Key points
- 6年ぶりにJ-KISSをアップデート
- SAFEに合わせてValuation CapをPreからPostに変更。ラウンドごとの希薄化率がわかりやすくなった
- ひな形から変更されているかについて明記する一文を追加
J-KISSのメジャーアップデートとなるJ-KISS 2.0を公開しました。これに対して、従来のJ-KISSをJ-KISS 1.x系と呼びます。
J-KISS 2.0では、最も大きな修正点として、バリュエーションキャップをプレベースからポストベースへと変更しています。
これは、Y Combinatorが2018年9月にSAFEのバリュエーションキャップをポストベースに変更したことにヒントを得ています。2016年4月にJ-KISSを公開してから6年が経ち、当初の想定よりもJ-KISSが広く使われるようになったこと、また複数回のラウンドで使われることが増えたことを受けて、より分かりやすく使うことができるようにと意図しての変更となります。
希薄化率がわかりやすくなる
J-KISS 2.0でPost Cap 3億で3,000万を調達した場合、シリーズAの直前時点で投資家は3,000万/3億 = 10%の株式を得ることになります。逆の言い方をすれば、このラウンドでの希薄化率は、シリーズA直前時点で見て10%です。これは複数回J-KISS 2.0で調達を重ねた場合も同じです。
例えば、シードでPost Cap 3億で3,000万を調達し、プレシリーズAでPost Cap 5億で7,500万を調達した場合、シードの投資家に10%、プレシリーズAの投資家に15%を渡すことになります。
ひな形からの変更の有無を明示
もう一つ重要な点として、「公開されているひな形から変更されていない」という一文を冒頭に追加しています。逆に言えば、この一文があるならば、ひな形からの変更を確認したりリーガルレビューをしたりする必要がないということです。
もう少し踏み込んで説明すると、Coralとしては、シード期の調達であればひな形のままのJ-KISSを用いることを推奨しています。J−KISSはひな形を用いるからこそ、line-by-lineで修正を確認したり、リーガルレビューなどを省略でき、その最大のメリットである速さ・安さを起業家と投資家の双方が享受することができます。
特にシード期においては、ほとんどの場合において修正は不要だと考えています。また、もし修正されている場合、起業家と投資家の双方から見て、ひと目で分かるようになっているべきだと考えました。
もちろん、J-KISSはオープンソースであり、必要に応じて修正を加えて用いることを否定はしていません。特にブリッジラウンドで用いる場合などは、個別の状況に合わせて修正を加えるべきだと考えています。
J-KISS 1.x系について
今後もJ-KISS 1.x系を使い続けることは可能です。公開についても継続します。
なお、転換時の計算がややこしくなるため、J-KISS 1.x系とJ-KISS 2.0を混ぜて使うことはオススメしません。すでにJ-KISS 1.x系で調達済みであれば、転換までは同じJ-KISS 1.x系を用いると良いでしょう。
Founding Partner @ Coral Capital