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シード調達中のスタートアップなのにWeWorkに入居? 黄色信号だね

がCoral Capitalにジョインしてから、1週間ほどのことでした。オフィス内の会話を聞くともなしに聞いていたら、「でも、WeWorkに入居してるらしいんですよね……」という言葉が私の耳に入りました。明らかに否定的なトーンです。何のことだろうと聞いてみたら、シードラウンドで資金調達中のスタートアップの創業メンバーたちがWeWorkに入居していて、それは黄色信号だというのです。経験上、これは、あまり良いシグナルではないということでした。

誤解しないでいたきたいのですが、もちろんWeWorkは恐らく素晴らしいコワーキングスペースです。上場直前になってバリュエーションが5兆円から2兆円に下がることになりそうだとウォール・ストリート・ジャーナルが報じたり、そもそもバリュエーションの算定として著しい成長が期待される「テック企業」というのがおかしかったのだとハーバード・ビジネス・レビューが詳細に書いていたりしていますが、そういう話と、コワーキングスペースとして良いか悪いかは別のことです。

私の経営者の知人は「おつかれさま、また明日!」と言い合える(自社メンバーではない)仲間がいることが最高だと言っていますし、私自身もWeWorkオフィスに遊びに行くたびに、単なるコワーキングスペースとは違う何かだという思いを強くするくらいにはファンです。WeWork創業者のアダム・ニューマンは現在、公私混同の経営や、株式の大量売却を報じられるなど渦中にありますが、私自身は彼が出身校の卒業式で行った2017年のスピーチを見て、薄っすら目に涙を浮かべたことがあるくらい、彼のファンです。「僕らはWe世代なのだ!」と高らかに宣言するアダムのスピーチは心に響くものがあります。

しかし、WeWorkは高いのです……。

なんといっても高い。私がフリーランス時代に使っていたコワーキングスペースは、WeWorkの5分の1の料金で、それでも十分な設備でした。独立直後のキャッシュフローでは、あのWeWorkの入居費はとても正当化できませんでした。

同様に、シードラウンドでこれから資金調達しようという創業チームが、WeWorkに入居しているというのは、VCから見ると、ちょっと何かがおかしいように見えるのです。何にどうお金を使うのか、どうやって投下資本の効果を見ながら仮説を検証して価値を作っていくのか。大きなビジョンを持ちつつ緻密に数字を組み立てられることが、大きな成功を収めるスタートアップの起業家に求められる資質なのだとしたら、「シード以前にWeWorkに入居している」というのは黄色信号なのです。もちろん、一時的に入居するケースであれば、敷金・礼金や什器の購入や運び込みなどを考えたときに、スピードやキャッシュフローの点でコワーキングスペースが良いという判断もあるでしょう。立地が良く、人に会いやすいということもあるでしょう。ただ、その場合でも同種サービスと比較した場合のWeWorkの料金が気になることがあるのです。

それでもキラキラしたオフィスは必要だし、スタートアップの夢でもある

ただ、一方で、シリーズA以降のスタートアップのオフィスが全般的にキラキラしているというのも事実ですし、これは恐らく悪いことではありません。

1つは、それが採用や社員エンゲージメントで有利だからです。自分で資金を突っ込んだり、安いサラリーで走っていることも多い創業者であれば、贅沢なオフィスなど事業には本質的ではないと思うかもしれません。しかし、創業3年目に入社してくる社員の感じ方は違うでしょう。We世代のプロフェッショナルたちは、自分を正しく評価して、それを示してくれるリーダーについていきたいと思っているのです。スタートアップが優秀な人材を引き付けたり、引きとどめたりするためには事業の成長が何より重要なのは間違いありません。しかし、居心地の良いオフィスも同じくらい大事なのです。人は自分にきちんと向き合ってくれる人のことを見捨てないものです。同様に、従業員というのは自分にきちんと向き合ってくれる会社を見捨てませんし、良い環境を与えられたら、それに応えて良い仕事をしようと思うものです。だからシリコンバレーには卓球台があふれかえっているのです。あれは、会社が社員の健康(=幸福)を願い、軽い運動によって良い仕事をしてほしい考えている、というシンボリックな存在なのです。

アパートの1室から始まったスタートアップが徐々にオフィスが大きく、キラキラしたものになっていくというのは、社内に対しても社外に対しても成長のシグナルにもなります。もしかしたら起業家自身にとってもそうかもしれません。アプリ開発クラウドのスタートアップ、Yappli創業者の庵原保文さんの以下のツイートに共感する人も多いのではないでしょうか。

私たちCoral Capitalがシードラウンドの投資の判断をするときに、WeWorkに入居しているからといって、それがディールブレーカーになることはありません。ただ、シード期で資金調達に奔走しているはずの創業メンバーがWeWorkに入っているというのは、黄色信号となり得ますし、実際目指すゴールからすると不要な出費だと言えるかもしれません。採用に有利という話にしても、初期メンバーをオフィスの良さでしか口説けないのだとしたら、これはもう赤信号と言えると思います。

エクイティファイナンスシードファイナンス企業文化の構築

西村 賢

Partner, Chief Editor @ Coral Capital

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