このたび、私たちの投資先であるHQがシリーズBの資金調達を無事に完了したことをご報告します。この場をお借りして、改めてお祝い申し上げます。通常、個別の投資先についてブログ記事を書くことはありませんが、HQは他に類を見ない企業であり、その魅力をお伝えするために今回特別にご紹介したいと思います。
私たちが最初にHQに投資したのはシードステージのときです。それ以来、同社のすべてのラウンドに投資し続けています。これ以上投資すると、これはもう投資ではなく買収になってしまうくらいです!
今回の資金調達ラウンドの発表にあたり、HQは自社の計画や成果について多くの情報を公開しています(同社の取り組みについては、こちらやこちらやこちらをご覧ください)。この記事ではそれらの内容を繰り返すのではなく、投資家としての視点から、私たちがなぜHQの歩みにこれほどまで期待を寄せているのかをお伝えしたいと思います。
波を見極める:なぜ福利厚生市場は今、変革の時を迎えているのか
SmartHRに初期から投資し、最近まで同社の最大の外部株主であった私たちは、HR領域について深い知見を得る機会に恵まれました。この経験を通じて、日本の福利厚生市場は、時代遅れのサービスを提供するレガシー企業が圧倒的なシェアを占めている現状にあることを認識しました。そして、「福利厚生の近代化」に大きなビジネスチャンスがあると直感したのです。
また、コロナ禍において多くの業界が根本的な変化や急速なシフトを遂げることは、容易に予想できたことでした。その一例が外食産業で、私たちがダイニーのアーリーステージに投資するきっかけとなりました。さらにもう1つ明らかだったのが、「働き方・職場環境」の分野です。リモートワークが突如として主流となったことで、多くの企業が新しい働き方に適応しつつ、従業員の生産性を維持するために慌てて対処していました。
ちょうどその頃、私はa16zが出資しているFirstbaseという企業を知り、同様のプラットフォームが日本でも成功するのではないかと考えました。このアイデアをチームと共有したところ、当時インターンだったSeirinが運良くHQを見つけてきてくれたのです。Seirin、ありがとう!
「サーファー」と「波」
シードステージの投資において私たちが特に重視しているのは、「サーファー(起業家)」と「波(市場)」の2つの要素です。「波」とは、タイミングや市場規模、競合状況などを指します。この「波」については、私たちはすでに確信を持っていました。福利厚生市場は非効率性が顕著で、時代遅れのサービスが目立ち、そこには非常に大きなビジネスチャンスがあると考えていました。
次に必要だったのは、「サーファー」に対する確信でした。HQの起業家である坂本さんは、その思考の深さや明晰さ、そして説得力のあるビジョンを伝える卓越した能力で、初対面のときから私はとても感銘を受けました。最初のミーティングを終えた時点で、「この企業に投資しなければならない」と確信したほどです。そして幸運なことに、HQは私たちをシードラウンドのリード投資家として選んでくれました。
投資後に見えた想像以上のポテンシャル
ベンチャーキャピタルにおいて避けて通れない現実のひとつは、どれだけ入念にデューデリジェンスを行ったとしても、実際に投資してから学ぶことのほうがはるかに多いということです。 HQへの投資においては、これが特に顕著で、良い意味で大いに驚かされました。
まず、想像以上に優秀な「サーファー」であることがわかりました。坂本さんはそのビジョンを着実に実現し、進捗状況を明確で誠実に、かつ責任感を持って定期的に共有してくれました。また、HQのチームと接するたびに、社員一人ひとりの優秀さはもちろん、全体に浸透した使命感や高いモチベーションに感銘を受けています。これらはすべて、坂本さんのリーダーシップの賜物だと言えるでしょう。
次に、当初予想していた以上に市場の可能性が大きく、既存のサービスが時代遅れであることがわかりました。日本の福利厚生業界は、何十年も前に創業されたレガシー企業が市場を占めており、非常に高い利益率を維持しながらも、顧客に提供する価値は極めて限定的です。HQの最初のプロダクトである「リモートHQ」は、日本向けの次世代福利厚生プラットフォームを確立するための足がかりに過ぎません。今年には新たに「カフェテリアHQ」がリリースされ、次世代福利厚生プラットフォームの構築というビジョンが着実に実現されてきています。
HQが今、業界で最も有望な企業である理由
レガシー企業が創業した当時から、世界は大きく変化してきました。テクノロジーの面では、ネットやスマホの登場があり、現在はAIの時代を迎えています。職場環境も進化し、ハイブリッドワークが以前よりも普及し、女性の労働参加も増えています。
こうした変化にもかかわらず、日本の福利厚生業界は依然として時代遅れのままです。今、求められているのは、現代の働く人たちのニーズに合ったプラットフォーム、つまりこの新しい時代にふさわしいプラットフォームなのです。
顧客のニーズに対する深い理解と、未来を見据えた明確なビジョンを併せ持つHQは、このポジションを獲得する最有力候補であると確信しています。この理由から、私たちは同社のシリーズAをリード投資し、その後のシリーズBでもさらに投資を行いました。
HQの歩みはまだ始まったばかりです。この先に広がる可能性を思うと、楽しみでなりません。このたび、重要なマイルストーンを達成されたHQの坂本さんおよびチームの皆さまに、心よりお祝い申し上げます。そして、皆さまの革新的な挑戦の旅に私たちをパートナーとして迎えていただき、誠にありがとうございます。
P.S. 偶然の一致ですが、坂本さんとSmartHRの共同創業者のお二人とも、お名前が「しょうじ」さんなのです。HQの「しょうじさん」にも賭けてみようという私のちょっとしたゲン担ぎは、今のところ大変うまくいっています。
Founding Partner & CEO @ Coral Capital