先日、同僚のKenがOKRについての記事を書きました。私たちの業界の中で、OKR (Objective & Key Results) は最も有名な目標管理の手法のひとつでしょう。Kenの記事は、OKRの歴史やよくある運用失敗の理由について書かれており、大変参考になります。機会があればぜひご覧になってみてください。
OKRの良い点は、目標を明確にしてくれることと、その目標を達成できたかを客観的に判断できるようになることです。スタートアップのように、やるべきことが無数にあるカオスな状況において、OKRは何に集中すべきかを考えるのに役立ちます。一方で、私はOKRには欠点もあると考えています。そのひとつは、OKRを使ったとしても、集中すべきことが明白になるとは限らないということです。
OKRを利用する人の多くは、複数の目標(O)を掲げる傾向にあります。しかしそうすると、目標をひとつ増やすごとに、フォーカスがぶれてしまいます。やるべきことが大量にあると、限られた思考のリソースをたくさんの目標に割り当てることになります。それでも良いチームであれば、いくつかの目標においてB+の結果を出すことができるかもしれませんが、A+の結果を出すのは難しいでしょう。
だからこそ、私はピーター・ティールの「ひとつに絞る」経営哲学に共感します。ティールはPayPalを創業した際、経営陣の優先順位や集中すべきことを定めるために、型破りで極端な経営哲学を取り入れました。それは、集中すべきことの数は5つや3つではなく、ひとつが最適だという考え方です。各チームメンバーには、ひとつのことに集中して取り組むことだけが求められました。
元PayPal幹部のキース・ラボイスによると、ティールは社員と話す際、「その社員がやるべきひとつのこと以外に関する会話はほぼ断っていた」そうです。PayPalの人事制度においては、自己評価シートにいくつもの達成したことを書く欄はありませんでした。社員が書くことができたのは、「会社にとって最も価値のあるたったひとつの貢献」のみだったのです。
ラボイスは、後にQuoraの投稿でこう語っています:
「『ひとつに絞る』経営哲学の最も重要なメリットは、最もインパクトが大きい課題を解決できるように組織を促すことができるという点です。『ひとつに絞る』習慣がない組織の社員は、難易度は低いが、価値もあまりない業務を行いがちになります。たとえば、仮に優先すべきことが3つあり、そのうち最も難しいタスクに明白な解決法がないとします。この場合ほとんどの人は、解決法がはっきりしているが、価値も劣るタスクからやろうと考えるでしょう」 「その結果、組織全体としてB+やA-の結果は出せるかもしれませんが、桁違いに大きな価値を創造するチャンスもたくさん逃してしまうのです」
Coral CapitalもOKRを導入しましたが、チームメンバーに多すぎる目標を与えないように心がけています。インパクトが小さい目標を5つ掲げるよりも、インパクトが大きいひとつかふたつの目標に常に集中していてほしいのです。最高の結果を出すには、自らを律し、集中することが欠かせません。多すぎる目標にコミットしてしまうと、フォーカスがぶれてしまい、凡庸な結果になるリスクが高まるのです。
Founding Partner & CEO @ Coral Capital