3D CGで描かれたメタバースサービスが注目を集めている現在。写真や通常の動画と違って、様々な視点から見られる3D CGのメリットに気がつく人も増えてきました。
しかし3D CGのモデルデータを作るのは、専門知識がないビギナーにとっては至難の業。物体を3次元で捉えてモデリングをするのは、絵を描く・写真や動画を撮るとは別のスキルが必要になります。
そこで注目したいのが、スマートフォンのカメラで物体を3Dスキャンして、3D CGのモデルデータを自動生成する無料アプリ「WIDAR」です。スキャンだけでなく、形状変形やペイント、CGエフェクトの付加などの編集作業まで行えます。
開発元のWOGO(※)の秦竟超社長によれば、3Dスキャンと3D編集機能をスマホに実装したのは世界初。誰でも手軽に3Dコンテンツを作れるようになったと言います。実際にTwitterでは、「#WIDAR」のハッシュタグとともに3Dモデルが数多く投稿されています。
※情報開示:WOGOはCoral Capitalの出資先企業です
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例えば食べもの。筆者にとっての「新宿の味」を3D化してみました。
僕にとっての新宿の味#かめや#widar pic.twitter.com/ZYMGXrqMuX
— 武者良太 @「仮想空間とVR」「メタバースの歩き方 」 (@mmmryo) April 13, 2022
静岡県の名店のハンバーグも…
実は
初さわやか
もキメてきてました😁#スキャン飯#WiDAR#リンゴLiDAR pic.twitter.com/dQ5ucoofFG— 桑山byワイクウーデザイン (@YkuwDesign) April 12, 2022
パエリアは3Dでも映えるわ…
本日のランチはパエリア#フォトグラメトリ #widar pic.twitter.com/SZJqQR11A1
— イワケン@Microsoft MVP (@iwaken71) April 25, 2022
親子丼もシズル感たっぷりです。
吉野家新メニューの親子丼です。
もはや紹介するまでも無いぐらい有名なアレですね。なか卯の親子丼と比べて
味が濃いなと思いました。
肉は若干プルンとしていた感じです。なか卯の親子丼と大差は無く、ちょっとした好みの差といったところでしょうか?#widar pic.twitter.com/WIDIi4bInX
— KIROKUYA 記録屋(メタバース部) (@KIROKUYA_SCAN) April 26, 2022
このように、SNSに「飯テロ3D」があふれる日は遠くないかもしれません。少し前置きが長くなりましたが、今回は実際にWIDARで3Dモデルをきれいに制作するコツを紹介します。
なお、WIDARにはiPhone版とAndroid版が用意されています。iPhone版はフォトグラメトリによる高精細なPhoto Scanモードと、深度センサーを用いたLiDAR Scanの2種類の方法で3Dモデルにすることが可能です。Android版はフォトグラメトリによる3Dスキャン機能のみを搭載しています。どちらもテーブルの上に置ける小物から、ちょっとしたサイズのオブジェまでであれば、気軽にデジタルツイン化にチャレンジできます。
1枚1枚写真を撮っていく
今回はiPhone版のPhoto Scanモードを使って、3D CGのモデルデータを生成してみます。1つの3D CGのモデルデータを作るには、被写体をあらゆる角度から撮影した10〜100枚の写真が必要になります。
撮影時には、一定時間ごとに自動でシャッターが切られていく撮影モードと、1枚1枚自分でシャッターを切っていく撮影モードがあります。3Dモデルを手軽に生成したいなら前者(ただしかなりの慣れが必要です)、よりきれいな3Dモデルを生成したいなら後者と、使い分けてみるのが良さそうです。
個人的なおすすめは、1枚1枚自分でシャッターを切るモード。というのも、自動シャッター時にスマホを持つ手が動いていると写真がブレてしまい、3Dモデルデータ生成に影響が出てしまうからです。被写体の後ろ側から撮影する際にシャッターが押しにくいという欠点もあるのですが、1枚1枚しっかりと構図を決めてシャッターを切ると、よりきれいな3Dモデルを生成できます。
被写体全体に光があたる位置で撮影する
フォトグラメトリで3D CGのモデルデータを生成する際は、被写体全体に、まんべんなく光を当てることが大事です。もともと低照度で撮影するとノイズが出やすいスマートフォンのカメラを使うアプリですし、影となっている部分は形状の再現が難しくなります。
屋外で撮るときは太陽の位置が低い朝や夕方を避ける、屋内で撮るときは窓際に机を置いてレースのカーテンを引き、太陽の光を拡散させながら被写体に当てて撮影しましょう。
模様がある床やテーブルの上で撮影する
フィギュアやスニーカーのように特徴的な造形を持つ被写体であれば、真っ白なテーブル上でも撮影できるようです。しかしフラットな面を持つ被写体だと、うまく写真が繋げられないのかエラーが出ることが続きました。
もしうまく撮影できないときは、柄がプリントされたランチョンマットや布を敷き、その上に被写体を置いてから撮影してみるのがよさそうです。
精度を高めたいときはギリギリまで近づいて撮影する
左はやや離れた位置から撮影した14枚の写真で生成した3D CGのモデルデータ。真円のパーツに歪みがあり、レザーやアルミボディのテクスチャの解像度が低め。文字のピントも甘く見えます。
右はピントが合うギリギリの位置で撮影した、40枚の写真で生成した3D CGのモデルデータです。歪んでいる箇所が少なく、全体的にシャープ。このクオリティなら手元に残しておきたいと思えるほど、満足度が高めです。
このように寄り気味で多くの枚数を撮影し、その写真データを用いることで、高精度な3D CGのモデルデータが手に入ります。
撮影後は余計な領域を切り取る
無事に3D CGのモデルデータが生成できたら、ライブラリのサムネイルをタップして確認してみましょう。満足のいく出来だったならば、次に「Crop」をタップします。
この機能は不要なデータをカットするトリミング機能みたいなもの。被写体の周囲に表示された箱の面をタップして、画面下のスライダーを動かして余分な領域を削っていきます。この編集作業によってデータのサイズが小さくなり、スッキリとした見栄えとなります。
作成したモデルデータはこのように、全体を見ることができる動画ファイルとして保存が可能ですし、OBJ、FBX、GLTF、PLY、XYZといった3D CGのデータファイルとしても保存できます。
またPCのブラウザで自由な角度から見ることが可能なURLも生成できます(筆者が作成した3DモデルのURL)。自作のモデルデータを誰かに見て欲しいときに活用できる機能です。
自作3Dモデルを販売できる
WIDARで作成した3Dモデルは、NTTが運営するメタバースプラットフォーム「DOOR」の空間にアップロードできます。さらに、DOORが連携する「DMM.makeクリエイターズマーケット」や「マルシェル by goo」などのECサイトでは、自作の3Dモデルデータを販売することが可能です。
ただし、他の人が作ったスイーツや小物、グッズをもとに作った3Dモデルのデータは販売できません。自分が手がけたアイテムのモデルデータであれば自由に販売できるので、もしかしたら貴方の新しい才能が目覚めるきっかけとなるかもしれませんよ。