本ブログはニューヨークのベンチャーキャピタルUnion Square Venturesでパートナーを務める、Fred Wilson(フレッド・ウィルソン)氏のブログ「AVC」のMBA Mondaysというシリーズの投稿を翻訳したものです。今回は第4回目としてスタートアップのM&Aを取り巻く、主要な問題の一つ「ブレイクアップフィー(原文:Breakup Fees)」についてご紹介します。また、記事公開にあたり、プルータス・マネジメントアドバイザリーに日本での実務の観点からコメントいただいています。
これまでの記事は下記よりご覧いただけます。
- 第1回:スタートアップの売却における主要な問題
- 第2回:統合後の事業計画
- 第3回:ステイ・パッケージ
これまでM&Aに関する問題についてご紹介して来ましたが、引き続きM&Aに関する問題についての議論をしたいと思います。今回はブレイクアップフィーについて話をします。
ブレイクアップフィーとは、M&A取引が合意に至らなかった場合に、買い手が売り手に支払うものです。
多くのM&A取引、特に小規模な取引にはブレイクアップフィーは発生しません。しかし、取引の価値が大きくなり、交渉決裂時に売り手の事業に混乱が生じる可能性が高くなるにつれ、取引にブレイクアップフィーが含まれることが多くなります。 ブレイクアップフィーの交渉は基本合意書(LOI)交渉の重要な部分になり得ます。当事者双方がブレイクアップフィーについて合意できなかったためにM&A取引が行われなかったというケースもあります。
買い手としては、できる限りブレイクアップフィーを避けたり、その額を限定することが望ましいでしょう。また、どのような状況でそれを支払わなければならないのか細部まで明確にする必要があります。また、取引が失敗に終わってもブレイクアップフィーを支払わずにすむ理由をできる限り多く考えてもいいですし、またそうすべきです。
売り手としては、LOIにブレイクアップフィーを含めたいところです。それにはいろいろな理由がありますが、まず第一には、それが買い手が取引について真剣であることを確認するための良い方法だからです。それは住宅購入契約の頭金にとてもよく似ています。それは買い手に彼らの興味の真剣さを示させるものです。
さらに、M&A取引は売り手および売り手の経営陣にとって、非常に混乱を生じさせるものとなり得ます。売り手企業が長期にわたるM&A交渉を行い、その結果合意に達しなかった場合、事業に重大な悪影響が生じる可能性があります。ブレイクアップフィーは売り手企業をその悪影響から保護する方法となります。とはいえ、一度きりの現金支払いがそのような状況から生じる問題を解決することはめったにないというのも事実ですが。
会社を売却しようとするときは、ブレイクアップフィーの妥当性について弁護士に率直に相談してください。弁護士は、あなたが行おうとしているような取引においてブレイクアップフィーが一般的であるかどうかを教えてくれるでしょう。取引が小規模で短期間のものであるほど、その妥当性は低くなります。
しかし、弁護士の言うことをただ聞くだけではいけません。売り手が取引について真剣かそうでないかは自分自身のハートで判断してください。そして、その取引があなたのビジネスにどれほど混乱をもたらすか予想してみてください。売り手の意図や、後に発生する混乱について何らかの不安がある場合はブレイクアップフィーを要求してください。もし買い手がそれを含めたがらなければ、本当にその取引を進めた方がいいのか、じっくりと考えてください。
Editorial Team / 編集部