Coral Capitalは、創業パートナーの澤山陽平によるシードファイナンス勉強会「#CoralSchool」を毎月開催しています。勉強会の内容は動画で全4回にわけて配信中ですが、時間がない人のために各回3分x5本で読める形で内容をお伝えします。第2回のテーマは「株式による資金調達の仕組み」です。
【シリーズ目次】
第1回:ベンチャーキャピタルとは
第2回:株式による資金調達の仕組み ※本記事
第3回:EXITの際の利益分配の仕組み
第4回:投資契約書&J-KISS(コンバーティブル)の仕組み(前編)
第5回:投資契約書&J-KISS(コンバーティブル)の仕組み(後編)
株式による資金調達を簡単に言うと、会社が新しい株式を発行して、誰かに買ってもらうということです。
会社がいま持っている株式ではなく、「追加で発行した株式」を買ってもらうことで、そのお金が会社に入ることになります。
そもそも、会社の価値はどうやって決まる?
新しく発行した株式を第三者(投資家)に買ってもらう際には、「その会社の価値はいくらなの?」という話が出てきます。
会社の価値は「時価総額」で考えてください(「株主価値」や「評価額」と言われることもあります)。時価総額は「株価 × 発行済株式数」で計算します。
(編注:厳密には企業価値で考えるべきですが、一般にスタートアップは有利子負債がほとんどないことと、この後の説明を単純化するために、ここでは株式時価総額のみを考えます)
起業家が手元のお金で会社を作る場合、株価は適当に決められます。資本金が100万円だったら「1万円の株価で100株」でも「1円の株価で100万株」でもよいのです。
上場企業と違い、未上場企業の株価自体には意味がありません。一株あたりの値段が違っても、会社の価値(=時価総額)は同じなのです。
株式を発行してお金を調達する流れ
会社を作ったときの株価をぐっと跳ね上げ、新しい株を出してお金を調達する。これが、いわゆるスタートアップの文脈における資金調達です。
1株100円で1万株を発行した会社を例に見てみましょう(下図左の赤枠を参照)。
この会社が事業計画を練り、プロトタイプを作るなどした結果、投資家から「プレ時価総額1億円」の評価が付けられたと仮定します。プレ時価総額の「プレ」は、「資金調達する直前」という意味です。
この時点で、株数は1万株のまま変わりません。そのため、1株あたりの価値は100円から1万円に大きく跳ね上がったことになります(プレ時価総額1億円÷1万株=株価1万円、下図中央の赤枠を参照)
プレ時価総額1億円の評価を受けた会社が1000万円を増資したければ、新たに1000株を発行すればいいわけです(増資金額1000万円÷株価1万円=1000株)。(下図右の赤枠を参照)
スタートアップの資金調達は、基本的に「会社の価値を上げる→資金を調達する→調達資金をもとに会社の価値を上げる」という流れの繰り返しです。
別の数字で見てみると、もう少しわかりやすくなります。
1万株を発行した会社が、プレ時価総額4億円の評価を受けた場合、株価は4万円です。この会社が1億円を調達したければ、新たに2500株を発行することになります(プレ時価総額1億円÷株価4万円=2500株)。
その結果、発行済株式数は1万2500株となり、持ち株比率は起業家が80%、投資家が20%になるわけです(起業家1万株:投資家2500株=80:20)。
起業家と投資家はどんな交渉をするの?
なかには、投資家に20%も株を持たれたくない起業家もいるかもしれません。じゃあ何をすればいいかと言うと、株価を上げるか、時価総額を上げればいい。未上場企業の株価は交渉次第で決められるのです。
起業家が1株1億円と主張して投資家が合意すればいいわけですし、その主張が受け入れられなければ株価を下げることになります。
実務的には、シード投資におけるプレ時価総額は数億円になることが多いです。起業家は、自ら放出できる株数や、必要な資金に応じて、投資家と条件を交渉していきます。
たとえば、プレ時価総額2億円と評価された会社が1億円を調達するには、33%の株を投資家に渡さなければなりません。
「33%は無理」というのであれば、調達金額を5000万円に減らして、投資家の持分比率を20%に抑えることもできます。
起業家が「どうしても7500万円は必要」と判断すれば、投資家とプレ時価総額を上げる交渉をしたり、もう少し高く評価してくれるベンチャーキャピタル(VC)を探したりします。つまり、すべては交渉次第というわけです。
まとめ
株式による資金調達をまとめます。創業者はいちばん安く株を大量に持っている人なので、株価を上げて、新しい株を発行して、資金を調達する。これがスタートアップの株式による資金調達です。
大事なのは、創業者は出資金額に関わらず、持分比率を決められるということ。起業時に1万円しか出資していなくても、スタートアップに長い時間をかけて自分の心血を注ぎます。そうであれば、創業者が株式の90%を持っていても、全然構わないわけです。
逆に言うと、投資家は横から少しお金を出すだけなので、多くの株式を持つべきではないと考えています。
次回(第3回:EXITの際の利益分配の仕組み)に続きます。
Founding Partner @ Coral Capital