーションで資金調達したりするのに苦戦します。中間グループの投資先の資金調達では、既存投資家がリードを取ることが多いです。なぜならベンチャーキャピタル業界は上位25%に入る会社に投資したがるからです。特にこれはレイターステージの投資家やグロース投資家のコミュニティで顕著です。
けれど中間グループには大きな価値があります。中間グループの投資先のエグジットは100億円から500億円規模になります。1,000億円規模のファンドを運営するVCにとってはそうではないかもしれませんが、これは決して少なくない額です。こうした会社の創業者や経営陣は、チャンスをうまくものにできれば大金を手にできます。アーリーステージのVCにも多くのお金が入ります。USVでは投資先のイグジット時に株式の10%前半か半ばくらいから20%を保有しています。なので、中間グループの投資先がイグジットした際の収益は50億円かそれ以上になる可能性があります。何社かイグジットがあれば、ファンドリターンが3倍から5倍になるくらいの違いを生みます。なので、中間グループの投資先への対応が大事なのです。
とはいえ、中間グループの対応には成功への信念と忍耐が試されます。投資が報われるまで時間がかかることが多いからです。他のVCに勤める友人からその会社への投資は見送るよという連絡を、数えきれないほど受けることになります。見送る理由はどれも真っ当なものですが、突き詰めると「その案件は私たちにとってそこまで魅力的じゃない」ということです。経営陣に対しても、自信を持つよう何度も説得することになります。人材を採用するのにいつもより手をかける必要があります。思っていたより多くのお金を投資しないといけないかもしれません。事業を収益化するのに苦戦するでしょう。客観的に考えられていないのではないか、と悩むかもしれません。
するとある日、投資先を数億ドルで買収したいという会社が現れ、それまでの努力と信念が報われるのです。
テック業界は何十億ドル規模に成長するスタートアップに固執しすぎていて、とても残念に思います。素晴らしい会社が見えていないし、創業者や経営陣の素晴らしい仕事を、あまりにも見すごしてしまっています。それに、これでは上位25%に入らない会社を、誰もやりたがらなくなってしまいます。
何を差し置いてでも大成功する会社に投資したいというのはわかります。しかし、USVはそのように事業を運営していませんし、他のアーリーステージに投資する優秀なベンチャーキャピタルも同じでしょう。会社を設立したら、良いときも悪いときも助けになってくれる投資家を見つけたいものです。いま話をしている投資家がいるなら、彼らが中間グループの投資先に対し、どのような対応をしているか確認してみてください。あなたが知るべきことは、それですべてわかるはずです。
Editorial Team / 編集部