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起業家の皆さん、クリスマスにも仕事をしますか?

スタートアップの起業家はクリスマスにも仕事をするのでしょうか? もう少し質問の範囲を広くして、起業家は土日・祝日などの休日には、どの程度仕事をしているものでしょうか?

クリスマスが近づく12月15日にTwitterの投票機能を使って広く意見を求めたところ、以下のように519票のうち半数弱(46.6%)の回答者が「自分に休日という概念ははない」という回答結果となりました

Twitterのアンケート結果に加えて、Coral Capital投資先の創業メンバーの方々に休日の過ごし方や考え方についてSlackで聞いてみたところ、いろいろな意見が集まりましたので、記事としてまとめてみたいと思います。

※Twitterの回答は匿名なので、519票のうち、どの程度が実際にスタートアップの創業者かは分かりません。

創業取締役は労働基準法の対象外

まず大切なことなので先に明記しておきますが、この記事で扱っているのは起業家・創業者のワーク・ライフスタイルに関する意見や実践です。会社法上で言えば取締役であり、スタートアップの場合には、その多くが会社の株主でもあります。一方、働き方改革の一環として2019年4月に施行された労働時間法制の見直しの対象は、会社と雇用関係を結んだ労働者です。会社の従業員は労働基準法により守られている存在ですが、取締役は違います。

もう1つ重要な前提があります。クリスマスも休日も関係なく仕事をすると回答をした創業者の皆さんであっても、社員については当然きちんと休みを取る体制を確保しているほか、「休日には、あまりほかの経営メンバーにDMしたり、マネジメントチャネルに投稿をしないように気をつけています」(justInCase創業者・畑加寿也さん)と、自分のワークスタイルを押し付けたり、それが周囲に影響したりしないように気をつけているという意見が多く見られました。

なお、従業員からみたスタートアップの働き方については、以前Coral Insightsで掲載したブログ記事「スタートアップはサービス残業が当たり前のブラック労働環境なのか?」もご覧ください。

※起業家の休日の過ごし方について、よく聞く意見の例
忙しい創業者の皆さんから意見を募るにあたって、事前に類型として私の方から以下のように回答例を用意しました。これまで個人的に起業家の皆さんに聞いたことがある休日の過ごし方です。実際のCoral Familyの創業者の皆さんの回答を読む際には番号とともに参照してください。

  1. 「スタートアップは年単位のマラソン。きちんと休んでリフレッシュするメリハリが大事なので、私は週末・休日は緊急案件以外は対応しないようにしています」
  2. 「今は週に最低80時間は仕事をしようと決めています。日曜日に半日好きなことをする以外は平日も休日も関係なく1日14時間仕事しています。年末年始も全く関係ありません」
  3. 「イーロン・マスクは週100時間働けと言ってるじゃないですか。僕らは120時間やりますよ」
  4. 「妻に隠れてコッソリ仕事しています。いや、やっちゃいますよねー」
  5. 「ステージによって違うのではないでしょうか? シリーズA以降はなるべく休日は休むようにしています」
  6. 「休日は目の前の仕事ではなく、中長期のことを考える時間にしたり、関連分野の勉強などインプットに時間を当てています。後はサウナですね」
  7. 「アーリーステージの起業家ならクリスマスは関係ないと思う。むしろ静かにプロダクトに集中できる最高の時間。創業メンバー全員仕事です」
  8. 「週末は土日のどちらかは完全な休みにするように心がけていますが、なかなか難しいです」
  9. 「休日は半分くらいの速度にスローダウンはしますが、仕事自体はします」
  10. 「クリスマス? もちろん筋トレしますよ。休みの日はメンタルを整えるために筋トレですね。それも仕事のパフォーマンス最大化の一環です」

22%が休日は基本的にオフ

「お正月から徹夜で技術ドキュメントを英訳しました」(Authlete創業者・川崎貴彦さん)とか、「土日ともだいたい仕事している」上に、「12月31日の夜8時まで働いて、1月1日に両親に挨拶して、遅くとも2日の昼から働いています」(Shippio共同創業者・佐藤孝徳さん)といったハードな創業者の皆さんがいる一方で、Twitterのアンケートでは「休日は基本的にオフ」という回答が22.7%を占めました。「土日はどちらか1日は休むようにしている」(18.5%)も合わせると、4割程度の人が少なくとも週1で休みを確保しているようです。

