新型コロナウイルスのパンデミックがはじまったばかりの頃は、リモートで事業運営するといっても、多くの企業ではまずはその基本的なノウハウを取り入れるところからのスタートでした。実際、ほとんどの企業ではZoomやTeams、Webexの習得が当時のリモート対策の9割ほどを占めていたのではないでしょうか。それらのツールは確かにリモートワークに欠かせませんが、洗練されたリモートワーク環境の実現という意味では「リモートワーク1.0」くらいにしかすぎません。
しかし、リモートワークが定着した今、多くの企業が次のフェーズである「リモートワーク2.0」へ移行しはじめています。今では誰もがウェブ会議ツールの使い方を知っています。リモートワークならではの難しさにも順応し、短所も十分に把握しています。その結果、シームレスなリモート環境を実現するためのより高度で長期的なソリューションが多くの企業で求められるようになってきているのです。
このような変化を受けて、私たちも「リモートワーク2.0」の促進に結びつく複数の投資を実行してきました。
今回はそれらの投資をいくつか紹介したいと思います。
atena(アテナ)
多くのコミュニケーションがメールやチャットなどのオンラインツールで行われるようになりましたが、いまだに会社には大量の郵便物が届き、それを回収して確認しなければならないことに変わりはありません。「リモートワーク1.0」では、誰かがわざわざ出社してこの業務に対応しなければなりません。しかし「リモートワーク2.0」ならもっと良い方法があります。それは「atena(アテナ)」です。
「atena」は郵便物の受け取りやスキャンを代行し、中身の確認や分類などを全てオンライン上で行えるようにするサービスです。まるでメールをチェックするかのように紙の郵便物もチェックできるという、非常に直感的な操作性を提供するプロダクトなのです。
リモートHQ
在宅勤務であっても社員のために快適な労働環境を整えたいと考える企業は多いでしょう。たとえば、しっかりしたデスクや座り心地の良いイス、見やすいモニター、高画質なカメラ、安定したマイクなどです。しかし現実問題として、これらの高品質なアイテムの在庫などを全て管理するのは非常に複雑で困難です。好みやニーズは人それぞれですし、それに対応できたとしても今度はそのアイテムをそれぞれ別の住所へ送り、必要がなくなった場合や誰かが退職した際には回収作業も行わなければなりません。一方で、単純に社員に買い与えた場合、報酬とみなされ課税対象になる可能性があります。
リモートHQはこのような手間を全て代行するサービスを提供します。企業は月額のパッケージプランを選ぶだけで、あとは社員がその予算内で自分のニーズに合ったアイテムを選択できるというものです。在庫管理や発送などの各種管理業務は全てHQが行います。企業は月額料金を払うだけで済み、しかも費用扱いであるため課税対象外です。
Paild
経費の処理や精算は関わる人全員にとって面倒なものです。多くの場合、社員がまずは自費で経費を立て替え、後から精算してもらうために領収書を会社に提出しなければなりません。一方で、リモートワークの普及とともに、社員が負担する費用が明らかに増えました。しかしそこで会社が社員に事務用品や備品、食事代などを支給しようと思っても、それに伴う領収書の受領や精算などの事務的なコストの増加が、全員にとって非常に大きな負担となってしまうのが現状です。
しかし「paild」を使えば、拍子抜けするほど簡単に全社員の法人カードを発行できます。リアルカードだけではなくバーチャルカードも発行可能で、カードの発行には実質30秒もかかりません。また、月額予算を社員一人ひとりに設定できたり、経費をタグ付けして分類したり、即座にカードを停止することなどが、全てを1つのダッシュボードで行えます。自費による立て替えをなくし、全ての経費を簡単に管理できるようにするワンストップ・ソリューションなのです。
Toaster
出社して同じ場所で働いていると、多くの情報が自然と共有されるものです。新しい健康保険制度について誰かが話しているのを偶然耳にするかもしれません。人事部への有給の申請方法について隣のデスクの人に聞くこともあるでしょう。プリンターの操作に苦戦していたら、通りかかった誰かが使い方を教えてくれるかもしれません。
しかしリモートワークでは、このようなコミュニケーションの機会の多くが失われてしまいます。そのため、全員が情報や理解を共有できるような、詳細かつわかりやすいマニュアルや書類の作成がなおさら重要になるのです。Toasterはそのようなマニュアルを文書だけではなく動画や音声であっても驚くほど簡単に作成できるサービスを提供しています。個人的に使ったことがあるSaaSの中でも、直感的な使いやすさではかなり上位に入るプロダクトだと感じましたので、ぜひ一度体験してみてほしいです。
新型コロナウイルスがパンデミックから恒常的なエンデミックへと変化する中、徐々に出社する社員の数が戻りはじめている企業でさえもハイブリッドな勤務体制を維持し、特定の社員や曜日、時間帯をリモートに割り当てています。ウイルスがあってもなくても、私たちの働き方が永久的に変わってしまったことはもはや疑いようがありません。Coral Capitalでも、この新しいパラダイムを支えるソリューションに今後も投資し続け、誰もがより快適に働けるよう積極的に貢献していきます。
Founding Partner & CEO @ Coral Capital