本ブログはニューヨークのベンチャーキャピタルUnion Square Venturesでパートナーを務める、Fred Wilson(フレッド・ウィルソン)氏のブログ「AVC」の投稿「The Co-Founder Relationship」を翻訳したものです。
Fred Wilson氏による過去の翻訳記事の一覧は、こちら。
シード、エンジェル、シリーズAの投資でうまくいかないことのリストを作るとしたら、「共同創業者間の関係」がリストの一番トップに挙がります。すべてのスタートアップに共同創業者がいるわけではありません。創業者が1人のところもあります。ある意味、その方が「保証」しやすいと言えます。少なくとも、誰が責任者で、会社で起きていること、起きていないことの責任の所在は明らかです。
共同創業者がいると、何が問題を引き起こしているのか分かりづらくなります。一般的に言うと、創業者は抱えている問題を投資家や取締役会に話したがりません。本当に状況が悪くなってから問題が明るみに出ます。それまでは蓋がされ、投資家は何が起きているのか推測する以外にできることはあまりありません。
よくあるのが、創業者の1人が「ビジネス担当」で、もう1人が「技術担当」というパターンです。それぞれが「ボス」として管轄する領域があり、お互いの領域にあまり深入りしないのでうまくいくことが多い形です。しかし、この線引きが崩れる場面はたくさんあります。例えば、報酬、資金調達/株式の希薄化、プロダクト戦略、リソース配分、マーケティング、広報などは創業者間で揉めごとが起こりやすい領域です。
創業者間の争いは、社内外のすべての人に影響を与えますが、特に創業者の直属チームに影響があります。直属チームのメンバーにとっては母親と父親がうまくいっていない家庭にいるようなものです。意思決定は乱れ、ストレスと緊張状態にさらされます。誰もが慎重になり、息を潜めているような状態です。
では、そうならないためにはどうすれば良いのでしょう?
私のアドバイスは次の通りです。
1/ 取締役会と投資家グループは創業者たちと直接、彼らが足並みを揃えられていないことについて率直に話し合うようにします。このような話は投資前に行うのが理想です。この問題を議題として取り上げ、オープンに話し合うことで、効果的に問題に対処できる可能性が高まります。
2/ 創業者が直轄しているチームのメンバーには、創業者間の争いが深刻化したとき、取締役会や投資家グループにそれを伝える権利と責任があると認識してもらいます。一般的に、スタートアップでチームメンバーがリーダーを迂回して取締役会に話をするのは「ダメ、ゼッタイ」なのですが、違法行為や不正行為、ハラスメントなど、そうすべき類の問題がいくつかあります。そうした問題と同じように、創業者間の関係が非常に悪く、会社に深刻な損害を与えている場合、チームメンバーはその情報を取締役会に伝える責任を感じるべきでしょう。
3/ 世の中には素晴らしい創業者間の対立解消に特化したコーチがいます。これは結婚している夫婦へのカウンセリングに少し似ています。創業者たちは定期的にコーチと会って問題に向き合い、対立を解消します。これはとても効果的です。ほとんどのCEOコーチは創業者間の争いに関するコーチングも行いますし、その人ができない場合でも、適任な人を紹介してくれるでしょう。
4/ 創業者間の「離婚」はよくあることです。互いにうまくやっていく方法を見つけられない場合、創業者の何人かは会社を去ることになります。創業者だけで問題を解決できることもありますが、多くの場合、取締役会やチームメンバーも解決に関わります。これに関するデータは見たことはありませんが、解消できない対立が起きるなどして創業者の1人または数人が途中で抜けずにゴールまでたどり着けた創業チームはごく少数なのではないでしょうか。
創業者間の争いはスタートアップ界隈でよく見られますが、話題に上ることはあまりありません。これは変わるべきです。起きるときは起きてしまうからです。あなただけが経験しているのではありません。打ち明けても大丈夫です。問題として取り上げ、対処しましょう。
注意:この記事は、特定の会社、特定の創業者、特定の事例について書いているわけではありません。私たちがよく目にし、話す価値があることだと思って書きました。あなたやあなたの会社、あなたが勤める会社の創業者について書かれていると思っているなら、それは間違いです。とはいえ、その話をするのは歓迎です。
(Fred Wilson氏による記事の翻訳一覧はこちら)
Editorial Team / 編集部