チャールズ・ダーウィンの観察から生まれた名言に、次のような言葉があります。「最も強い者が生き残るのではなく、最も賢い者が生き残るのでもない。唯一生き残れるのは、変化に最も適応できるものである」。Coral Capitalの2024年をひと言で表すなら、それは 「変化 」です。今年は、新たな取り組みを開始し、重要なマイルストーンを達成するなど、Coralにとって変革の1年となりました。今年がいかに特別な年だったか、そのハイライトをご紹介します。
「エコシステムVC」としての新たな歩み
年初に、私たちは 「エコシステムVC 」というアイデンティティを新たに掲げ、スタートアップ界における自らの役割を再定義しました。これは単なるマーケティング戦略ではなく、「スタートアップに圧倒的なアドバンテージをもたらすプラットフォームを構築する」という目標に向け、私たちチームを導く指針となりました。詳しくは1月の記事で発表していますが、私たちは「資金・人材・知見」を迅速にスタートアップへ提供することをビジョンに掲げています。というのも、私たちはVCがスタートアップに直接「成功」をもたらすことはできないと考えています。偉大な企業というのは、VCではなく、起業家やその社員たちによって築かれるものだからです。私たちにできるのは、その成功をより速く、より大きなものにするための支援です。そして、まさにこれこそがCoralの注力する使命です。自力で成功をつかみ取れる企業であっても、私たちの支援によって、何倍も速く、何倍も大きな成功を実現できるよう尽力してまいります。
「Coral Beach」をオープン
2月に私たちは、起業家や社員をはじめ、投資先のスタートアップに関わるすべての人が利用できる活気あふれるスペース「Coral Beach」をオープンしました。交流やコラボレーションを促進し、私たちのエコシステムを体現する物理的なハブとして設計されています。これまでに約3800名の方々にお越しいただき、約120ものイベントを開催しました。イベントは、濃密なネットワーキングイベントから大型ワークショップに至るまで多岐にわたり、スタートアップが成功に向けて必要とする知見や人脈を育む場となっています。例えば、COO同士が組織の課題について議論したり、CFO同士が資金調達戦略を共有したりと、同職種間での交流が活発に行われています。私たちVCは俯瞰的な視点から情報を提供することはできますが、同じ職種に従事する人たちの間で直接やり取りされる最新かつ実践的な情報は、まったく別次元の知見をもたらします。Coral Beachは、「オープンな対話と経験の共有を促す環境こそが、イノベーションを育む」という私たちの考えをまさに体現する場所となっているのです。Coral Beachについては、詳しくはこちらをご覧ください。
日本最大のスタートアップ・キャリアイベント「Startup Aquarium」を開催
3月には、日本最大のスタートアップ・キャリアイベント「Startup Aquarium 2024」を開催しました。今年は2,500名を超える参加者が集まり、LIXIL CEOでMonotaRO創業者の瀬戸欣哉氏や、Stitch Fix創業者のカトリーナ・レイク氏、LINEヤフー会長の川邊健太郎氏など、数々の豪華登壇者がイベントを盛り上げました。また、当日は55社のスタートアップがステージに立ち、資金調達のためではなく、ともに世界を変える仲間を募るための熱いプレゼンを行いました。本イベントはこれまで大変好評をいただいていることから、今後は毎年恒例のイベントとして開催することが決定しました。次回の「Startup Aquarium」は2025年3月15日に開催予定です。スタートアップでのキャリアに興味をお持ちの方に、またとないスタートアップのリアルがわかる体験をお届けします。参考までに、今年開催されたイベントのダイジェスト動画はこちらでご覧いただけます。来年のイベントのチケットはこちらからご購入いただけますので、ぜひご参加ください!
新ファンド「Coral Capital IV」をクローズ
5月には、4号ファンド「Coral Capital IV」を250億円で組成完了し、新たな重要なマイルストーンを達成しました。おかげさまで、わずか3カ月で募集金額目標を上回る規模でクローズを迎えることができました。4号ファンドでは、シードからシリーズCまでの企業に対し、1社あたり5,000万円から30億円までの投資が可能です。また、これによりCoral Capitalが運用するファンド総額は約600億円に拡大し、次世代を担う革新的な日本のスタートアップを支援する体制がさらに強化されました。詳しくは、こちらをご覧ください。
第1回「Coral Camp」を開催
この夏、私たちは第1回目の起業家向けリトリート「Coral Camp」を開催し、投資先の起業家たちがオフレコで互いにこれまでを振り返り、深く交流し、将来に向けた戦略を練るための特別な時間と空間を提供しました。軽井沢の静かな環境の中で、参加者たちはビジョンや課題、機会について、「ここだけ」で共有される有意義で刺激的なディスカッションを繰り広げました。Xやメディアでの華々しい発表を目にしていると、大きな成功の裏には多くの苦労や困難の積み重ねがあることを、私たちは忘れがちです。初開催となったこのイベントは、起業家同士がその裏側で起きている「つらいこと」を率直に語り合える貴重な機会となりました。参加者からの評価は非常に高く、今後も私たちの起業家支援プログラムの目玉イベントとして定期開催を予定しています。
Coral Capitalと投資先、両方における採用の進展
今年は、Coralチームに新たにAsami、Mizuki、Arisaの3名が加わりました。さらに近々、投資チームに2名が加わる予定であり、もう2〜3名の優秀な候補者を積極的に募集しています。これほど多くの才能がCoralに集まり、素晴らしい仲間たちとともに働けることを心から誇りに思い、深く感謝しています。Coralに加わることに興味のある方は、ぜひこちらからご応募ください。
同時に、私たちは投資先のスタートアップの採用活動もサポートしてきました。Startup Aquariumに加え、1.5万人以上が登録しているスタートアップ版LinkedInとも言えるCoral Careers、そしてインハウスヘッドハンターによるCXO採用支援を提供しています。現在、採用支援において、日本のVCの中で圧倒的な実績をあげていると自負しています。
2025年に向けて
2024年の終わりが近づく中、私たちは日本のスタートアップエコシステムの未来に対して大きな期待を抱いています。優秀な人材や資金が集まり、起業家の野心が高まる中、規制改革の追い風も加わり、日本のスタートアップ界は重要な転換点を迎えています。
Coral Capitalは、今こそ大胆に投資し、大きなビジョンを持つ起業家を積極的に支援するべき時だと考えています。次のソニーやトヨタを生み出す道は、従来の常識や慣習にとらわれていては切り開けません。これまで見過ごされてきた機会を見極め、既得権益化した業界に挑戦する野心的な起業家たちを支援することで実現されるのです。私たちは、こうした変革を起こす起業家たちのパートナーとして、その成功を加速させるために必要な資金・人材・知見を提供することを使命としています。そして最も大切なのは、必要とされているとき以外は余計な干渉をせず、静かに見守ることです(私たちは「ハンズイフ」投資家です!)。
リミテッドパートナーの皆さま、投資先企業の皆さま、そしてスタートアップコミュニティの皆さまのご信頼に、心より感謝申し上げます。2025年に向けて、私たちはさらなる進化を目指してまいります。ダーウィンの洞察が示すように、成功するのは最も強い者でも賢い者でもなく、変化に柔軟に適応できる者です。そして、未来は訪れるのを待つものではなく、自ら築き上げるものです。私たちは、才能あふれる起業家の皆さまが変革を牽引し、日本の未来を切り開いていけるよう、引き続き積極的に支援してまいります。
Founding Partner & CEO @ Coral Capital