本ブログはニューヨークのベンチャーキャピタルUnion Square Venturesでパートナーを務める、Fred Wilson(フレッド・ウィルソン)氏のブログ「AVC」の投稿、「The Pull Forward」を翻訳したものです。
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私はキャリアの初期に、どんなチームメンバーも代替可能であり、適切な代替要員を見つけるための十分な時間があれば問題ないと教えられました。それ以来、私はその考えに基づいて行動し、一緒に働く創業者やチームにもそのアドバイスを伝え、常にそのようなマネジメント手法を提唱してきました。
しかし、どんなチームにも必ず数名、後任探しがきわめて難しいメンバーがいることを学びました。ほとんどのチームメンバーは「fungible」(代替可能)ですが、数名の 「non-fungible people」(代替できないメンバー)は常に存在し、これらのNFPを確保することは、ビジネスの長期的成功にとって非常に重要であると言えます。
※訳注:NFPは、非代替性トークンのNFT(Non-Fungible Token)にかけた著者の造語。
最初の、そして最も重要なNFPは、創業者です。この人物は、長期的なビジョン、カルチャーやバリューの設定、そして何かが「おかしい」と感じたときの判断力など、ビジネスに計り知れない価値をもたらします。創業者の事業への関心と関わりを維持することは、非常に重要です。創業者が価値よりもマイナスをビジネスにもたらすような場合は、退場してもらうべきでしょう。しかし、創業者が事業にとっていかに重要であるかということを考えると、そのような状況は可能な限り避けなければなりません。
NFPは通常、スペシャリストとして貢献しており(訳注:アメリカのテック系企業などでは indivudual contributorと呼ばれ、非管理職ながら高い専門性を持つ)、経営者ではありません。マネジメント機能は、ユニークなスキルを持つ個人よりもずっと簡単に交換することができるのです。私を含めて多くの人がよく犯す間違いは、NFPは人を管理しない方がずっと幸せなのに、管理職に昇進させてしまうことです。NFPの典型的な役割は、ビジネスのCTOです。この役割では、その人はビジネスにおける全体的な技術の方向性を定め、最も難しい技術的な決定を下し、自ら技術を作り出しますが、エンジニアリング機能を管理することはありません。多くの企業では、CTOに直属の部下はいません。
NFPは会社のどの役割でも見つけることができます。NFPは技術部門に限定されるものではありません。顧客サービス、財務、法務、マーケティングなど、本当にどこにでもNFPはいるのです。重要なのは、彼らを特定し、認識し、報い、補償し、維持することです。
ますます多くの企業が、重要なスペシャリストが自分のマネージャーや他のマネージャーと同等かそれ以上の収入を得られるような報酬モデルに移行しています。これはセールス組織では昔から一般的で、NFPが多くいる場合には成果報酬制にすることでスペシャリストが活躍する場を提供してきました。その一方で、単純にその人の管理職レベルに基づいて報酬を決めるのは間違いであり、優秀な人材が管理職になって、その役割で十分な成果をあげられずに退職してしまうことに気づく企業がますます増えてきているように思います。
NFPはかなり稀な存在です。ほとんどの人は、十分な時間をかけて適切な人材を探せば、簡単に代わりが務まるものです。しかし、替えのきかない人材は常に存在します。そのような人たちを見極め、確保することが、経営者の重要な目標になるはずです。
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Editorial Team / 編集部