「休日は違う仕事」(半日だけ、勉強、長期戦略etc)という回答も12.1%ありました。土日といっても完全に仕事を忘れるわけではなく、午前中など半日だけは仕事をしたり、ジムで運動したりマンガを読んだりしつつも、そこかしこに仕事を混ぜていく「休日はスローダウン」方式の人も少なくないようです。

ホテルや路線バス向けにダイナミックプライシングを提供するスタートアップである空の創業者・松村大貴さんは上記回答例の1番と6番に近く、「仕事っぽい仕事はしませんが、頭の中は常に長期目の事業のこと考えてる感じです」と言います。スタートアップは年単位のマラソンだからリフレッシュするメリハリも大事という考えの人は多そうです。

集中力が必要な仕事は深夜か休日に

休日にはインプットの時間を多めに取るとか、集中力を要するソロワークをやる日としている人もいます。特に創業社長に多いのが、平日できない仕事を休日にやるパターン。法人向けカード発行サービスを手掛けるFintechスタートアップHandii代表取締役社長兼CEOの柳志明さんも、その1人。

「基本的に休日祝日関係なく仕事しています。というか平日の日中は人と話していることが多く、間の時間にガッと集中力を上げるほど器用なことができないので、手を動かすのは深夜か休日・祝日です。ただ、記念日などは、ちゃんと時間を取っています。ワークライフバランスではなくワークライフインテグレーションしちゃってる感じです。年末年始もやることどっさりあるので頑張りたいと思います! ただ、他のメンバーにはこの価値観は全く押し付けたりしません。そこはすごく気をつけてます」(Handii共同創業者・柳さん)

会社のステージで異なる

まだ独身でフルコミットで事業に打ち込みはじめたアーリーステージの起業家と、シリーズA以降など一定程度は事業や組織もできつつある起業家では土日祝日などの働き方に差があるかもしれません。PMF以前であれば、限られたランウェイの期間内でどれだけ施策や打ち手を繰り出せるかが重要というところがありますから、休日も関係なく仕事をするかもしれません。逆にシリーズA、B以降であれば、今度はマラソンにようにペース配分に気をつけないとバーンアウトや、人間関係の問題が出てきてしまうかもしれません。

例えば、justInCase共同創業者の畑さんは「創業当初の2016年のクリスマスと年末年始は、ずっとコードを書いてプロトタイプを作っていました。それでも家族は完全に理解を示してくれていました」と言います。

畑さんは保険会社の会社員でありながら夜間や休日にコードを書き続けて短期間でプロトタイプを作り上げ、そのスピード感に驚いたCoral Capitalの澤山が出資を決めた経緯があります。翌年の2017年にも畑さんは規制当局から(少額短期保険業の)認可が降りず、必死で書類を準備する仕事をしていたとか。その後は年末年始はフェーズによって家族と帰省していたり、会社のPLモデルを作る作業をしたり、筋トレしていたりなど、いろいろだそう。

イーロン・マスクはSpaceXの立ち上げ時の最も大変な時期は工場の床で寝て週に120時間働いていたと言います。その後も「持続可能なレベル」として週に80〜90時間は仕事をしているとか。

青果店経営をしならが農業流通SaaSを提供するkikitori創業者の上村聖季さんも、上記回答例の3番と7番を選び、「アーリーステージの起業家ならクリスマスは関係なく、むしろ静かにプロダクトに集中できる最高の時間。創業メンバー全員仕事をする」という考えに近いそうです。ただし、「旅行したり映画を見るより仕事してる方が効用が高いんです。ただ、他のほとんどの人はそうではないと常に自分に言い聞かせて社員に接するようにしています」と言います。修行僧のように頑張るとかブラックな働き方をしているということではなさそうです。

起業家はインセンティブが異なる

前出のHandii創業者の柳さんは冗談まじりに「取締役は働き放題プランだからね」と、休日も関係なく仕事をするライフスタイルを説明することがあるそうです。

これはブラックジョークのように見えて、おそらくそうではありません。スタートアップとして成功した場合には、社会的に意義のある仕事ができたという高次の充足感や、経済的にも大きく報われる前提があるからです。もちろん、それと表裏となっているプレッシャーもあるかと思います。

