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20代、30代は新たなティーンエージャー

21世紀を生きる私たち現代人は、社会の中で「子ども」という存在を自明であるかのように感じています。しかし、これは人類の歴史や地域を通して普遍のことではなかったのかもしれません。

1960年にフランスの歴史学者フィリップ・アリエスは『<子供>の誕生:アンシァン・レジーム期の子供と家族生活』という書物において、中世ヨーロッパには教育や子供時代といった概念はなかったと指摘しています。大人と同等の言葉が使えるようになる7、8歳で徒弟制度に出されて大人と同様に扱われるまでは、1人の人間として数えられることもなかく、むしろ動物のように見られていた、というのです。その扱いはひどいもので、親が過酷な扱いをして平気で殺していたとまでいいます。それが近代的な学校教育の登場や長寿命化によって変化し、大人と異なる「子ども」という社会階層が誕生した、という見方です。

この極端な見方は人類学や社会学などに基づいた学説ではなく、現代思想のようなお話に近いものだと個人的には思っていますし、事実、反論もあるようです。とはいえ、成人するまでの準備期間として、6歳〜18歳の人たちが学校教育を受けたり、大人たちの庇護のもとに学問やスポーツ、芸術、社会生活などに挑戦して全人的な成長を期待される期間であるという認識が中世ヨーロッパになかった、というのであれば、そうなのかもしれないなと思います。

ティーンエージャーは20世紀に発見された人々

似た話ですが「ティーンエージャー」という単語は20世紀初頭に英語で使われるようになり、近年のマーケターたちによって名付けられ、発見された人々だといいます。

今でこそ大学や大学院に進学するのが当たり前ですが、中学や高校を卒業して、結婚や仕事を本格的に始めるまでの期間、大人になりきれない人々が、つかみどころのない新しいライフスタイルを送り始めたということから、子どもとも大人とも違う社会階層として、ティーンエージャーが生まれ、名付けられたという説明です。20世紀は大量生産の消費社会やマスメディアの台頭の時代でもあったので、ティーンエージャー向けの商品やブランドがたくさん生まれました。音楽でもロックの台頭があります。

中世から近代にかけて子どもという階層が意味を持ち、認識されるようになったのと似て、社会環境や寿命の変化から、ティーンエージャーという新しい社会階層が登場したのだろうと思います。

さて、いま寿命が伸びつつある先進国で起こっているのは、20〜30歳という新しい社会階層の出現なのではないでしょうか。これはリンダ・グラットンの「LIFE SHIFT」にあった話なのですが、この人生の新しいフェーズには、まだ名前がありません。私はその特性と、自分がいるスタートアップ業界の語彙から、人生の「シードステージ」と仮に呼びたいと思います。実際、スタートアップのシードステージと、いま20代の人がやるべきことは似ていると思えるのです。

シードステージでは、まだ自分が何者かが分かりません。スタートアップでいえば、「このプロダクトで勝負しよう」と思える、PMF(Product Market Fit)がない状態です。この段階では実験的、探索的にさまざまなことに挑戦します。自身の適性や嗜好、市場動向などをにらみながら、小さな失敗と成功を繰り返しながら挑戦を重ねます。ぼんやりと方向性だけが見えている状態です。後に結婚をする人生を選ぶとしても、まだ結婚して家庭を持つまで時間があります。だから男女とも迷いながらもふわっとした状態であることが多いのではないでしょうか。人によっては転職したり、学位を取り直したりするでしょう。起業してみたり、スタートアップにジョインするかもしれません。旅を続けたり、海外に移住することもあるでしょう。

水泳選手のように20代前半がピークのようなキャリアもあるでしょうが、一般的な仕事でいえば、ほとんどの人は70歳とか80歳まで現役となることでしょう。この長いキャリアの中で、どこに身をおいて何をやっていくのかということを、20代前半の入り口だけで決めるのは、もはや現実的に思えません。「幼児→子ども→ティーンエージャー」という準備期間を経て、1本道の「キャリア」を進んでいくのだという分類は大雑把すぎます。40歳になった人たちが「不惑など、ほど遠い」とキャリアに迷うのも無理ありません。

働き方という点でも、終身雇用の正社員というモデルが良い(あるいは可能)とされていた時代が終わりつつあり、複数社を渡り歩く人のほうがむしろ普通になるのかもしれません。途中でフリーランスを経験するかもしれませんし、自分で小さな法人を経営したり、資金調達をして起業する選択肢もあると思います。そうしたことを考えたとき、人生のシードステージである20代や30代は、それ以後の選択肢を増やすための模索と経験蓄積フェーズなのかもしれません。

こうしたことを考えると、法人や事業、組織をつくるフェーズのスタートアップで20代のうちに働いてみるのは、良い選択肢だと思うのです。スタートアップはどこも、最初からデジタルで最大限にレバレッジを効かせて事業を立ち上げようとしています。そのスキルや経験は後に生きるでしょうし、強く、大きくなりつつある日本のスタートアップ・エコシステムでキャリアをつくっていくのだと考えると、これは「株式会社スタートアップ」に転職する、ということなのかもしれません。

先日、Coral Capitalでは日本最大のスタートアップキャリアイベント「Startup Aquarium」を2月8日に開催すると発表させていただきました。発表後、すぐに100人以上にご登録いただき関心の強さをチーム一同で感じています。イベントを企画したCoral CapitalタレントマネージャーのRyoが「新しいスタートアップ転職スタイルを提案します」というブログで企画趣旨を説明していてますが、これは転職スタイルの提案であると同時に、まだ命名されていない人生の模索期、「人生のシードステージにおけるキャリアや働き方の提案」でもあるのではないかと思うのです。

スタートアップ転職
西村 賢

西村 賢

Partner, Chief Editor @ Coral Capital

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