そこも含めて家族(配偶者)の懐が深い感じがするのが、Shippio共同創業者の佐藤孝徳さんの次の回答です。

「僕は家族に大変な負担をかけながも、この5年間は、毎年12月31日の夜8時頃まで働いて、1月1日に両親に挨拶をして、遅くとも1月1日の昼からは働いています。といっても好きで働いているだけなので、当然年末年始に社員に業務連絡することはありません。あと、子どもたちがいるので、クリスマスの24日の夕方から25日の昼までは家で過ごしますね」

「ちなみに土日もだいたい仕事をしていますが、以前、妻に全然家にいられなくてすまないというような話をしたら、『夫はマグロ漁船に乗って北極海に行ったと思っているので5年は帰って来なくても良いというくらいの覚悟はある』と言われたことがあります。今の時代には全く共感されないと思いますが、お互いそれで合意出来ているのでいいかなと思っています……、いいのかな(笑)」(Shippio共同創業者の佐藤孝徳さん)

家族やパートナー、子どもがいる場合

家族やパートナー、子どもの有無は休日の過ごし方に大きな影響を与えるかと思いますが、それもご家庭によっていろいろ違いがあるようです。

予実管理SaaSを提供するDIGGLE創業者の山本清貴さんは、夫婦そろってハードワークだとか。

「妻と小学生1人が家族です。めちゃくちゃ身も蓋もないですが妻も共働き(かなりのハードワーカー)で、クリスマスとかお互いの誕生日とか結婚記念日とか一切気にしない家庭なので、クリスマスも変わらぬ日々として普通に過ごしています。結婚記念日も毎年気がついたら過ぎています(笑) 『あれ?先週結婚記念日だったんじゃない!?』という感じです。一方、週末・休日はちゃんと休んでいますかという質問だとすると、休めるようなら休む、仕事があれば仕事をする、です。回答例の8番と9番ですね」(DIGGLE創業者・山本清貴さん)

家族やパートナーがいれば、働き方が違って当然だと言うのは、法人向けのコスト削減SaaSを提供するLeaner Technologies共同創業者・大平裕介さんです。

「結論としては、僕はクリスマスも関係なく働きます! ですが、それはあくまでもビジネスマンとして、クリスマスの1日も、何気ない1日も、働ける時間としての価値は変わらないためです。ご家族やパートナーがいらっしゃる方にとっては、クリスマスの1日と、何気ない1日の価値は天と地ほど差があり、非常に大切な日だと思うので、無理にクリスマスまで働かなくていいと思っています。さらに、スタートアップにて死ぬほど楽しく働けるのは、ご家族やパートナーの理解や支えあってこそだと思っているので、チームメンバーには働きたい気持ちをぐっと堪えて、日々の感謝を伝える日にして欲しいと思っています~!」(Leaner Technologies共同創業者・大平裕介さん)

音声自動文字起こしサービスを提供するEpicbase創業者の松田崇義さんも、結婚を期に少し変わったそう。

「独身のときは自分の体調が悪くならない限り働くスタンスでしたが、家族ができてからは、Leaner大平さんと同意見です! うちはライスステージに合わせてうまく働いてもらえるといいなと考えています!」(Epicbase創業者・松田崇義さん)

出張シェフのサブスク、シェアダイン共同創業者の飯田陽狩さんは保育園に通う5才児の母。

「我が家は、平日は私のワンオペです。保育園お迎えの17時から子どもを寝かしつける20時過ぎまではスマホも一切見ず子供としっかり向き合って過ごしてます。寝かしつけたら家でまた仕事します」

「クリスマスも誕生日も記念日も、祝日にあたらなければ、あえて休暇は取らないですし、上記の平日として粛々といつも通り過ごしますが、前後の日曜日でお祝いディナーなどはします。働きマンの皆さん同様、この価値観を他の人に押し付けるつもりは全くなく、弊社は誕生日休暇(家族、大切な人含む)もあります!」(シェアダイン共同創業者・飯田陽狩さん)

ワークとライフがブレンドした起業家

休日がないというよりも、平日と休日の区別が判然としないというタイプの回答もありました。

行政サービスのデジタル変革を支援するグラファー創業者の石井大地さんは、スタートアップの起業家となる以前には、文学賞を受賞した経歴もある小説家だったこともあります。

「あまりサラリーマンとして働いた経験がなく、小説家とか孤高のプログラマーだった時間が長いので、やりたいことをやりたいときにやるという感じで、『家庭と仕事』みたいな2つの要素が人生のなかにあって切り替える、という感覚を持ったことがこれまでにないです」

「ミーティングなどの予定が入っていればその予定をこなすし、なければ、そのときやりたいようにしていて、プログラミングもすれば、企画をすることも、ゲームをすることも、YouTubeを見ることも、寝ることもありますが、どれが仕事でどれが趣味かということを考えたことがないですね。締め切りが迫っているでかい山があればそれをやりますし、そういうときはあまり休日かどうかは考えていなくて、ただ疲れたら休んで、疲れていないときに作業をすればいいかな、くらいに考えています。クリスマスは個人的に特に思い入れがなく、何もしない派です」(グラファー創業者・石井大地)

OAuthの認可サービスを開発・運用するAuthlete創業者の川崎貴彦さんも、仕事の時間とプライベートの時間は、あまり区別がないと言います。

「家族の相手をしてないときはダラダラと仕事してますね。○○時間働く、というような気合いとは違います。作業部屋から出て、そのときに子どもがNetflixでアニメ見ていたら一緒に見始めたり、昼ご飯を食べて眠気を感じたらそのまま夕方ごろまで昼寝したり、社内や顧客とのオンライン会議も子どもの習い事の送迎の合間に参加したりしています」

「あまりほめられた働き方ではないかもしれませんが、気楽ですね。欧州や米国のタイムゾーンの会議に参加することが多いので、深夜から早朝に活動が活発化。代わりに日本時間の日中は寝てることも多いです」(Authlete創業者・川崎貴彦さん)

一般の労働者に関する研究データでは、仕事の進め方に関して裁量が大きい場合には満足度が高いことが知られています。そういう意味では家族の理解がある限り、うまく仕事を生活の中にブレンドできる裁量があるのは良いことなのかもしれません。

「不幸な成功者」を増やさないために

最後に2つ、冒頭の投票ツイートについた返信ツイートをご紹介したいと思います。

1つ目はエンジニア転職サービス、Findy創業者の山田裕一朗さんの以下の指摘です。今回ご紹介した回答はCoral Capital出資先の創業者の皆さんのものなので、バランスを取るために、出資先以外の創業者のご意見としてご紹介します。

長時間労働などハードワークが勲章となる「ハッスル文化」は、業界・職種によって広く見られるもので、起業家にも、そうしたバイアスはあるかもしれません。ここで投資側であるCoral Capitalについて述べておくと、私たちは「ハンズイフ」投資家なので、基本的には起業家の自主性に任せるスタンスです。これは働き方についても含まれます。ただ、やはりスタートアップは大きな成功に到達するまで5〜10年かかる超長期戦なので、それぞれのスタイルを取りつつも、しっかりと休みや家族との時間を取ってほしいと考えています。

もう1つご紹介したいツイートは、シリコンバレーで起業した日本人で、2019年にホンダグループの本田技術研究所に買収された米Drivemodeを創業した古賀洋吉さんのものです。家族や友人との信頼関係こそが人を幸せにし、逆にそこを軽視すると「不幸な成功者」が増えるという指摘です(8連続のツイートはこのリンクから見れます)。

古賀さんは、ハーバード・ビジネス・スクールで、イノベーションのジレンマの理論などの功績で知られる故クレイトン・クリステンセン氏の薫陶を直接受けた方です。私には古賀さんの言葉が、クリステンセン氏が2010年に書いた「How will you measure your life」(人生の成功を何で計るか)というエッセイと重なって見えます。なぜ世界トップのエリート校を出た同級生たちは社会に出てしばらくは幸せそうだったのに、40歳、50歳となっていくと人生の道を踏み外し、家族に見捨てられ、不幸になる人が多いのか。それをイノベーションのジレンマと同様に合理的な意思決定だけで説明しています。

起業は究極の裁量労働かもしれませんが、数か月や数年単位の「目に見える成果」を追い求めすぎて人生で不幸になっては本末転倒かもしれません。スタートアップしている全ての人が事業で成功し、かつ温かい人間関係の中で幸せでいられますことを願っています。

Merry Christmas!

シードファイナンス企業文化の構築経営
西村 賢

西村 賢

Partner, Chief Editor @ Coral Capital

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